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第一章

衝撃の事実

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「結婚式に行ってやれなくて、すまなかったな。私が出席していれば、あそこまで騒ぎも大きくならなかっただろうに……」

 開口一番に告げられたのは、父からの謝罪だった。
申し訳なさそうな表情を浮かべる父からは、罪悪感を感じる。
父はもう既に結婚式での騒動をある程度把握しているようだった。

 この様子だと、私がわざわざ報告しに来る必要は、なかったみたいね。

「お父様が謝罪する必要はありませんわ。戦後処理・・・・で忙しかったのは、よく分かっていますから。あまり気に病まないでください」

「ああ……そう言って貰えると助かる」

 僅かに表情を和らげる父は、ホッとしたように胸を撫で下ろした────かと思えば、直ぐさま表情を引き締める。
そして、一回咳払いすると、改めて口を開いた。

「まず、結婚式での騒動の件だが、既に家臣たちから事のあらましを聞いているため、報告は不要だ。リナ王女とカーティス王子との関係については現在調査中。調査員に魔導師を何人か派遣しているから、明日には結果が出るだろう」

「そうですか。お父様が調査団を……調査のところまで手が回らなかったので助かりましたわ」

「これくらい、気にするな。それより、リナ王女の不正入国・・・・とカラミタ王国の国王夫妻が結婚式を欠席した理由についてだが……」

 父がシレッと口にした『不正入国』という言葉に、私は思わず苦笑を漏らす。
と同時に何故招待客でもないリナさんがこの国に居たのか、理解した。

 カラミタ王国の招待客は国王夫妻のみ。だから、当然入国者もその二人と護衛だけとなる。それなのにリナさんがエスポワール王国に居たのは不正入国したからだったのね……。

「カラミタ国王はリナ王女の不正入国に手を貸したらしい。なんでも、『お兄様の晴れ舞台を見たい!』と強くせがまれたらしい。それで……」

「わざと結婚式を欠席して、我々に魔映石まえいせきを使わせたんですね?魔映石を使って室内から結婚式の様子が見られれば、カーティス様の晴れ舞台をリナさ……リナ王女に見せることが出来ますから」

「ああ、その通りだ」

 真顔のままコクリと頷く父を前に、私は思わず『呆れた……』と零す。
もちろん、私が呆れているのは父ではなく、リナさんのワガママを受け入れたカラミタ王国の国王夫妻だ。

 確かに魔映石────特定の場所のリアルタイム映像を映し出す魔道具を使えば、リナさんのワガママは叶えられるけど、普通そんな理由で息子の結婚式を欠席するかしら?大体、不正入国って何!?可愛い娘のためとは言え、そこまでする!?

 何故リナさんがあそこまで非常識に……いえ、ワガママに育ったのか何となく分かった気がするわ。

「ニーナ、疲れているところ悪いが、この質問にだけは答えてくれ」

 父はそう前置きすると、私の目を真っ直ぐに見つめる。
ただならぬ緊張感に包まれる中、隣に座る母が私の手を優しく握ってくれた。

「ニーナ・ホールデン、お前はカーティス・キャンベル王子との結婚を────どうしたい?」
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