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屍山血河〜王都防衛戦〜

第0機動小隊、発進っ!

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「———なっ?!」

 状況把握に務めつつも、撃ち続けていた銃がその挙動を停止する。…………弾切れだ。

「もう弾切れか……味方機は———1番近くでもあんなに遠いのか……!」

 と言いつつも、銃を投げ捨て咄嗟に背中のブレードマウントに機体の腕部をかける。

 画面の装備武装の欄に『77式サイドツー用長刀』が来たのを確認し、後ろにやった腕を振り下げる。


 機体との動きのタイムラグを無くすための負担が、ちょうどよい重さとなって腕にのしかかる。

「———来やがれ、化け物共ォッ! 貴様らなぞ、この私にとってはただのエサに過ぎないと言うことを教え込んでやろうっ!」

 もはや周囲に味方はいない。
 先程までそこに『いる』と思っていた味方らは、いつの間にか全員、機体もろとも完全に消え去っていたからだ。

 もはや銃に弾などない。
 バカな奴らが、懲罰大隊に対する弾の補充をケチったからだ。

 もはや勝利などない。
 私はここで、戦い抜いて朽ち果てるのみだからだ。

 もはや勝機などない。
 前方、海の方にて支援砲撃が着弾し、その証として紅き水が舞い上がっているのにも関わらず、敵の勢いは留まることを知らないからだ。

「うあああああっ!」
 
 1回1回。
 1体1体。
 金属の隙間より見えた肉を、正確に長刀を振り下ろし斬り裂き続ける。

「3体……4体目ぇっ!……っああっ!」

 ———がしかし、脚を取られた……! たったの一撃で、右脚は確実に吹き飛ばされた……!

 それ以外の損害状況は———不明。関係ない、眼前の敵を葬るだけなのだから!

「死に晒し、やがれぇっ!」

 もはや右脚は吹き飛んでいた。が、それでも長刀を振り回し、刺し続け殺しまくる。

「でりゃあっ!」

 力強く叫びながら、確実に斬り落とす。
 飛び掛かって来た敵も、空中にて斬り落とす。
 血飛沫が画面に張り付こうが関係ない、命が消える最後の時まで、諦めずに戦うのみ———、



『こちら第0機動小隊指揮官機より、懲罰大隊全機に告ぐ。これより我らが先陣を切る、貴様らは全機退却だ、これまでご苦労であった』

 まだ諦めずに、戦う———の、





 

 ———一瞬だけ、視界が大きく揺れた後。

 
 擦れた視界で最後に捉えたのは、轟々と燃え盛る炎であった。







*◇*◇*◇*◇





『では行くぞ、第0機動~……』




 教官の声よりも、それよりもは、画面右下に表示されていた惨状ばかりに注目していた。




『———来やがれ、化け物共ォッ! 貴様らなぞ、この私にかかればただのエサに過ぎないと言うことを教えてやろうっ!』

 あの声。必死に絞り出した、猛々しい意志の象徴。
 ———これが、戦場か、と。その時、僕はようやく実感を持ち始めた気がする。



『ザッ……ザザッ…………』

 右下の画面が真っ黒に染まる。
 同時に、下の方で爆発が1つ。
 ……きっとアレが、あの人の機体だったんだ、と。

 呆然となりつつも、それでもその燃え盛る炎から、目を離すことはできなかった。



『第0機動小隊、発進っ!!!!』
「うぉっ?!」

 突如カタパルトが発進する。
 揺れは呆然に駆られていた僕の意識に直撃し、身の毛のよだつような感覚が心臓から身体全体に響き渡る。

「———あっ、スラスター……っと」
 
 滑走路の道が途切れた瞬間メインスラスターとバーニアスラスターを吹かし、空中での姿勢制御を行う。


 ……今度は、散ったあの人の代わりに、自分が戦うことになるんだと思うと、正直怖いけど。
 でも、あんな死に方だけは———ごめんだ。絶対に。

 帰ってみせる、何がなんでも王都に帰って、もう一度お父さんに、お母さんに、そして師匠に会ってみせる。

 ———ただそれだけを、強く祈った一瞬だった。
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