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第四章

第144話『会議開始』

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「まだ来ていない者も居るが、約束の時間になったため先に会議を始めよう。では、これより────ゲーム攻略同盟による、全体会議を始める!」

 議長の立場にあるヘスティアさんの掛け声と共に、同盟会議は幕を開けた。

「まず、ハッカーチーム『箱庭』から送られてきたメールの真偽について話し合おうと思う。尚、攻略順の話についてはお呼びしたゲストが揃っていないため、後に回す。だから、まず最初に話し合うのは────“限界突破オーバーライン”についてだ」

 限界突破オーバーライン……ある一定の条件を満たすと、レベル99から100になる現象。
また、限界突破オーバーラインすることで職業ごとに特殊スキルを得られるらしい。

 一応、掲示板や公式チャットを用いて情報収集してみたけど、めぼしい情報は特になかった。
どれも、『○○なんじゃない?』という憶測ばかりだったから。

限界突破オーバーライン云々の前に、レベル99の方が少ないので何とも言えないなのです~」

「そうですね。私も一応古参のメンバーですが、まだレベル98ですし……」

 『前提条件からして真偽を確かめるのは難しい』と述べると、他の同盟メンバーは顔色を曇らせた。
きっと、彼らも同じような見解なのだろう。
────と、ここでリーダーが手を挙げる。

「ちょっといいか?」

「ん?無名自ら手を挙げるなんて、珍しいな!なんだ?何か分かったのか?」

「いや、分かったというか……実は俺、もう既に限界突破オーバーラインしているんだ」

「ははっ!そうかそうか……って、んん!?」

「「「ええぇぇぇえぇぇええ!!?」」」

 ここに来てまさかのカミングアウトに、ヘスティアさんはもちろん……私達も動揺を示す。
だって、こんな身近に限界突破オーバーラインを果たした人が居るなんて思わなかったから。

「ずっと言おうかどうか悩んでいたんだが、みんな考えが行き詰まっているようだから言わせてもらった」

「いや、悩んでいたって……無名、そこは最初から正直に……」

「ステータスは無闇に明かしていいものじゃない。何より、俺が限界突破オーバーラインを取得していると言っても信じない奴が居るだろうからな」

「お前なぁ……まだ前のことを根に持っているのか?」

「当然だ」

 どことなく重苦しい雰囲気を放つリーダーは、向かい側の席に居るプレイヤー達を睨みつける。

 えっと……何かあったのかな?
リーダーがここまで怒りを露わにするなんて、凄く珍しいから……基本は温厚なのに。

「はぁ……とりあえず、分かった。直ぐに言い出さなかった件については、何も言わない。発言しやすい環境を作ってやれなかった私にも、責任はある。だが────限界突破オーバーラインの詳細については話してもらうぞ。まず、いつソレを取得したんだ?」

「ゲーム世界に閉じ込められる三日前だな。最初はバグか何かかと思って、運営に報告したんだ。だが、返信をもらう前に『箱庭』が動き出して……だから、何もかも分からずじまいでずっと放置していたんだ」

「なるほどな……まあ、確かに『限界突破オーバーラインしました』って、いきなり言われても何がどうなってるのか分からないもんな。では、無名の職業と限界突破オーバーラインの条件を教えてくれるか?」

「……」

 当然のように投げ掛けられたヘスティアさんの質問に、リーダーは何故か押し黙る。
興味津々といった様子の同盟メンバーを一瞥し、少し考え込んだ。

 そういえば、私……リーダーが限界突破オーバーラインを取得していることはもちろん、職業が何なのかも知らないな。
本当にただ強いってことしか……ステータスの話はお互い、あんまりしなかったし。

 意外と秘密の多いリーダーに思いを馳せる中、彼は仕方なさそうに口を開く。

「俺の職業は────狂戦士バーサーカー。そして、限界突破オーバーライン取得の条件はレベル99になってから狂戦士バーサーカー化の総合ポイントが一億を超えること。まあ、早い話とにかく狂戦士バーサーカー化しまくるってことだ」

 『これでいいか?』と言わんばかりに溜め息を零すリーダーに、ヘスティアさん達は目を輝かせる。

「ふむ。無名の職業は狂戦士バーサーカーだったのか。なかなか珍しい職業だが、ウチにも一人居るからその情報は有り難い」

「でも、総合ポイント一億以上なんてなかなか難しい話なのです~」

「毎回100%を出して戦ったとしても、100万回戦闘をしないといけないですからね」

「ちなみにただ狂戦士バーサーカー化すれば良い話じゃない。狂戦士バーサーカー化したあと、きちんと戦闘を行わなければカウントされないらしい」

 なるほど。
じゃあ、『狂戦士バーサーカー化→即解除→またまた狂戦士バーサーカー化』という方法は通じない訳だ。
だって、それをOKにしたら簡単に限界突破オーバーラインを取得しちゃうもんね。
でも、問題は……どこからどこまで戦闘として扱われるか、だな。

「あの、リーダー。その戦闘って、仲間同士の手合わせなんかもカウントに入るんでしょうか?」

「さあな。それは分からない。でも、俺は仲間と手合わせなんて、ほとんどしなかった。今言えることはそれだけだ」

「ふむふむ。となると、無名のゲーム生活を参考にする必要がある訳だが……」

「PKばっかりしていた無名さんのゲーム生活は、再現不可能なのです~」

 アスタルテさんは無邪気な笑顔で、ヘスティアさんの考えをバッサリ切り捨てた。
胸の前で腕をクロスさせる彼女を前に、ヘスティアさんはガシガシと頭を搔く。

「まあ、とりあえず限界突破オーバーラインの取得方法については一旦置いておこう。無名よ、最後にもう一つだけ質問させてくれ。お前は限界突破オーバーラインを得て────どんなスキルを取得したんだ?」

 よく通る声で質問を投げ掛け、ヘスティアさんはスッと目を細める。
他の同盟メンバーも気になるようで、少し身を乗り出した。
誰もがリーダーの返答を待つ中、彼はフイッと視線を逸らす。

「……回答を拒否する」
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