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第三章

破格の条件④

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「なんだ、結界は使わねぇーのか。使ったら、速攻で酸欠状態に追い込もうと思っていたのに」

 当てが外れたとでも言うように、ルカはかぶりを振る。
『さすがにちょっと露骨過ぎたか』と思い悩む彼を前に、タビアは火炎魔法を展開した。
すると、風の流れに沿って炎が舞い上がっていく。

「おっ?即席ファイアトルネードじゃん。これなら、あいつもビビって結界を張るかも」

 ニヤリと口角を上げ、ルカは軽く手を叩いた。
その瞬間、何故か炎の勢いが増す。

「風向きや風量を調整して、火力を上げたか」

 『器用なことをする』と感心し、父はグランツ殿下に視線を向けた。
『いつの間にここまて腕を上げたんだ』と思案する彼を他所に、ジェラルドは炎の竜巻に四苦八苦する。

 強風のせいで重心が不安定な上、炎を浴びるリスクを背負っている状況……下手には動けない。
だからといって、安易に結界を張ればルカの術中に嵌ってしまう。
また、距離を取ろうにもあの体勢では難しいだろう。
完全に八方塞がり────と思われたが、ジェラルドは竜巻を結界に封じ込めることで解決した。

「そう来たか。まあ、竜巻との接触を避けるだけなら隔離するのはあっちでいいもんな」

 『無駄に賢いガキだぜ』と言い、ルカは腕を組む。
さっさと体勢を立て直すジェラルドを見つめ、大きく息を吐いた。
────と、ここで竜巻と炎は消える。

「とはいえ、これだけの規模と強度の結界を張れば、あちらも相当魔力を消費している筈。畳み掛けるなら、今だね」

 グランツ殿下は優に三十を超える風の刃を生成し、一気に放った。
すると、タビアも数え切れないほどの火球をジェラルド目掛けて発射する。
そのため、ジェラルドは三桁に近い攻撃を捌かないといけなくなり……僅かに眉を顰めた。
かと思えば、更に上空へ行こうとする。
でも、

「逃がすかよ!」

 ルカの魔法によって、行く手を阻まれた。
いや、強風のせいで身動きを取れなくなったと言った方が正しいか。
さっきの竜巻より威力は低いものの、吹き飛ばされないよう踏ん張るのが精一杯という様子。

「あんなに多くの風の刃を作り出しておいて、まだ余力が……」

 ルカの妨害をグランツ殿下の仕業だと捉えているのか、ジェラルドは困惑を露わにする。
が、直ぐに納得したように目を細めた。

「……兄上も実力を偽ってきたという訳ですか」
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