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第三章

タビアの頼み①

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「他に何か分かったことはないかい?それこそ、魔物のこととか……」

 神妙な面持ちで質問を重ねるグランツ殿下に対し、タビアはそっと目を伏せる。

「いや、魔物に関することは一切書かれていなかった。ただ、この研究の過程で魔物を生み出す力を得た可能性は非常に高い。引き続き調査を進めるつもりだが、時間は掛かると思ってくれ。ただでさえ、力技の多いこの研究を論理的に紐解くのはなかなか難しいんだ」

 研究資料の表面を撫で、タビアは目頭を押さえる。

「再現実験を行えればいいんだが、さすがにこんな惨たらしいことを他人には出来ないからな……ひたすら仮説を立てては論理的に立証出来るか考えて、の繰り返しだ」

 『被験体がエルフなら、私の体を使えたのに』と嘆きつつ、タビアは研究資料を懐に仕舞った。
かも思えば、居住まいを正す。

「それはそれとして、グランツと公爵に二つほど頼みたいことがある」

 真剣な面持ちで前を見据えるタビアに対し、父とグランツ殿下は僅かに目を剥く。
『急に改まって、どうしたんだ?』と首を傾げつつ、二人は

「なんだ?(なんだい)」

 と、話の先を促した。
すると、タビアは少しばかり身を乗り出す。

「まず、ジェラルドとやらを────治療させてほしい」

「治療……?」

「ああ。正確には、研究によって変質した体や魔力を元に戻すだけだが」

「そんなこと可能なのかい?」

 驚いて思わず聞き返すグランツ殿下に、タビアは首を横に振った。

「分からない。ただ、一エルフとして同族の仕出かしたことには責任を取らねばなるまい」

 『放置は出来ない』と告げ、タビアは額に手を当てる。
『全く……前回も今回も厄介事ばかり』と零しつつ、真っ直ぐ前を向いた。

「それから、魔物を何体か譲ってほしい。この研究との因果関係を見極めるために、調べたいんだ」

「譲るも何も、我々は魔物を保有していないんだが」

 『ただ、倒しているだけ』と主張する父に、タビアは相槌を打つ。

「分かっている。だから、魔物の討伐依頼を一部こちらに譲ってほしいんだ」
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