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第二章
第43話『渦神カリュブディスの攻略方法』
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ボスフロアが水源エリアじゃなければ、ゴリ押しで行くんだけど……水中戦での物理攻撃は、あまりダメージを与えられないんだよね。
水抵抗のせいで、勢いを殺されるから。
正直、物理特化パーティーの私達と水中魔物である“渦神カリュブディス”との相性は最悪。勝てる気がしない。
せめて、足場となる地面か宙を飛ぶ浮遊魔法があればなぁ……。
水中戦さえ避けられれば、大分有利になる……って、ちょっと待てよ?
“あれ”を使えば、水中戦を避けられるんじゃないか!?
「徳正さん!この前、使った────『グリュプスの笛』って、ありますか!?」
空中を自由に飛び回ることの出来るグリフォンが居れば、戦いはかなり楽になる。
少なくとも、水中に引きずり込まれて溺死する可能性は低くなる筈!
そんな私の考えを瞬時に見抜いたのか、徳正さんは表情を明るくした。
「もちろん、あるよ~。売っぱらっても良かったんだけど、きっとまたどこかで使う機会があると思ってさ~。取っておいたんだよね~」
「ナイス判断です、徳正さん!助かりました!」
「でしょでしょ~」
徳正さんは『ふふん!』と得意げに胸を反らし、アイテムボックスから取り出した角笛を自慢げに掲げる。
そして、『もっと褒めて』と言わんばかりにこちらへアイコンタクトを送ってきた。
が、私は華麗にスルー。
「ラーちゃんが俺っちに冷たい……」
『それは今に始まったことではない』
「あはははっ!徳正ってば、見事に振られたねー!」
シュンと肩を落とす徳正さんに、ラルカさんとシムナさんはまさかの追い討ちをかけた。
慰める気0である。
徳正さんを落ち込ませた私が言うのもなんだけど、ちょっと皆対応が雑じゃない?
もう少し愛を持って接してあげよう?
「まあ、徳正のことは置いといて……グリフォンを使ってどんな作戦を立てるわけー?」
『グリフォンは二人乗りの移動アイテムだ。どんなに詰めて座っても三人が限界だろう。誰か一人は待機することになるぞ』
「そうですね。全員乗ることは物理的に不可能です」
フロアボスとの戦いでは外部からの接触・横槍を防ぐため、部屋全体に結界が張られる。
結界外からは攻撃も出来なければ、仲間の支援も出来ない。
なので、一人だけ外に待機してこっそりサポートする……というのは無理だった。
『可能だったなら、支援職の私が外で待機するんだけど』と肩を竦め、熟考する。
どのようにメンバーを振り分けるか、を。
う~ん……本当はあまり気が進まないんだけど、確実性を狙うならこれしかないか。
「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、水面を走ることって可能ですか?」
「ん~?水面~?走れるよ~。だって、俺っち忍者だもん~。でも、それがどうかした~?────って、まさか……」
「はい、その『まさか』です」
さすがは徳正さんと言うべきか、瞬時に私の思惑を見抜いたようだ。
『相変わらず、察しのいい人だな』と思いつつ、私は人差し指を立てる。
「徳正さんには────囮役をやってもらいます」
「『えっ!?』」
まさか私が仲間を囮として使うとは思わなかったのか、ラルカさんとシムナさんは驚きを隠し切れずにいた。
対する徳正さんは平然としているが。
私だって、出来れば仲間を囮に使いたくない。でも、今はこれしかないの。
それに徳正さんのスピードに、“渦神カリュブディス”が付いてくるとは思えないし。
水中なら話は別だが、徳正さんが走るのは水面。
水中に引きずり込まれないよう気をつければ、被害は出ないだろう。
「徳正さんが“渦神カリュブディス”を引き付けている間に、私達は“これ”を使ってボスフロアの水を吸い上げます」
そう言って、私は────アイテムボックスの中から、何の変哲もない瓢箪を取り出した。
これは液体状のものなら、何でも無限に吸い込めるアイテム。容量制限のない水筒と思ってくれていい。
何かの景品で手に入れたアイテムだったが、売らずにアイテムボックスの中に放置……じゃなくて、大事に取っておいて良かった。
「全ての水を吸い上げるとまで行かずとも、水深を低くすることが出来れば大分戦いやすくなります。なので、徳正さんには時間稼ぎをお願いしたいんです」
「なるほどね~。そのための囮か~」
『敵のフィールドを作り替えるとは、なかなかいい発想だ』
「“縛り”さえなければ、あんな魔物瞬殺だもんねー!」
感心しきりといった様子で頷く三人に、私は頬を緩める。
彼らに褒められたことが、ただ嬉しくて。
「異論はなさそうですね?では、これより────“渦神カリュブディス”討伐作戦を開始します!」
水抵抗のせいで、勢いを殺されるから。
正直、物理特化パーティーの私達と水中魔物である“渦神カリュブディス”との相性は最悪。勝てる気がしない。
せめて、足場となる地面か宙を飛ぶ浮遊魔法があればなぁ……。
水中戦さえ避けられれば、大分有利になる……って、ちょっと待てよ?
“あれ”を使えば、水中戦を避けられるんじゃないか!?
「徳正さん!この前、使った────『グリュプスの笛』って、ありますか!?」
空中を自由に飛び回ることの出来るグリフォンが居れば、戦いはかなり楽になる。
少なくとも、水中に引きずり込まれて溺死する可能性は低くなる筈!
そんな私の考えを瞬時に見抜いたのか、徳正さんは表情を明るくした。
「もちろん、あるよ~。売っぱらっても良かったんだけど、きっとまたどこかで使う機会があると思ってさ~。取っておいたんだよね~」
「ナイス判断です、徳正さん!助かりました!」
「でしょでしょ~」
徳正さんは『ふふん!』と得意げに胸を反らし、アイテムボックスから取り出した角笛を自慢げに掲げる。
そして、『もっと褒めて』と言わんばかりにこちらへアイコンタクトを送ってきた。
が、私は華麗にスルー。
「ラーちゃんが俺っちに冷たい……」
『それは今に始まったことではない』
「あはははっ!徳正ってば、見事に振られたねー!」
シュンと肩を落とす徳正さんに、ラルカさんとシムナさんはまさかの追い討ちをかけた。
慰める気0である。
徳正さんを落ち込ませた私が言うのもなんだけど、ちょっと皆対応が雑じゃない?
もう少し愛を持って接してあげよう?
「まあ、徳正のことは置いといて……グリフォンを使ってどんな作戦を立てるわけー?」
『グリフォンは二人乗りの移動アイテムだ。どんなに詰めて座っても三人が限界だろう。誰か一人は待機することになるぞ』
「そうですね。全員乗ることは物理的に不可能です」
フロアボスとの戦いでは外部からの接触・横槍を防ぐため、部屋全体に結界が張られる。
結界外からは攻撃も出来なければ、仲間の支援も出来ない。
なので、一人だけ外に待機してこっそりサポートする……というのは無理だった。
『可能だったなら、支援職の私が外で待機するんだけど』と肩を竦め、熟考する。
どのようにメンバーを振り分けるか、を。
う~ん……本当はあまり気が進まないんだけど、確実性を狙うならこれしかないか。
「徳正さん、つかぬ事をお聞きしますが、水面を走ることって可能ですか?」
「ん~?水面~?走れるよ~。だって、俺っち忍者だもん~。でも、それがどうかした~?────って、まさか……」
「はい、その『まさか』です」
さすがは徳正さんと言うべきか、瞬時に私の思惑を見抜いたようだ。
『相変わらず、察しのいい人だな』と思いつつ、私は人差し指を立てる。
「徳正さんには────囮役をやってもらいます」
「『えっ!?』」
まさか私が仲間を囮として使うとは思わなかったのか、ラルカさんとシムナさんは驚きを隠し切れずにいた。
対する徳正さんは平然としているが。
私だって、出来れば仲間を囮に使いたくない。でも、今はこれしかないの。
それに徳正さんのスピードに、“渦神カリュブディス”が付いてくるとは思えないし。
水中なら話は別だが、徳正さんが走るのは水面。
水中に引きずり込まれないよう気をつければ、被害は出ないだろう。
「徳正さんが“渦神カリュブディス”を引き付けている間に、私達は“これ”を使ってボスフロアの水を吸い上げます」
そう言って、私は────アイテムボックスの中から、何の変哲もない瓢箪を取り出した。
これは液体状のものなら、何でも無限に吸い込めるアイテム。容量制限のない水筒と思ってくれていい。
何かの景品で手に入れたアイテムだったが、売らずにアイテムボックスの中に放置……じゃなくて、大事に取っておいて良かった。
「全ての水を吸い上げるとまで行かずとも、水深を低くすることが出来れば大分戦いやすくなります。なので、徳正さんには時間稼ぎをお願いしたいんです」
「なるほどね~。そのための囮か~」
『敵のフィールドを作り替えるとは、なかなかいい発想だ』
「“縛り”さえなければ、あんな魔物瞬殺だもんねー!」
感心しきりといった様子で頷く三人に、私は頬を緩める。
彼らに褒められたことが、ただ嬉しくて。
「異論はなさそうですね?では、これより────“渦神カリュブディス”討伐作戦を開始します!」
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