139 / 315
第三章
第138話『質問タイム』
しおりを挟む
「んじゃ、まずは一つ目の質問~。何でファイアゴーレムを結界内に閉じ込めていたの~?」
毎度お馴染みの緩~い口調で告げられた質問は、意外と普通のものだった。
徳正さんのことだから、もっとこう……プライベートに関わるような質問をするかと思ったのに。
例えば────『何でレオンくんと別れたのか』とか……。
そう思ったのは私だけじゃなかったようで……アヤさんも少し驚いたように目を剥いている。
「ふぁ、ファイアゴーレムを結界内に閉じ込めていた理由は他の場所に行かせないためです。あの街は既にプレイヤーの避難を終えた状態だったので、そこにゴーレムを留めておくのが一番安全と判断しました。あくまで、『紅蓮の夜叉』の討伐隊が到着するまでの辛抱でしたし」
『街も小さかったので負担にはならなかった』と語るアヤさんに、徳正さんはスッと目を細めた。
「なるほど、なるほど~。ま、ゴーレムを監禁する理由なんて、そんなもんか~」
「あの、監禁という言い方は少し語弊があるのでやめてもらってもいいですか?」
「え~?でも、あんなの監禁と一緒じゃ~ん?」
「うぐ……確かにやっている事は監禁と変わりませんが、そう言うと犯罪をやっているような気分になるので……」
「ふ~ん?ま、そんな事はどうでもいいや~」
「ど、どうでも……!?」
『こっちは真剣なのに!?』とショックを受けるアヤさんに、徳正さんは全くフォローなどせず……私の頬を優しく撫でる。
漆黒に輝くセレンディバイトの瞳をうんと細めながら。
「んじゃ、次の質問ね~?どうして、俺っち達を助けたの~?理由は何~?」
「そ、れは…………」
口をもごもごさせ、なかなか答えようとしないアヤさんに、私は同情の目を向けた。
だって、その理由には大体見当がつくから。
『まあ、言いづらいよね』と苦笑する私の前で、アヤさんはそろりと視線を逸らす。
「それは、その……」
「それは~?」
「だから……えっと……」
「だから~?」
「っ~……!!レオンが居たからです!!」
徳正さんの煽りが効いたのか、アヤさんは半ばヤケクソになりながらも答えを叫んだ。
若干潤んだエメラルドの瞳を前に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ウチのメンバーが、本当すみません……後でよく言い聞かせておくので。
「へぇ~?レオンくんが居たから、助けてくれたんだ~?」
「か、勘違いしないでくださいよ!?私はただ同僚とその仲間達を助けようとしただけで、深い意味はありませんから!!」
「ふ~ん?ま、そういう事にしておいてあげるよ~。君達の恋愛事情なんて、一ミリも興味無いし~」
「れ、恋愛事情って……!!私達は……!!」
「はいはい、分かった分かった~」
ヒラヒラと手を振ってアヤさんの言葉を遮り、徳正さんは面倒臭そうに肩を竦めた。
恐らく、本気でどうでもいいのだろう。
レオンさんとアヤさんの様子を見る限り、二人ともまだ互いに未練がありそうなんだよなぁ……。
第三者目線から言わせてもらうと、『もうさっさとヨリ戻せよ、この二人』って感じである。
「んじゃ、最後の質問~。君はどうやって、俺っち達のスピードに付いてきたの~?ラルカの雷を防いだのも君なら、俺っち達に付いてきてたってことだよね~?」
自動車を超える速さで走っていた私達に、アヤさんが付いてくるのはどう考えても不可能。
結界師はあくまでサポート系の職業だから。
考えられる可能性としては、アヤさんの他にプレイヤーが居たくらい?
でも、他にプレイヤーが居るなら結界にファイアゴーレムを閉じ込めたりせず、普通に討伐している筈。
そのプレイヤーが私達のスピードに付いてこれるほどの猛者なら、尚更。
『う~ん……謎が深まるなぁ』と考えていると、アヤさん口を開く。
「あぁ、それは────“加速剤”を飲んでいたからですよ。まあ、直ぐに効果は切れちゃいましたけど」
そうですか、加速剤を……って、はい!?加速剤!?あの販売停止された!?
────加速剤。
その名の通り、移動速度や素早さを飛躍的に向上させる薬。
飲んだ分だけ早くなり、体が羽のように軽くなる。
初心者でも十本も飲めば、一流プレイヤーと同等のスピードを手に入れることが出来る代物だ。
と言っても、薬の効果が切れたら元通りだけどね。
当時、この加速剤は飛ぶように売れ、多くのプレイヤー達に愛用されていた。
だが……それも発売からたった三週間で終わりを告げる。
理由は至って簡単。
この加速剤の製造過程にチートが使われていたから。
なので、今はもうほとんど残っていない。
ただ、運営は加速剤を強制回収しなかったため誰かしら所持していてもおかしくなかった。
まあ、それも極小数だろうが。
「加速剤ねぇ~。どうりで、俺っち達のスピードに付いてこれた訳だ。やっと疑問が解けたよ~」
「なら、これでもう質問タイムは終了でいいですね?」
「うん、構わないよ~。もう聞きたいことは全部聞けたし~。答えてくれて、ありがとね~」
「いえ、秘密を守って頂ければ私はそれで構いません」
無事質問タイムが終わってホッとしているアヤさんは、肩から力を抜いた。
かと思えば、空中をタップする。
「どうやら、ヘスティアさん達は無事プレイヤー達の避難を終え、一斉砲火の準備が整ったみたいです。五分後に────中央大陸の集中砲火が開始されます」
毎度お馴染みの緩~い口調で告げられた質問は、意外と普通のものだった。
徳正さんのことだから、もっとこう……プライベートに関わるような質問をするかと思ったのに。
例えば────『何でレオンくんと別れたのか』とか……。
そう思ったのは私だけじゃなかったようで……アヤさんも少し驚いたように目を剥いている。
「ふぁ、ファイアゴーレムを結界内に閉じ込めていた理由は他の場所に行かせないためです。あの街は既にプレイヤーの避難を終えた状態だったので、そこにゴーレムを留めておくのが一番安全と判断しました。あくまで、『紅蓮の夜叉』の討伐隊が到着するまでの辛抱でしたし」
『街も小さかったので負担にはならなかった』と語るアヤさんに、徳正さんはスッと目を細めた。
「なるほど、なるほど~。ま、ゴーレムを監禁する理由なんて、そんなもんか~」
「あの、監禁という言い方は少し語弊があるのでやめてもらってもいいですか?」
「え~?でも、あんなの監禁と一緒じゃ~ん?」
「うぐ……確かにやっている事は監禁と変わりませんが、そう言うと犯罪をやっているような気分になるので……」
「ふ~ん?ま、そんな事はどうでもいいや~」
「ど、どうでも……!?」
『こっちは真剣なのに!?』とショックを受けるアヤさんに、徳正さんは全くフォローなどせず……私の頬を優しく撫でる。
漆黒に輝くセレンディバイトの瞳をうんと細めながら。
「んじゃ、次の質問ね~?どうして、俺っち達を助けたの~?理由は何~?」
「そ、れは…………」
口をもごもごさせ、なかなか答えようとしないアヤさんに、私は同情の目を向けた。
だって、その理由には大体見当がつくから。
『まあ、言いづらいよね』と苦笑する私の前で、アヤさんはそろりと視線を逸らす。
「それは、その……」
「それは~?」
「だから……えっと……」
「だから~?」
「っ~……!!レオンが居たからです!!」
徳正さんの煽りが効いたのか、アヤさんは半ばヤケクソになりながらも答えを叫んだ。
若干潤んだエメラルドの瞳を前に、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
ウチのメンバーが、本当すみません……後でよく言い聞かせておくので。
「へぇ~?レオンくんが居たから、助けてくれたんだ~?」
「か、勘違いしないでくださいよ!?私はただ同僚とその仲間達を助けようとしただけで、深い意味はありませんから!!」
「ふ~ん?ま、そういう事にしておいてあげるよ~。君達の恋愛事情なんて、一ミリも興味無いし~」
「れ、恋愛事情って……!!私達は……!!」
「はいはい、分かった分かった~」
ヒラヒラと手を振ってアヤさんの言葉を遮り、徳正さんは面倒臭そうに肩を竦めた。
恐らく、本気でどうでもいいのだろう。
レオンさんとアヤさんの様子を見る限り、二人ともまだ互いに未練がありそうなんだよなぁ……。
第三者目線から言わせてもらうと、『もうさっさとヨリ戻せよ、この二人』って感じである。
「んじゃ、最後の質問~。君はどうやって、俺っち達のスピードに付いてきたの~?ラルカの雷を防いだのも君なら、俺っち達に付いてきてたってことだよね~?」
自動車を超える速さで走っていた私達に、アヤさんが付いてくるのはどう考えても不可能。
結界師はあくまでサポート系の職業だから。
考えられる可能性としては、アヤさんの他にプレイヤーが居たくらい?
でも、他にプレイヤーが居るなら結界にファイアゴーレムを閉じ込めたりせず、普通に討伐している筈。
そのプレイヤーが私達のスピードに付いてこれるほどの猛者なら、尚更。
『う~ん……謎が深まるなぁ』と考えていると、アヤさん口を開く。
「あぁ、それは────“加速剤”を飲んでいたからですよ。まあ、直ぐに効果は切れちゃいましたけど」
そうですか、加速剤を……って、はい!?加速剤!?あの販売停止された!?
────加速剤。
その名の通り、移動速度や素早さを飛躍的に向上させる薬。
飲んだ分だけ早くなり、体が羽のように軽くなる。
初心者でも十本も飲めば、一流プレイヤーと同等のスピードを手に入れることが出来る代物だ。
と言っても、薬の効果が切れたら元通りだけどね。
当時、この加速剤は飛ぶように売れ、多くのプレイヤー達に愛用されていた。
だが……それも発売からたった三週間で終わりを告げる。
理由は至って簡単。
この加速剤の製造過程にチートが使われていたから。
なので、今はもうほとんど残っていない。
ただ、運営は加速剤を強制回収しなかったため誰かしら所持していてもおかしくなかった。
まあ、それも極小数だろうが。
「加速剤ねぇ~。どうりで、俺っち達のスピードに付いてこれた訳だ。やっと疑問が解けたよ~」
「なら、これでもう質問タイムは終了でいいですね?」
「うん、構わないよ~。もう聞きたいことは全部聞けたし~。答えてくれて、ありがとね~」
「いえ、秘密を守って頂ければ私はそれで構いません」
無事質問タイムが終わってホッとしているアヤさんは、肩から力を抜いた。
かと思えば、空中をタップする。
「どうやら、ヘスティアさん達は無事プレイヤー達の避難を終え、一斉砲火の準備が整ったみたいです。五分後に────中央大陸の集中砲火が開始されます」
2
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜
鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。
弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?
毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。
完結致しました。
物凄くゆるいです。
設定もゆるいです。
シリアスは基本的家出して帰って来ません。
キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/
短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?
このお話は小説家になろう様にも投稿しております。
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
銀色の精霊族と鬼の騎士団長
柊
BL
スイは義兄に狂った愛情を注がれ、屋敷に監禁される日々を送っていた。そんなスイを救い出したのが王国最強の騎士団長エリトだった。スイはエリトに溺愛されて一緒に暮らしていたが、とある理由でエリトの前から姿を消した。
それから四年。スイは遠く離れた町で結界をはる仕事をして生計を立てていたが、どうやらエリトはまだ自分を探しているらしい。なのに仕事の都合で騎士団のいる王都に異動になってしまった!見つかったら今度こそ逃げられない。全力で逃げなくては。
捕まえたい執着美形攻めと、逃げたい訳ありきれいめ受けの攻防戦。
※流血表現あり。エリトは鬼族(吸血鬼)なので主人公の血を好みます。
※予告なく性描写が入ります。
※一部メイン攻め以外との性描写あり。総受け気味。
※シリアスもありますが基本的に明るめのお話です。
※ムーンライトノベルスにも掲載しています。
この行く先に
爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。
暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。
ムーンライトノベルズにて完結済
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる