22 / 315
第一章
第21話『外食』
しおりを挟む
それから、私達はアラクネさんのリクエストで洋食店の『美食の森』を訪れていた。
ここは生産系ギルドの営むお店で、結構人気が高い。リユニオンタウンの他にも、幾つか支店があった。
「ねぇねぇ、どれにする~?洋食なんて久しぶりだから、テンション上がるね~」
「そ、そそそそそ、そうですね!」
『最近はずっと木の実や焼き魚ばかりだったから、まともな食事自体久しぶりだ』
「緊急招集ですから、他の街に寄る余裕なんてありませんもんね」
『まあ、そもそもここでは食事する必要もないのだが』と思いつつ、メニュー表を覗き込む。
そこには、現実世界のファミレスと同じようなメニューがズラリと並んでいた。
『おお、お子様ランチまである』と半ば感心していると、徳正さんが片手を挙げる。
「はいはーい!店員さん、注文いーい?俺っちはハンバーグのAセット~」
「わ、わわわわわわ、私はベーグルサンドとシチューのセットでお願いします!」
「じゃあ、私はオムライスとコンスープのセットで」
『僕はお子様ランチのBセット。玩具はクマのストラップでお願いする』
……えっ!?ラルカさん、お子様ランチ食べるの!?
ていうか、おまけの玩具まで細かく指定する人、子供以外で初めて見たんだけど……!?
動揺のあまり固まる中、注文を取りに来た店員さんは何とか表情を取り繕う。
「え、えーと……ご注文を繰り返させて頂きます。ハンバーグのAセットがお一つ、ベーグルサンドとシチューのセットがお一つ、オムライスとコンスープのセットがお一つ、お子様ランチBセットがお一つ。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
『クマのストラップ、忘れないでくれよ』
「は、はい……きちんと持って参ります」
クマのストラップに異常な執着を見せるラルカさんに、店員のお姉さんは若干引き気味に答えた。
かと思えば、直ぐお店の奥に引っ込んでしまう。
心中お察しします……。
店員さんの労をねぎらい、私は心の中で合掌した。
『ウチのメンバーが、すみません』と謝る中、注文した料理とクマのストラップは運び込まれる。
出来たてホカホカの料理たちを前に、私達は頬を緩めた。
「ではでは~、いっただきまーす!」
「い、いただきます!!」
「いただきます」
『いただきます』
私達は食事の挨拶を終えるや否や、久々の洋食にかぶりついた。
んー!卵ふわふわ~!ケチャップライスの味付けも絶妙で、全然しつこくない~!美味しい!!
『これなら、いくらでも食べられる~!』と思いながら、私はオムライスを食べ進める。
────と、ここでグチャという音が耳を掠めた。
「ちょ、ラルカ~。食べる時くらい、着ぐるみ脱いだら~?」
『この着ぐるみが、僕の本体だ』
「ちょっと意味分かんないかな~?てか、それちゃんと食べられてるの~?」
『ああ。きちんと食べられている。お子様ハンバーグの味がちゃんとするからな』
「そ、そう~?なら、いいんだけどさ~」
あのおふざけ大好きKYマンの徳正さんを、引かせるなんて……やっぱり、この人ただ者じゃない!
着ぐるみの口部分にソースたっぷりのハンバーグを押し込むラルカさんに、私は少しばかり警戒心を募らせる。
『徳正さん以上にキャラの濃い人なんて、居たんだ』と思案する中、ラルカさんは顔を上げた。
『うまい』
「そ、そそそそそそそ、それは良かったです!」
『また皆で来よう』
「店、出禁になってなければね~」
『お子様ランチの玩具をコンプリートしたい』
「か、可愛いですね~!このストラップ!」
ラルカさんの手にあるクマのストラップを見つめ、私はパンッと手を合わせる。
『凄く素敵』ということを強調するために。
そのおかげか、ラルカさんの機嫌は少し良くなった。
な、何なんだ?この人。
クマが好きなのか?いや、絶対そうだよね!?
ここまでクマだらけだと、嫌でも気づくよ!
『これで好きじゃなかったら逆に驚く』と考える私の前で、ラルカさんは汚れてしまった口元を手で拭う。
その仕草は妙にスマートだが、着ぐるみのせいで台無しだった。
『ご馳走様』
そう言って……いや、書いて?ラルカさんはパーフェクトクリーンを取り出した。
と同時に、ソレを発動させる。
パーフェクトクリーンとは、使用者の周りや使用者自身を綺麗にするアイテムのこと。
見た目はただの小さな白い紙で、持ち運びにも便利。
そのため、旅好きの間では重宝されている。
パーフェクトクリーンを持ってるなら、最初から使えば良かったのに……。
どう頑張っても言動が読めないラルカさんに苦笑を漏らし、私も残りのオムライスも平らげた。
ここは生産系ギルドの営むお店で、結構人気が高い。リユニオンタウンの他にも、幾つか支店があった。
「ねぇねぇ、どれにする~?洋食なんて久しぶりだから、テンション上がるね~」
「そ、そそそそそ、そうですね!」
『最近はずっと木の実や焼き魚ばかりだったから、まともな食事自体久しぶりだ』
「緊急招集ですから、他の街に寄る余裕なんてありませんもんね」
『まあ、そもそもここでは食事する必要もないのだが』と思いつつ、メニュー表を覗き込む。
そこには、現実世界のファミレスと同じようなメニューがズラリと並んでいた。
『おお、お子様ランチまである』と半ば感心していると、徳正さんが片手を挙げる。
「はいはーい!店員さん、注文いーい?俺っちはハンバーグのAセット~」
「わ、わわわわわわ、私はベーグルサンドとシチューのセットでお願いします!」
「じゃあ、私はオムライスとコンスープのセットで」
『僕はお子様ランチのBセット。玩具はクマのストラップでお願いする』
……えっ!?ラルカさん、お子様ランチ食べるの!?
ていうか、おまけの玩具まで細かく指定する人、子供以外で初めて見たんだけど……!?
動揺のあまり固まる中、注文を取りに来た店員さんは何とか表情を取り繕う。
「え、えーと……ご注文を繰り返させて頂きます。ハンバーグのAセットがお一つ、ベーグルサンドとシチューのセットがお一つ、オムライスとコンスープのセットがお一つ、お子様ランチBセットがお一つ。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
『クマのストラップ、忘れないでくれよ』
「は、はい……きちんと持って参ります」
クマのストラップに異常な執着を見せるラルカさんに、店員のお姉さんは若干引き気味に答えた。
かと思えば、直ぐお店の奥に引っ込んでしまう。
心中お察しします……。
店員さんの労をねぎらい、私は心の中で合掌した。
『ウチのメンバーが、すみません』と謝る中、注文した料理とクマのストラップは運び込まれる。
出来たてホカホカの料理たちを前に、私達は頬を緩めた。
「ではでは~、いっただきまーす!」
「い、いただきます!!」
「いただきます」
『いただきます』
私達は食事の挨拶を終えるや否や、久々の洋食にかぶりついた。
んー!卵ふわふわ~!ケチャップライスの味付けも絶妙で、全然しつこくない~!美味しい!!
『これなら、いくらでも食べられる~!』と思いながら、私はオムライスを食べ進める。
────と、ここでグチャという音が耳を掠めた。
「ちょ、ラルカ~。食べる時くらい、着ぐるみ脱いだら~?」
『この着ぐるみが、僕の本体だ』
「ちょっと意味分かんないかな~?てか、それちゃんと食べられてるの~?」
『ああ。きちんと食べられている。お子様ハンバーグの味がちゃんとするからな』
「そ、そう~?なら、いいんだけどさ~」
あのおふざけ大好きKYマンの徳正さんを、引かせるなんて……やっぱり、この人ただ者じゃない!
着ぐるみの口部分にソースたっぷりのハンバーグを押し込むラルカさんに、私は少しばかり警戒心を募らせる。
『徳正さん以上にキャラの濃い人なんて、居たんだ』と思案する中、ラルカさんは顔を上げた。
『うまい』
「そ、そそそそそそそ、それは良かったです!」
『また皆で来よう』
「店、出禁になってなければね~」
『お子様ランチの玩具をコンプリートしたい』
「か、可愛いですね~!このストラップ!」
ラルカさんの手にあるクマのストラップを見つめ、私はパンッと手を合わせる。
『凄く素敵』ということを強調するために。
そのおかげか、ラルカさんの機嫌は少し良くなった。
な、何なんだ?この人。
クマが好きなのか?いや、絶対そうだよね!?
ここまでクマだらけだと、嫌でも気づくよ!
『これで好きじゃなかったら逆に驚く』と考える私の前で、ラルカさんは汚れてしまった口元を手で拭う。
その仕草は妙にスマートだが、着ぐるみのせいで台無しだった。
『ご馳走様』
そう言って……いや、書いて?ラルカさんはパーフェクトクリーンを取り出した。
と同時に、ソレを発動させる。
パーフェクトクリーンとは、使用者の周りや使用者自身を綺麗にするアイテムのこと。
見た目はただの小さな白い紙で、持ち運びにも便利。
そのため、旅好きの間では重宝されている。
パーフェクトクリーンを持ってるなら、最初から使えば良かったのに……。
どう頑張っても言動が読めないラルカさんに苦笑を漏らし、私も残りのオムライスも平らげた。
2
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜
鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。
弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?
毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。
完結致しました。
物凄くゆるいです。
設定もゆるいです。
シリアスは基本的家出して帰って来ません。
キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/
短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?
このお話は小説家になろう様にも投稿しております。
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
銀色の精霊族と鬼の騎士団長
柊
BL
スイは義兄に狂った愛情を注がれ、屋敷に監禁される日々を送っていた。そんなスイを救い出したのが王国最強の騎士団長エリトだった。スイはエリトに溺愛されて一緒に暮らしていたが、とある理由でエリトの前から姿を消した。
それから四年。スイは遠く離れた町で結界をはる仕事をして生計を立てていたが、どうやらエリトはまだ自分を探しているらしい。なのに仕事の都合で騎士団のいる王都に異動になってしまった!見つかったら今度こそ逃げられない。全力で逃げなくては。
捕まえたい執着美形攻めと、逃げたい訳ありきれいめ受けの攻防戦。
※流血表現あり。エリトは鬼族(吸血鬼)なので主人公の血を好みます。
※予告なく性描写が入ります。
※一部メイン攻め以外との性描写あり。総受け気味。
※シリアスもありますが基本的に明るめのお話です。
※ムーンライトノベルスにも掲載しています。
この行く先に
爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。
暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。
ムーンライトノベルズにて完結済
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる