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屍山血河〜王都防衛戦〜
開戦の狼煙
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そうして着いたのは、前哨基地……だとか言うところのサイドツー用滑走路。カタパルトの埋もれた場所を避けながら、静かにゆっくりと着陸する。
基地は海に面した崖に接地して建設されており、人為的に崖に掘られた洞窟1つ1つが格納庫及び滑走路となっていた。
『それでは各自格納庫に向かってもらおう、格納庫の場所はマップレーダーにマークしておいた。サイドツーは降りたりしなくてもいいからな、機体の中で初陣の時を待て、以上だ!』
———ほんとだ。よく見ると、レーダーには味方機のマーカーとは別に、青く輝く点が映し出されていた。
黒に染まったレーダーに映し出される点の数々は、さながら小さな星空のようだった。
『言い忘れていたが、もう数十秒後に懲罰大隊が発進する。彼らの戦闘も見たいと言うのなら、彼らの指揮官機に直接繋いで画面共有をしてもらうが……どうだ、希望者はいないか?』
「お願いします、僕は見てみたいです」
『———私もっ! 私も見てみたいです!!!!』
その他数名の声。
わざわざ繋いでくれる教官に感謝すべきだろう。
そうして画面の左下に大きく表示されたのは、一面の暗黒。しかしてそれらは下の方から徐々に光が差し込み、照明で照らされた外の滑走路が姿を晒す。
……ここからは、彼らの画面を見ることにしよう。
実戦の雰囲気、と言うのを予習……することになるのかな。
*◇*◇*◇*◇
開く格納庫ハッチ。
照らされる滑走路。
銀色の逆光に輝く電磁カタパルト。
発射まで、残り数秒。
準備は万端、いつでも応戦は可能。
武装は52式36mmサイドツー用自動小銃、多目的使用汎用特化型持盾、77式サイドツー用長刀。
たったコレだけの武装、補給は……考えられない。弾の補給なぞ、この懲罰大隊にはないに等しい。
ただ私は、魔族の中でもサイドツーの操縦技術に偶然長けていたからこそ、懲罰大隊の指揮官に選ばれただけ。指揮官適正などあるかどうかなんて定かじゃない。戦う理由も、奮起する理由もありはしない。
何もないが、ここまで来たからには戦うしかない。例え失おうとも、進む以外に道はないと元より心得ている。
「懲罰大隊全機…………発進っ!!!!」
シューターの仕草を伺い、掛け声をかける。
轟音を上げながらサイドツーは急速発進し、崖の外に出て上空に隊列を組む。
見果てるは海の先、堕ちゆく黄昏から視線を下ろし、海岸線に見える津波の如き水飛沫に視線を傾ける。
……アレが、敵か。
まだ姿も見えない、ただ『敵』と、『神話的生命体』と呼称された謎の雑兵。
この小銃などの兵器が効かなければ……と考え伏してしまうこともあるが、そんな感情や予測は記憶のゴミ箱に全て捨て去る。
初陣だと言うのに、妙に落ち着けている。
今からはどうやっても、私たちは死ぬ運命にあると言うのに。
「支援砲撃が来るぞ、一旦ここで待機だ! 繰り返す、全機待機っ!……敵の姿をその目に焼き付けておけっ!」
空中にてサイドツー部隊は急激停止する。
直後後方で砲撃音が鳴り響き、宙を舞った支援砲撃弾は雨のように海岸線に降り注ぐ。
『っしゃああああっ!!』
『これが面制圧ってやつですか、隊長!』
楽しそうに動向を見下ろす仲間たちの声を聞きながらも、用心は忘れはしない。
何せ敵総数は10万、あんなチンケな砲撃で全滅、だなんてあるわけがないんだ。
———そんなの、考えれば分かるだろう。
基地は海に面した崖に接地して建設されており、人為的に崖に掘られた洞窟1つ1つが格納庫及び滑走路となっていた。
『それでは各自格納庫に向かってもらおう、格納庫の場所はマップレーダーにマークしておいた。サイドツーは降りたりしなくてもいいからな、機体の中で初陣の時を待て、以上だ!』
———ほんとだ。よく見ると、レーダーには味方機のマーカーとは別に、青く輝く点が映し出されていた。
黒に染まったレーダーに映し出される点の数々は、さながら小さな星空のようだった。
『言い忘れていたが、もう数十秒後に懲罰大隊が発進する。彼らの戦闘も見たいと言うのなら、彼らの指揮官機に直接繋いで画面共有をしてもらうが……どうだ、希望者はいないか?』
「お願いします、僕は見てみたいです」
『———私もっ! 私も見てみたいです!!!!』
その他数名の声。
わざわざ繋いでくれる教官に感謝すべきだろう。
そうして画面の左下に大きく表示されたのは、一面の暗黒。しかしてそれらは下の方から徐々に光が差し込み、照明で照らされた外の滑走路が姿を晒す。
……ここからは、彼らの画面を見ることにしよう。
実戦の雰囲気、と言うのを予習……することになるのかな。
*◇*◇*◇*◇
開く格納庫ハッチ。
照らされる滑走路。
銀色の逆光に輝く電磁カタパルト。
発射まで、残り数秒。
準備は万端、いつでも応戦は可能。
武装は52式36mmサイドツー用自動小銃、多目的使用汎用特化型持盾、77式サイドツー用長刀。
たったコレだけの武装、補給は……考えられない。弾の補給なぞ、この懲罰大隊にはないに等しい。
ただ私は、魔族の中でもサイドツーの操縦技術に偶然長けていたからこそ、懲罰大隊の指揮官に選ばれただけ。指揮官適正などあるかどうかなんて定かじゃない。戦う理由も、奮起する理由もありはしない。
何もないが、ここまで来たからには戦うしかない。例え失おうとも、進む以外に道はないと元より心得ている。
「懲罰大隊全機…………発進っ!!!!」
シューターの仕草を伺い、掛け声をかける。
轟音を上げながらサイドツーは急速発進し、崖の外に出て上空に隊列を組む。
見果てるは海の先、堕ちゆく黄昏から視線を下ろし、海岸線に見える津波の如き水飛沫に視線を傾ける。
……アレが、敵か。
まだ姿も見えない、ただ『敵』と、『神話的生命体』と呼称された謎の雑兵。
この小銃などの兵器が効かなければ……と考え伏してしまうこともあるが、そんな感情や予測は記憶のゴミ箱に全て捨て去る。
初陣だと言うのに、妙に落ち着けている。
今からはどうやっても、私たちは死ぬ運命にあると言うのに。
「支援砲撃が来るぞ、一旦ここで待機だ! 繰り返す、全機待機っ!……敵の姿をその目に焼き付けておけっ!」
空中にてサイドツー部隊は急激停止する。
直後後方で砲撃音が鳴り響き、宙を舞った支援砲撃弾は雨のように海岸線に降り注ぐ。
『っしゃああああっ!!』
『これが面制圧ってやつですか、隊長!』
楽しそうに動向を見下ろす仲間たちの声を聞きながらも、用心は忘れはしない。
何せ敵総数は10万、あんなチンケな砲撃で全滅、だなんてあるわけがないんだ。
———そんなの、考えれば分かるだろう。
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(^人^)どうぞ宜しくお願い申し上げます(^人^)
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