168 / 315
第四章
第167話『第七階層』
しおりを挟む
そしてファルコさんの指示により配置を少し変え、隊列を整えると第七階層へ足を踏み入れていた。
そこにはスクイッグと呼ばれる魔物が居り、戦闘班と交戦を繰り広げている。
「っ……!!くそっ!!このクソみたいな)歌声《・・》、どうにかなんねぇーのかよ!?」
人面の球体に二本の足と長い尻尾を生やした魔物を指さし、戦闘班のメンバーは苛立った。
というのも、スクイッグの戦い方が────ダミ声で歌を歌い、集中力が低下したところで尻尾の打撃を食らわせるというものだから。
どうしても、気が散ってしまうのだ。
「音の魔法で、どうにかならない?」
「魔法で無音世界を作り出すことは出来るけど、特定の人物の声だけ聞こえなくするのは難しいかな」
「あ”ーーーー!!イライラするぅぅぅうう!!どんだけ音痴なんだよ、こいつ!!」
スクイッグと戦い始めてまだ十分も経過していないというのに、戦闘班のメンバーは早くも音を上げる。
必死に耳を押さえながら応戦し、思い切り顔を顰めた。
「もー!こいつら、うるさいなぁー!せっかく、ラミエルの隣になれたのに喜ぶ暇もないじゃーん!」
金の斧片手にプンスカ怒っている青髪の美少年は────苛立ち紛れにスクイッグの舌を斬り落とす。
おかげで、スクイッグは歌うことが出来ず……『あ、ぁ……ああっ!!』と変な声を上げていた。
「うげぇー!こいつの唾液が斧についたー!気持ちわるーい!」
「でも、舌を斬り落としたおかげで静かになりましたね」
「まあ、静かになったのは一体だけだけどねー」
シムナさんは斧をブンブン振り回し、遠心力で唾液を弾き飛ばす。
『パーフェクトクリーン使おうかな?』と零す彼の横で、私は口元に手を当てた。
と同時に、声を張り上げる。
「魔法使いの皆さん!スクイッグの舌を斬り落として頂けると助かります!」
シムナさんの『舌を切り落とす』というアイディア自体はとても良かったため、遠慮なく使わせてもらう。
すると、四方八方から『その手があったか!』と声が上がった。
「ラミエルちゃん、任せてちょうだい!舌を切り落とすくらい、造作もないわ!」
そう言って、ヴィエラさんは何やら呪文を唱える。
と同時に、にスクイッグの合唱は一気に小さくなった。
どうやら、今の一瞬でほとんどのスクイッグの舌を切ったらしい。
『さすがは“アザミの魔女”』と感心する中、他の魔法使い達が
「《ウインドカッター》」
「《シルフィード・アウト》」
「《風の乙女》」
ヴィエラさんのやり損ねたスクイッグの舌を仕留める
これにより、合唱は強制終了した。
ここから先は戦闘班の出番である。
「わー!めっちゃ静かになったー!」
「あの下手くそな歌声が聞こえないだけで、こんなに気持ちよく戦えるなんて……!!」
「めっちゃ快適なんだけど!!静かって、素敵!」
うっとりとした顔で武器を振り上げ、彼らはスクイッグに襲い掛かる。
小賢しい手を使えなくなったスクイッグなど敵ではないのか、バッサバッサと斬り伏せていった。
「なんか、これだと私達が弱い者虐めしているみたいですね」
「まあ、実際この音痴魔物はめちゃくちゃ弱いしねー」
「……シムナさんからすれば、魔物の大半は弱い部類に含まれるでしょうね」
「かもねー。ま、魔物とあまり戦った経験がないから分かんないけどー」
退屈そうに足元の小石を蹴るシムナさんは、『やっぱ、コンピューター相手じゃつまんないなぁ』と零す。
PK大好きなところは、いつになっても変わらないらしい。
「あっ、大方片付いたみたいだねー。ファルコが『第八階層へ移動するで~』って言っているよー」
「この騒がしい空間で、よくファルコさんの声を拾えますね」
「狙撃手の僕は五感が優れてるからねー。あっ、列が進み始めたよー。ラミエル、僕らも移動しよー」
子供のように無邪気に笑う彼は、私の手を引いて歩き出す。
「シムナさん、はしゃぎ過ぎて転ばないでくださいよ」
「大丈夫だよー!僕、そんなダサいことしないからー!」
『あははっ!』と楽しげに笑うシムナさんは、いつも通りマイペースで……ちょっと安心する。
彼を見ていると、『何があっても大丈夫』と思えるから。
そこにはスクイッグと呼ばれる魔物が居り、戦闘班と交戦を繰り広げている。
「っ……!!くそっ!!このクソみたいな)歌声《・・》、どうにかなんねぇーのかよ!?」
人面の球体に二本の足と長い尻尾を生やした魔物を指さし、戦闘班のメンバーは苛立った。
というのも、スクイッグの戦い方が────ダミ声で歌を歌い、集中力が低下したところで尻尾の打撃を食らわせるというものだから。
どうしても、気が散ってしまうのだ。
「音の魔法で、どうにかならない?」
「魔法で無音世界を作り出すことは出来るけど、特定の人物の声だけ聞こえなくするのは難しいかな」
「あ”ーーーー!!イライラするぅぅぅうう!!どんだけ音痴なんだよ、こいつ!!」
スクイッグと戦い始めてまだ十分も経過していないというのに、戦闘班のメンバーは早くも音を上げる。
必死に耳を押さえながら応戦し、思い切り顔を顰めた。
「もー!こいつら、うるさいなぁー!せっかく、ラミエルの隣になれたのに喜ぶ暇もないじゃーん!」
金の斧片手にプンスカ怒っている青髪の美少年は────苛立ち紛れにスクイッグの舌を斬り落とす。
おかげで、スクイッグは歌うことが出来ず……『あ、ぁ……ああっ!!』と変な声を上げていた。
「うげぇー!こいつの唾液が斧についたー!気持ちわるーい!」
「でも、舌を斬り落としたおかげで静かになりましたね」
「まあ、静かになったのは一体だけだけどねー」
シムナさんは斧をブンブン振り回し、遠心力で唾液を弾き飛ばす。
『パーフェクトクリーン使おうかな?』と零す彼の横で、私は口元に手を当てた。
と同時に、声を張り上げる。
「魔法使いの皆さん!スクイッグの舌を斬り落として頂けると助かります!」
シムナさんの『舌を切り落とす』というアイディア自体はとても良かったため、遠慮なく使わせてもらう。
すると、四方八方から『その手があったか!』と声が上がった。
「ラミエルちゃん、任せてちょうだい!舌を切り落とすくらい、造作もないわ!」
そう言って、ヴィエラさんは何やら呪文を唱える。
と同時に、にスクイッグの合唱は一気に小さくなった。
どうやら、今の一瞬でほとんどのスクイッグの舌を切ったらしい。
『さすがは“アザミの魔女”』と感心する中、他の魔法使い達が
「《ウインドカッター》」
「《シルフィード・アウト》」
「《風の乙女》」
ヴィエラさんのやり損ねたスクイッグの舌を仕留める
これにより、合唱は強制終了した。
ここから先は戦闘班の出番である。
「わー!めっちゃ静かになったー!」
「あの下手くそな歌声が聞こえないだけで、こんなに気持ちよく戦えるなんて……!!」
「めっちゃ快適なんだけど!!静かって、素敵!」
うっとりとした顔で武器を振り上げ、彼らはスクイッグに襲い掛かる。
小賢しい手を使えなくなったスクイッグなど敵ではないのか、バッサバッサと斬り伏せていった。
「なんか、これだと私達が弱い者虐めしているみたいですね」
「まあ、実際この音痴魔物はめちゃくちゃ弱いしねー」
「……シムナさんからすれば、魔物の大半は弱い部類に含まれるでしょうね」
「かもねー。ま、魔物とあまり戦った経験がないから分かんないけどー」
退屈そうに足元の小石を蹴るシムナさんは、『やっぱ、コンピューター相手じゃつまんないなぁ』と零す。
PK大好きなところは、いつになっても変わらないらしい。
「あっ、大方片付いたみたいだねー。ファルコが『第八階層へ移動するで~』って言っているよー」
「この騒がしい空間で、よくファルコさんの声を拾えますね」
「狙撃手の僕は五感が優れてるからねー。あっ、列が進み始めたよー。ラミエル、僕らも移動しよー」
子供のように無邪気に笑う彼は、私の手を引いて歩き出す。
「シムナさん、はしゃぎ過ぎて転ばないでくださいよ」
「大丈夫だよー!僕、そんなダサいことしないからー!」
『あははっ!』と楽しげに笑うシムナさんは、いつも通りマイペースで……ちょっと安心する。
彼を見ていると、『何があっても大丈夫』と思えるから。
2
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜
鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。
弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?
毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。
完結致しました。
物凄くゆるいです。
設定もゆるいです。
シリアスは基本的家出して帰って来ません。
キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/
短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?
このお話は小説家になろう様にも投稿しております。
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
銀色の精霊族と鬼の騎士団長
柊
BL
スイは義兄に狂った愛情を注がれ、屋敷に監禁される日々を送っていた。そんなスイを救い出したのが王国最強の騎士団長エリトだった。スイはエリトに溺愛されて一緒に暮らしていたが、とある理由でエリトの前から姿を消した。
それから四年。スイは遠く離れた町で結界をはる仕事をして生計を立てていたが、どうやらエリトはまだ自分を探しているらしい。なのに仕事の都合で騎士団のいる王都に異動になってしまった!見つかったら今度こそ逃げられない。全力で逃げなくては。
捕まえたい執着美形攻めと、逃げたい訳ありきれいめ受けの攻防戦。
※流血表現あり。エリトは鬼族(吸血鬼)なので主人公の血を好みます。
※予告なく性描写が入ります。
※一部メイン攻め以外との性描写あり。総受け気味。
※シリアスもありますが基本的に明るめのお話です。
※ムーンライトノベルスにも掲載しています。
この行く先に
爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。
暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。
ムーンライトノベルズにて完結済
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる