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王城を埋め尽くすデーモン

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レイド・マギカの人生は本来恵まれたものになるはずであった。

魔道国マギカの王子として生まれたレイドは類まれな美貌に、そして天才的な魔法の才を授かって生まれた。

しかしその3年後、妹であるマリサが生まれてくる。最初は妹が生まれた事を喜んでいたレイドであったが、次第にマリサに対する評価が変わっていく。

 それはマリサが5歳になった時の事だった。レイドが6歳になった時に使えるようになった魔法を5歳で使えた。

 11歳で使えた魔法を10歳で使えた。その差は僅かかもしれない。微差とも言えるかもしれない。

 しかし、周囲の羨望の眼差しがレイドではなく、マリサに向いていった事を肌で感じるようになった。

 それが本人にとってはどうしようもなく強烈な劣等感(コンプレックス)となったのである。

周囲は気付かなかったかもしれない。だがレイドはその劣等感で気が狂いそうになっていた。

極め付けは父の言葉である。父は王位を自分ではなく、マリサに授けるといったのだ。父マジックは徹底した実力主義者だ。年齢や性別ではなく、その才能、実力を重視する傾向があった。

 それはマリサにレイドが劣っているという烙印を押されたようなものだ。レイドは深く落ち込んだ。

心が傷つき、弱っていたレイドは普段なら歯牙にもかけない誘惑に取りつかれる。

王城の宝物庫にある宝玉だった。レイドに悪魔の囁きが聞こえた。その宝玉には封印された上位魔族の魂が閉じ込められていた。

「お前に力を授けてやる」

 声が聞こえてきたのだ。普段なら耳を貸さないような悪魔の囁き。結末がどうなるかレイドは理解していた。しかし全てを終わりにしてしまいたいほど、彼の心は病んでいたのであった。

「だからその宝玉を破壊しろ」

 魔が差した。レイドは悪魔の囁きに耳を傾けてしまった。封印されていた魔族の解き放ってしまった。肉体を失った魔族はレイドという依り代を得た。

 マリサ程ではないかもしれない。だが、レイドも間違いなく魔法の天才であった。依り代として何一つ不足している点はない。

「クックックックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハ! 蘇ったぞ! ついに蘇った! それにこんな都合の良い身体で」

 こうしてレイドの精神に魔族が巣食うようになっていた。

「安心しろ。レイド。お前の望みはかなえてやる。お前の妹は俺様がぶっ殺してやるよ。ついでにその他多くの人間もな」

 レイドに取りついた魔族は不気味な笑みを浮かべた。

そして、マリサが王城で眠っていた時の事だった。連れてきた男と女の事は気がかりではあったが、どちらでもいい。巻き添えにしてやればいい。そう思っていた。

「悪魔召喚(デーモンサモン)」

 レイドは類まれなその魔法な才を、その上魔族から授かった魔力で上書きしていた。
膨大な魔力量から放たれる、上位悪魔の同時召喚。魔法陣が王城の至るところで描かれる。

 その数実に7体。どれもがSランクのモンスターに匹敵する程の強者であった。

「先日は失敗したが……今度は逃がさないよ、マリサ。お前を殺した後は私を認めなかった父上も母上も殺してしんぜよう。クックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 王城にレイドの哄笑が響く。
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