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第二章

ワガママ①

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◇◆◇◆

 ────時は少し遡り、イージス卿を見送ったあとのこと。
私達はサンクチュエール騎士団に被害状況の確認を任せ、一旦別館へ移動した。
ここは幸い、魔物の襲撃もなく無事だったため。

「それで、何がどうなってこうなったんだ?」

 席に着くなり経緯の説明を求める父は、膝の上に載せた私をチラリと見る。
よしよしと頭を撫でながら。
『もう肩の力を抜いていいんだぞ』と示す彼の前で、向かい側の席に腰掛けるユリウスは眉尻を下げた。

「どうもこうもありませんよ。本当にいきなり、魔物が現れて……」

「屋敷に張った結界はどうした?」

「えっと、さっきチラッと確認してみたら上空の部分だけ少し緩められていました」

 『詳しくは騎士団の調査待ちですね』と語るユリウスに、父はスッと目を細めた。

「つまりあの結界に何者かが手を加えた、と?」

「はい、恐らく……公爵様直々に展開した結界をいじるなんて、考えられませんけど」

 『複雑すぎて、普通はどうすることも出来ないのに』と肩を落とし、ユリウスは項垂れる。
これでもかというほど深い溜め息を零す彼の前で、父は窓の外を眺めた。

「先日屋敷へ侵入したあのエルフが、手を加えた可能性はないのか?」

「あー……多分、侵入する際に結界をいじったとは思いますが、特に異変はありませんでしたよ。エルフ様の帰宅後すぐに状態を確認したので、間違いありません」

 『帰る際に補修したんじゃないか』ということを指摘し、ユリウスは顎に手を当てた。

「ただ、もう一度……それこそ今日屋敷を訪れて、また結界を緩めていった可能性は拭い切れませんけどね、悲しいことに」

 エルフとの諍いを避けたいユリウスは、『そうじゃないことを全力で祈ります』と述べた。
疲れ切った顔で遠くを見つめる彼を前に、父は視線を前に戻す。

「結界のことはとりあえず、分かった。それで、当時の状況は?魔物は何体、居たんだ?どうやって、討伐した?それから、何故精霊が増えている?」

「ちょ、ちょっと待ってください!一から、説明しますので!」

 両手を前に突き出して制止しつつ、ユリウスは『質問が多いんですよ……!』と喚いた。
かと思えば、コホンッと一回咳払いして時系列順に事のあらましを説明していく。
それに比例して、父の表情はより硬く……険しくなってきた。

「……ベアトリスにまで戦わせたのか」

「は、はい……その、緊急事態で……あっ!でも、あくまで後方支援だけですよ!?前線は私と騎士達で担って……」

「そんなの当たり前だ。もし、ベアトリスを前線に出していたらお前達の首を切っていたところだ」

 低く冷たい声で威嚇する父に対し、ユリウスは『それって、物理的に……?』と怯える。
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