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エル王子に後ろから抱き締められてしまいました
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「アイリス様、誠にありがとうございます!」
「あなた様のおかげで我が王城内での伝染病者は全員治療されました」
国王と王妃がそう私を称えてきます。
「アイリス様、あなた様のおかげで我が王城は救われました。よろしければ、国内に配布してもよろしいでしょうか?」
「はい。構いません。ですが、なかなか薬の調合が間に合っていません」
あれから私は殆どの時間を費やし、調薬をしています。ですがなかなか間に合いません。国内に行き渡るのはだいぶ先になりそうです。
「わかっております。あなた様のペースでいいのです。どうか薬を作っていってください」
「ええ。アイリス様。あなた様に倒れられては元も子もありませんから」
国王と王妃はそう言っています。私は人々の救うため、薬を作り続ける毎日です。これではいくらお金があっても使っている暇もありません。
とはいえ私は本々物欲がなく、お金に関心がないのです。
「今のままの給金では申し訳ない。もっと上乗せいたしましょうか」
「ええ。あなたそうしてあげて」
「いえいいです。私はそれほどお金に関心がありませんから。孤児院にでも寄付してあげてください。それに私は私の作った薬で誰かの命が救われることがたまらなく嬉しいのです」
「何と素晴らしいお方だ!」
「本当ね……ここまでの聖人あまりいないわ」
私は普通のことをいったつもりなのに、なぜだかえらく褒められてしまいました。
「それでは私は調薬に戻りますので」
◇
「ふう……」
私は与えられただだ広い、そして豪勢な部屋で調薬をしておりました。
その時でした。
「疲れているようだね。アイリス」
部屋にエル王子が訪れてきました。エル王子は私に優しく微笑みかけてきました。
「エル王子!」
「何か僕にできることはないかい?」
エル王子は私に優しく語りかけてきます。
「できることって?」
「なんでもいいんだ。言ってみなよ」
「あっ」
エル王子は私を背後から抱き締めてきました。
ドキドキドキ。
私の心臓の音が高鳴り始めます。
「温かいね……アイリスの体は」
それはエル王子のせいです。エル王子のせいで私の体が熱くなっているのです。
「何かして欲しいことはあるかい? アイリス」
「特にしてほしいことはないですが……できれば」
私は顔を真っ赤にして告げます。
「このままこうしていてください」
「このままこうしてだね。わかったよ」
こうして私はエル王子にしばらく抱きしめられました。
「ありがとうございます。これでまた薬を作るのを頑張れそうです」
「うん。それはよかった。僕にできることならまた何でも言ってよ」
「何でもですか?」
「うん、何でもだよ。じゃあ、自分自身が体を壊さないように無理なくやってね。アイリス」
エル王子はそう微笑み、私の部屋から出て行きそうでした。
「よし!」
私は気合を入れなおしました。まだまだお仕事頑張れそうです。これもエル王子のおかげです。
こうして私は調薬に戻りました。
「あなた様のおかげで我が王城内での伝染病者は全員治療されました」
国王と王妃がそう私を称えてきます。
「アイリス様、あなた様のおかげで我が王城は救われました。よろしければ、国内に配布してもよろしいでしょうか?」
「はい。構いません。ですが、なかなか薬の調合が間に合っていません」
あれから私は殆どの時間を費やし、調薬をしています。ですがなかなか間に合いません。国内に行き渡るのはだいぶ先になりそうです。
「わかっております。あなた様のペースでいいのです。どうか薬を作っていってください」
「ええ。アイリス様。あなた様に倒れられては元も子もありませんから」
国王と王妃はそう言っています。私は人々の救うため、薬を作り続ける毎日です。これではいくらお金があっても使っている暇もありません。
とはいえ私は本々物欲がなく、お金に関心がないのです。
「今のままの給金では申し訳ない。もっと上乗せいたしましょうか」
「ええ。あなたそうしてあげて」
「いえいいです。私はそれほどお金に関心がありませんから。孤児院にでも寄付してあげてください。それに私は私の作った薬で誰かの命が救われることがたまらなく嬉しいのです」
「何と素晴らしいお方だ!」
「本当ね……ここまでの聖人あまりいないわ」
私は普通のことをいったつもりなのに、なぜだかえらく褒められてしまいました。
「それでは私は調薬に戻りますので」
◇
「ふう……」
私は与えられただだ広い、そして豪勢な部屋で調薬をしておりました。
その時でした。
「疲れているようだね。アイリス」
部屋にエル王子が訪れてきました。エル王子は私に優しく微笑みかけてきました。
「エル王子!」
「何か僕にできることはないかい?」
エル王子は私に優しく語りかけてきます。
「できることって?」
「なんでもいいんだ。言ってみなよ」
「あっ」
エル王子は私を背後から抱き締めてきました。
ドキドキドキ。
私の心臓の音が高鳴り始めます。
「温かいね……アイリスの体は」
それはエル王子のせいです。エル王子のせいで私の体が熱くなっているのです。
「何かして欲しいことはあるかい? アイリス」
「特にしてほしいことはないですが……できれば」
私は顔を真っ赤にして告げます。
「このままこうしていてください」
「このままこうしてだね。わかったよ」
こうして私はエル王子にしばらく抱きしめられました。
「ありがとうございます。これでまた薬を作るのを頑張れそうです」
「うん。それはよかった。僕にできることならまた何でも言ってよ」
「何でもですか?」
「うん、何でもだよ。じゃあ、自分自身が体を壊さないように無理なくやってね。アイリス」
エル王子はそう微笑み、私の部屋から出て行きそうでした。
「よし!」
私は気合を入れなおしました。まだまだお仕事頑張れそうです。これもエル王子のおかげです。
こうして私は調薬に戻りました。
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