46 / 58
最強の矛と最強の盾
しおりを挟む
「ルード王子!」
「……なんだ?」
「エルフ国の方で動きがありました」
ルードは伝聞兵から報告を受けた。
「ほう。ついに降伏する決意をしたか。ユースティア姫を貢に来たのだろう?」
「い、いえ。違います。何やら白い物体に身を潜めながら移動しています」
「なに? どこら辺だ?」
ルードはオペラグラスを覗き込みながら視認する。確かに白い物体が見えた。
「なんだ? あれは? 盾か何かか。くだらぬっ! あんなチンケなもので魔道カノンを防げるものかっ! 魔道カノンの準備をしろっ!」
「はっ! 魔道カノン準備!」
「ぐうううううううううううううううううううううううううっ!」
「ううううううううううううううううううううううううううっ!」
魔道カノンには大きな代償があった。それは魔導士十数名の命を削って放っているという事であった。その巨大な筒の内部では、拘束された魔導士が干からびた魚のようになっている。生命力の源といえる魔力を大量に吸われているのだ。このまま使用していけば絶命する時は近い。
だがそれでいい。彼等は燃料だ。燃料が切れたらまた補給すればいい。それだけの事だ。生体燃料だとしか考えない。
「魔道カノン発射だ! あの白い目標物に放て!」
「魔道カノン! 発射!」
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ものすごい音をたて、絶大な力を誇る魔力弾が放たれる。
「ふっ」
ルードは勝利を確信し、笑みを漏らした。
◆◆◆◆◆
「……来る」
魔道カノンが俺達に向けられた。当然のように敵は気づいているようだ。
「皆! 伏せろ! イージスの盾に隠れるんじゃ!」
「ところでゴンさん。この盾ってどういう効果があるんですか?」
シャロは聞いた。
「そいつはもう……こいつは神話の時代からある万能の盾だからの」
「来る! 皆! 伏せろ!」
「物理攻撃も魔法攻撃も防ぐ『魔力障壁スキル』が施されているんじゃ」
イージスの盾の前方に魔力による盾がさらに展開される。魔力弾と魔力障壁がぶつかり合い、せめぎあう。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
それでもものすごい衝撃と音がした。
「皆! しっかりつかまれ! 吹き飛ばされるなっ!」
長い時間かかった。その防風は。しかし、いずれ止む。
しのぎ切った。何とか、しのぎきったみたいだ。
「皆、無事か?」
「何とかにゃ。なんとか生きてるにゃ」
「ああ。俺様もだ!」
「おらたちも無事だ!」
「うちらもやで。何とか生きてるわ」
「そうですか。それは何よりです」
「思った通り連続では撃ってこないみたいやな。手間取ってるわ」
「ええ。思った通りです。賭けに勝ちました。防ぎ切れば勝機はある。そう思ってました」
「ほなら。後はひとつに決まってるやない」
バハムートは笑みを漏らした。狩猟者が獲物に対してする笑みだ。絶対的強者が弱者に対してする笑み。余裕のある笑いだ。
「反撃開始や」
◆◆◆
「ば、馬鹿な! 魔道カノンを防いだだと!」
ルード王子は驚いていた。
「こ、これはまずいのではないか! 宰相!」
「こ、国王まずいのではないですか!」
旗色が悪くなり、二人は震えていた。
「すぐに第二射の準備を整えろ!」
「無理です。クールダウンが必要です。生体燃料ももう限界かもしれません。魔導士の取り換えもしないと」
「ちっ! 流石に無理か! ありったけの兵を投入して叩け」
「もう遅いで」
声がした。
「なっ!」
ドラゴンだ。目の前に現れたのは、赤と黒の竜。亜人も乗っている。そしてあの人間。鍛冶師のフェイもだ。
「旨そうな肉がいっぱいあるやないの。これは御馳走やで」
「うん! ごちそう! ごちそう! じゅるり」
「うっ、うああああああああっ」
予想外の出来事にルードは慌てていた。もはやパニックになっている。
「随分うちらに大層な真似してくれたやないの。借りは返させて貰うで」
「な、なにをしている! 銃を撃て! 何とかしろ!」
ピュンピュン! しかし鋼鉄の肌に弾かれる。
「なんやその豆鉄砲。効かんわ」
「きかんわーーーーーーーーー!」
「う、嘘だっ! こんなの計画してないっ!」
ルードの前に何人か降り立ってきた。あの鍛冶師フェイとそれからエルフ姫のシャロティアである。
「な、なんだっ! お前達のその目は! 僕を見下すなっ! 僕は大帝国の王子だぞっ!」
「詰みだ! ルード王子」
「ひ、ひいっ!」
ルードは剣を突き付けられた。こうして最強の矛と最強の盾のぶつかり合いは、盾に軍配があがったのである。
「……なんだ?」
「エルフ国の方で動きがありました」
ルードは伝聞兵から報告を受けた。
「ほう。ついに降伏する決意をしたか。ユースティア姫を貢に来たのだろう?」
「い、いえ。違います。何やら白い物体に身を潜めながら移動しています」
「なに? どこら辺だ?」
ルードはオペラグラスを覗き込みながら視認する。確かに白い物体が見えた。
「なんだ? あれは? 盾か何かか。くだらぬっ! あんなチンケなもので魔道カノンを防げるものかっ! 魔道カノンの準備をしろっ!」
「はっ! 魔道カノン準備!」
「ぐうううううううううううううううううううううううううっ!」
「ううううううううううううううううううううううううううっ!」
魔道カノンには大きな代償があった。それは魔導士十数名の命を削って放っているという事であった。その巨大な筒の内部では、拘束された魔導士が干からびた魚のようになっている。生命力の源といえる魔力を大量に吸われているのだ。このまま使用していけば絶命する時は近い。
だがそれでいい。彼等は燃料だ。燃料が切れたらまた補給すればいい。それだけの事だ。生体燃料だとしか考えない。
「魔道カノン発射だ! あの白い目標物に放て!」
「魔道カノン! 発射!」
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ものすごい音をたて、絶大な力を誇る魔力弾が放たれる。
「ふっ」
ルードは勝利を確信し、笑みを漏らした。
◆◆◆◆◆
「……来る」
魔道カノンが俺達に向けられた。当然のように敵は気づいているようだ。
「皆! 伏せろ! イージスの盾に隠れるんじゃ!」
「ところでゴンさん。この盾ってどういう効果があるんですか?」
シャロは聞いた。
「そいつはもう……こいつは神話の時代からある万能の盾だからの」
「来る! 皆! 伏せろ!」
「物理攻撃も魔法攻撃も防ぐ『魔力障壁スキル』が施されているんじゃ」
イージスの盾の前方に魔力による盾がさらに展開される。魔力弾と魔力障壁がぶつかり合い、せめぎあう。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
それでもものすごい衝撃と音がした。
「皆! しっかりつかまれ! 吹き飛ばされるなっ!」
長い時間かかった。その防風は。しかし、いずれ止む。
しのぎ切った。何とか、しのぎきったみたいだ。
「皆、無事か?」
「何とかにゃ。なんとか生きてるにゃ」
「ああ。俺様もだ!」
「おらたちも無事だ!」
「うちらもやで。何とか生きてるわ」
「そうですか。それは何よりです」
「思った通り連続では撃ってこないみたいやな。手間取ってるわ」
「ええ。思った通りです。賭けに勝ちました。防ぎ切れば勝機はある。そう思ってました」
「ほなら。後はひとつに決まってるやない」
バハムートは笑みを漏らした。狩猟者が獲物に対してする笑みだ。絶対的強者が弱者に対してする笑み。余裕のある笑いだ。
「反撃開始や」
◆◆◆
「ば、馬鹿な! 魔道カノンを防いだだと!」
ルード王子は驚いていた。
「こ、これはまずいのではないか! 宰相!」
「こ、国王まずいのではないですか!」
旗色が悪くなり、二人は震えていた。
「すぐに第二射の準備を整えろ!」
「無理です。クールダウンが必要です。生体燃料ももう限界かもしれません。魔導士の取り換えもしないと」
「ちっ! 流石に無理か! ありったけの兵を投入して叩け」
「もう遅いで」
声がした。
「なっ!」
ドラゴンだ。目の前に現れたのは、赤と黒の竜。亜人も乗っている。そしてあの人間。鍛冶師のフェイもだ。
「旨そうな肉がいっぱいあるやないの。これは御馳走やで」
「うん! ごちそう! ごちそう! じゅるり」
「うっ、うああああああああっ」
予想外の出来事にルードは慌てていた。もはやパニックになっている。
「随分うちらに大層な真似してくれたやないの。借りは返させて貰うで」
「な、なにをしている! 銃を撃て! 何とかしろ!」
ピュンピュン! しかし鋼鉄の肌に弾かれる。
「なんやその豆鉄砲。効かんわ」
「きかんわーーーーーーーーー!」
「う、嘘だっ! こんなの計画してないっ!」
ルードの前に何人か降り立ってきた。あの鍛冶師フェイとそれからエルフ姫のシャロティアである。
「な、なんだっ! お前達のその目は! 僕を見下すなっ! 僕は大帝国の王子だぞっ!」
「詰みだ! ルード王子」
「ひ、ひいっ!」
ルードは剣を突き付けられた。こうして最強の矛と最強の盾のぶつかり合いは、盾に軍配があがったのである。
0
お気に入りに追加
2,547
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スキル【特許権】で高位魔法や便利魔法を独占! ~俺の考案した魔法を使いたいなら、特許使用料をステータスポイントでお支払いください~
木塚麻弥
ファンタジー
とある高校のクラス全員が異世界の神によって召喚された。
クラスメイト達が神から【剣技(極)】や【高速魔力回復】といった固有スキルを受け取る中、九条 祐真に与えられたスキルは【特許権】。スキルを与えた神ですら内容をよく理解していないモノだった。
「やっぱり、ユーマは連れていけない」
「俺たちが魔王を倒してくるのを待ってて」
「このお城なら安全だって神様も言ってる」
オタクな祐真は、異世界での無双に憧れていたのだが……。
彼はただひとり、召喚された古城に取り残されてしまう。
それを少し不憫に思った神は、祐真に追加のスキルを与えた。
【ガイドライン】という、今はほとんど使われないスキル。
しかし【特許権】と【ガイドライン】の組み合わせにより、祐真はこの世界で無双するための力を得た。
「静寂破りて雷鳴響く、開闢より幾星霜、其の天楼に雷を蓄積せし巍然たる大精霊よ。我の敵を塵芥のひとつも残さず殲滅せよ、雷哮──って言うのが、最上級雷魔法の詠唱だよ」
中二病を拗らせていた祐真には、この世界で有効な魔法の詠唱を考案する知識があった。
「……すまん、詠唱のメモをもらって良い?」
「はいコレ、どーぞ。それから初めにも言ったけど、この詠唱で魔法を発動させて魔物を倒すとレベルアップの時にステータスポイントを5%もらうからね」
「たった5%だろ? 全然いいよ。ありがとな、ユーマ!」
たった5%。されど5%。
祐真は自ら魔物を倒さずとも、勝手に強くなるためのステータスポイントが手に入り続ける。
彼がこの異世界で無双するようになるまで、さほど時間はかからない。
俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
一般職アクセサリーショップが万能すぎるせいで、貴族のお嬢様が嫁いできた!〜勇者や賢者なんていりません。アクセサリーを一つ下さい〜
茄子の皮
ファンタジー
10歳の男の子エルジュは、天職の儀式で一般職【アクセサリーショップ】を授かる。街のダンジョンで稼ぐ冒険者の父カイルの助けになるべく、スキルアップを目指すが、街全体を巻き込む事態に?
エルジュが天職【アクセサリーショップ】で進む冒険物語。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
その商人、実は最強の……規格外!? ゴーレムと錬金術と鍛冶で成り上がり
穂高稲穂
ファンタジー
不幸な事しか無かった人生はあっという間に終わって異世界に転生した伊東守(イトウマモル)38歳。
死因はブラック企業に勤めての過労死。
貧しい村の子供として生まれ変わっても不幸体質はあまり変わらなかった?
「いいや、今度こそ成り上がって幸せを掴んでやる!!」
村を飛び出して、前世にはなかった才能を活かして新たな人生に挑む。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる