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第三章

第66話『各大陸の戦力状況』

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 それから重傷者の治療とシムナさんとの合流を終え、私達は白虎の街を後にしていた。
次の街に向かいつつ、私は最新情報を入手していく。
徳正さんにお姫様抱っこされた状態で。

 あれ?郊外での目撃件数が、急に増えてる……さっきまで、十数件程度だったのに。
街から郊外へ逃げ出したプレイヤーが、増えた影響かな?
一つで多くの情報を集めているこちらとしては、有り難い変化だけど……ちょっと不安だな。
下手に戦力を分散させたら死亡リスクが高まるし、ゴーレムを倒せる勢力が減ってしまう。

 リーダーからの報告でゲーム攻略組同盟メンバーが『紅蓮の夜叉』を中心にイベントに取り組んでいるのは知ってるけど、圧倒的に数が少ない。その上、数が偏り過ぎている。
東大陸と西大陸は私達『虐殺の紅月』のメンバーが居るから、いいとして……問題は南大陸と北大陸だった。
南大陸の方にはヴィエラさんとアラクネさんが向かってるみたいだけど、完全に出遅れたためどうなるか分からない。
ただ、『紅蓮の夜叉』の幹部メンバーも数人居るらしいので、彼らと上手く協力すれば何とかなるかもしれない。
こればっかりは信じて任せるしかないだろう。

 で、北大陸の方だけど……こっちには今のところ、戦力という戦力がなかった。
もちろん、プレイヤーは多く住み着いているのだが、戦況を一転させるレベルの強者は居ない。
大陸全土のゴーレムを狩るには、ちょっと心もとなかった。
なので、北大陸のゴーレム討伐は絶望的だった。

 ゴーレムの強さはダンジョンのフロアボス程度。いや、それよりも少し弱いくらい。
私達なら余裕で相手出来るけど、西大陸のゴーレム討伐で手一杯だしなぁ……。
仕方ない、リーダーに相談してみるか。
そしたら、ヘスティアさんや同盟メンバーにも北大陸の戦力不足を伝えられるだろうし。

 『上の判断を仰ごう』ということで考えがまとまり、私はリーダーとの個チャを開いた。
と同時に、文章を打ち込んでいく。

「ラーちゃん、誰かにメール~?」

「はい。リーダーに相談したいことがあったので」

「え~?俺っちには、相談してくれないの~?」

「北大陸の戦力不足問題ですよ?私や徳正さんでは、解決出来ません。なので、リーダー経由で同盟メンバーに話を伝えてもらおうと思いまして……」

「あぁ、なるほど~。確かにそれは俺っちに相談されてもどうにも出来ないや~」

 リーダーへの相談内容を聞いて、徳正さんは納得したように頷いた。
真っ先に自分に相談して貰えなかったのが気に食わなかったらしいが、内容が内容なだけに『仕方ない』と割り切ったらしい。
視線を前に戻した彼の前で、私は作成した文章を早速送信した。
すると、直ぐに既読がつく。

────────────────────
No.1:分かった。こっちで何とかする
────────────────────

 というリーダーの返信に、私は『お願いします』と返し、チャットを閉じた。
そして、直ぐに掲示板や公式チャットを開く。

 次の街に到着するまで、まだ時間がある。少しでも、多くの目撃情報を集めなくちゃ。
今は時間を一秒でも無駄に出来ない。

 逸る気持ちを抑えながら、私は画面をスワイプしていく。
目に入る情報を脳に刻み込み、文章を一つ一つ丁寧に読み解いた。
────と、ここで無機質な機械音声が脳内に流れる。

『ゴーレムの討伐数が、五百を越えました。おめでとうございます。次のアナウンスは討伐数が千を越えた時です』
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