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第三章

第99話『後退と役割分担』

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「一先ず、こっちを先に片付けないと」

 ファイアゴーレム自体は大して強くないが、この灼熱の炎のせいで無闇に近づけない。
とはいえ、全く手を出せないという訳でもなかった。
だって、この炎は────横に広がることはあっても、縦に広がることはないから。
さっき、上空に退避して無事だったのがいい証拠。
つまり、空中戦なら勝機はあるってことだけど……人数に制限が掛かってしまう。
というのも、空を飛ぶ手段がグリフォンしかないため。

 『最大乗車人数は三人……』と心の中で呟き、私は眉間に皺を寄せた。

 問題はどうやって戦闘組と待機組で分けるか、だよね……。
まずビビリな狂戦士バーサーカーであるレオンさんと、まだ不安要素の大きい狩人ハンターのリアムさんは待機組に入れるとして……柔軟な対応と影魔法による範囲攻撃が出来る徳正さんは、絶対戦闘組に入れたい。
残るは私とシムナさんとラルカさんだけど……。

 普通に考えれば、非戦闘要員の私は待機組に組み込まれるだろう。
ただ、脳筋思考しか出来ない三馬鹿に全てを託していいものなのか……。
正直不安だから、私の指揮下に置いておきたいのが本音。
となると、私も戦闘組に入らないといけないんだよね……って、ん?ちょっと待って?

「────通話を繋げれば、離れていても指揮出来るんじゃない?」

 魔物モンスター爆発のときのことを思い返し、私はポンッと手を叩いた。
『それだ!』と目を輝かせながら。

「皆さん、お待たせしてしまって申し訳ありません。考えが纏まったので、役割分担を発表して行きますね」

 そう言って、私はニッコリと微笑んだ。

「まず、今回は戦闘組と待機組……いえ、後方支援組で別れたいと思います。戦闘組は徳正さん、ラルカさん、シムナさんの三名。御三方はグリフォンの背中に乗って、ファイアゴーレムと戦ってください。ただ見ての通り、あのファイアゴーレム二体は今までのものと違って、身に纏っている炎の温度が計り知れないのでご注意を。最悪の場合は徳正さんの影魔法で対処してください。決して、無理はしないように。分かりましたね?」

「はーい!ラミエルがそう言うなら、無理しないよー!僕もまだ死ぬ訳にはいかないからねー!あと二百回くらいラミエルにギューってして貰わないと、死んでも死に切れない!」

『その不純な動機……というか、生きる理由はどうかと思うが、まあ『死ぬ訳にはいかない』という点に関しては同意する。決して無理はしないと誓おう』

「俺っちも無理はしないようにするよ~。ここで無理したところで、特にメリットないからね~。死ぬなら、ラーちゃんの胸に抱かれて死にた……いてっ!?」

 『ラーちゃんの胸に抱かれて死にたい』と言おうとしたであろう徳正さんに、私は肘鉄を食らわせた。
すると、徳正さんは『っ~……!!暴力的なラーちゃんも好き!』と叫んで横腹を押さえる。
全然懲りていない様子の変態を前に、私は一つ息を吐いた。

 もういいや、無視しよう。時間の無駄だし。

「残りのメンバーであるレオンさん、リアムさん、私の三人は後方支援組です。主に戦闘組のサポートを行います。私は回復と指揮を、リアムさんは弓矢によるファイアゴーレムの牽制を、レオンさんは私とリアムさんの護衛をお願いします。火の海の警戒をしながらサポートすることになるので、気を抜かないようにしてください」

「任せておくれ。弓矢には自信があるんだ。そこら辺の弓使いアーチャーより、的中率は高い筈だよ。弓矢の遠隔操作リモートコントロールだって、出来るからね。期待してくれて、構わないよ」

「まあ、どんなに的中率が高くても肝心の弓矢が炎で焼け切れたら意味ないけどな」

「それは言えているー!」

 ちょっとした意地悪を働くレオンさんに、シムナさんはここぞとばかりに便乗した。

 自慢くらい、自由にさせてあげたらいいのに……。

 私はギャーギャーと騒ぐレオンさんとシムナさんを一瞥し、火の海に目を向ける。
と同時に、声を張り上げた。

「それでは、これよりファイアゴーレム二体の討伐に移ります。各々与えられた役割を全うしてください────散開」
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