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第三章

第102話『いつぞやのクマのぬいぐるみ集団』

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「ようやく、始まりましたか……」

 竜巻により体の四分の一を失ったファイアゴーレムを見つめ、私は『まだ生きているんだ』と零す。
正直、今の一撃で決まったと思っていたから。
『現実そう甘くないか』と嘆息しつつ、私は純白の杖をギュッと握り締めた。

「oh……ラミエル、さっきの竜巻の影響で僕の弓矢も壊れてしまったようだ。破損が激しくて、遠隔操作リモートコントロールを続行するのは少し難しそうだよ……新しい弓矢を投入するかい?」

 遠隔操作リモートコントロールを通して弓矢の状況が大体分かるリアムさんは、こちらを振り返る。
きちんとこちらの判断を仰ぐ彼の態度に、私は好感を抱いた。

「いえ、弓矢はもう大丈夫です。あとは戦闘組が何とかしてくれるでしょう。リアムさんは彼らの戦闘を見守っていてください。何か異変があれば、報告を」

「了解♪任せておくれ」

 不満も言わずに笑顔で応じるリアムさんに、私も頷き返す。
────と、ここでいつぞやのクマのぬいぐるみが姿を現した。
『もしや、また集団リンチを!?』と思うものの、どうやら今度は違うらしい。
抵抗するファイアゴーレムを上から、必死に押さえ込んでいた。

「相変わらず、ラルカはすげぇーな。あれだけのぬいぐるみを一斉に操れるなんて、天才じゃん」

「そうだね。でも、僕はこのぬいぐるみを作った人も凄いと思うよ。あそこまで強い熱耐性を付与出来るプレイヤーなんて、なかなか居ないからね」

「そういえば、あのクマのぬいぐるみは燃えていませんね。火の海のド真ん中に居るというのに……」

 『虐殺の紅月』の生産関係は全部アラクネさんが請け負っているみたいだし、このぬいぐるみもアラクネさん作かな?だとしたら、本当に凄い。

 などと思いつつ、私はクマのぬいぐるみ集団を観察する。

「────ん?あれ……?ぬいぐるみの足、燃えてません……?」

 足元は火の海なので見えづらいけど、……よく見てみると、太もも辺りまで若干焦げている。
ただ、熱耐性のおかげでまだ完全に燃え移ってはいなかった。

「さすがにあの高温の炎を浴び続けるのは、無理があったみたいだね」

「上半身はともかく、下半身は火の海の影響でずっと焼かれているからなぁ……付与された熱耐性に限界が来ても、おかしくねぇ。むしろ、よく持った方だろ」

「普通のぬいぐるみなら、火の海に触れた時点で丸焦げ……いや、灰になってますもんね」

 『クマ好きのラルカさんが見たら、発狂しそう……』と頬を引き攣らせる私は、報告しようかどうか迷う。

 ……ちょっと罪悪感はあるけど、黙っておこう。
燃えていることに気づいたら、絶対『アイテムボックスに戻す!!』って騒ぐだろうし。
せっかく、ファイアゴーレムの身動きを封じることが出来たんだから、このまま行きたい。

 『ごめん、ラルカさん……』と心の中で謝りつつ、私は静かに合掌した。
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