上 下
35 / 58

レオとの決闘

しおりを挟む
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「なんだなんだ! よそ者と獣人王様との一騎打ちか!」

「相手はエルフ国のお姫様らしいぞ!」

 獣人は好戦的で血の気が多い。戦闘以上の見ものはないようだった。

 広場には多くの人だかりができていた。

「ルールは簡単だ。何でもありだ。相手がギブアップした方が負け。ただ殺すのはだめだ。お前みたいなべっぴんさん殺すのは惜しいだ」

「私の方としても獣人の王を殺すわけにはいきません。外交問題になりますので」

「ただ、それ以外はOKだ。どんな手段を使ってもいい」

「……ええ」

「シャロ……」

「大丈夫だよユース。俺達で見守ろう。シャロには俺が授けた聖剣レーヴァテインがある」

 俺はユースの肩を抱き寄り添う。

「はい。大丈夫だといいんですけど」

 やはり姉だ。妹の事は心配なのだ。だが、これから俺達の目の前には多くの災厄が襲い掛かってくる事だろう。

「ミーシャ! 何か音を出せ!」

「大鍋を棒でたたけばいいか!」

「構わん! エルフの女、それが合図だ! 存分にやりあうだ!」

「望むところだ!」

「せーの!」

 ミーシャは民家から拝借した大鍋を鉄棒で叩いた。

 カーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 甲高い音が響く。

「おっらしゃああああああああああああああああああああだあああああああああああああ!」

 奇声を放ちつつ、レオは襲い掛かる。鋭利な爪を取り出す。

「くっ!」

 シャロは爪を剣で防いだ。

「良い剣だ。けど剣士の腕の方はどうだ!」

「負けるものですか!」

 シャロはレオを跳ねのける。

「おっとだ!」

 レオは抜群の運動神経で難なく着地をした。

「さあ! 次に行くだ! てえらあああああああああああああああだあああああああああああああ!」

 レオは今度は鋭利なその牙を持って、襲い掛かる。早い。驚異的な移動速度だ。だが、シャロであれば捕らえられない程ではない。
 牙を剣で受け止める。

「やるだ……なかなかやるだ」

 レオは感心した様子で呟く。

「シャロ! 今だ!」

「え!?」

「レーヴァテインに念じろ! レーヴァテインは炎の聖剣だ! 炎の加護スキルを得ている」

「わかりました。聖剣レーヴァテイン! 私に力を貸してください! プロビデンスフレイム!」

 シャロはレーヴァテインのスキルを発動させた。紅色の剣が炎を纏う。

「あちっ! あついだああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー!」

 炎が燃え移ったレオはゴロゴロと転がりまわる。

「まだやりますか?」

「降参だあああああああああああああああああああああーーーーーーーーー! その代わり水をかけて欲しいだあああああああああああああーーーーーーー! 燃えて焼け死ぬだーーーーーーーーーーーーーー!」

「やった! シャロが勝ったよ! ユース」

「はい! フェイ様! やりました!」

「獣人王様ーーーーーーーーーー! 大丈夫かにゃああああああああああああああ!」

 ミーシャは井戸から水をくみ上げ、レオにかけた。

「ぷっはあーーーーーーーーーーーーーだ。死ぬかと思っただ」

「それでレオ様。お約束通り」

「わかってるだ。俺の負けだ。お前らに力を貸せばいいんだ」

 レオは渋々認めた。

「けど、すっげーーーーーー武器だっただ。誰が作っただ?」

「このお方です。人間の鍛冶師でフェイ様と言います」

「そうか。やっぱ武器はすげえな。自分の身体だけじゃ限界があるものな」

「ええ。レオ様はとてもお強かったです。私もフェイ様の武器がなければ勝てていたか、怪しかったです」

 シャロは評する。

「……そうか。武器か。戦争になるなら俺達も必要になるかもしれねぇだ。作ってれるかだ? 人間の鍛冶師。フェイと言っただか?」

「ええ。勿論、味方になってくれるなら鍛造しますよ」

「そうか。ありがとうだ。また詳しい話を決めるだ。いつ、何人くらいをいつまで派遣するか、細かく決めるだ」

「ええ。わかっております。エルフ国との間で協定を設けましょう」

 こうして俺達はドワーフ国に続いて獣人国との協定を結んだ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

不本意な転生 ~自由で快適な生活を目指します~

ファンタジー
どうやら交通事故で死んだらしい。気がついたらよくわからない世界で3歳だった。でもここ近代化の波さえ押し寄せてない16~18世紀の文化水準だと思う。 両親は美男美女、貴族には珍しい駆け落ちにも似た恋愛結婚だったらしいが、男爵家の三男って貴族の端の端だよ!はっきり言って前世の方が習い事させてもらったりしてセレブだったと思う。仕方がないので、まず出来る事から始めてみます。 主人公が大人になる後半にR18が入るかも。 入るときは R18 を明記。 ※ ★マークは主人公以外の視点。

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました 。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。 令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。 そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。 ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。

稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜

撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。 そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!? どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか? それは生後半年の頃に遡る。 『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。 おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。 なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。 しかも若い。え? どうなってんだ? 体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!? 神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。 何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。 何故ならそこで、俺は殺されたからだ。 ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。 でも、それなら魔族の問題はどうするんだ? それも解決してやろうではないか! 小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。 今回は初めての0歳児スタートです。 小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。 今度こそ、殺されずに生き残れるのか!? とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。 今回も癒しをお届けできればと思います。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

処理中です...