上 下
8 / 57

エル王子に後ろから抱き締められてしまいました

しおりを挟む
「アイリス様、誠にありがとうございます!」

「あなた様のおかげで我が王城内での伝染病者は全員治療されました」

 国王と王妃がそう私を称えてきます。

「アイリス様、あなた様のおかげで我が王城は救われました。よろしければ、国内に配布してもよろしいでしょうか?」

「はい。構いません。ですが、なかなか薬の調合が間に合っていません」

 あれから私は殆どの時間を費やし、調薬をしています。ですがなかなか間に合いません。国内に行き渡るのはだいぶ先になりそうです。

「わかっております。あなた様のペースでいいのです。どうか薬を作っていってください」

「ええ。アイリス様。あなた様に倒れられては元も子もありませんから」

 国王と王妃はそう言っています。私は人々の救うため、薬を作り続ける毎日です。これではいくらお金があっても使っている暇もありません。

 とはいえ私は本々物欲がなく、お金に関心がないのです。

「今のままの給金では申し訳ない。もっと上乗せいたしましょうか」

「ええ。あなたそうしてあげて」

「いえいいです。私はそれほどお金に関心がありませんから。孤児院にでも寄付してあげてください。それに私は私の作った薬で誰かの命が救われることがたまらなく嬉しいのです」

「何と素晴らしいお方だ!」

「本当ね……ここまでの聖人あまりいないわ」

 私は普通のことをいったつもりなのに、なぜだかえらく褒められてしまいました。

「それでは私は調薬に戻りますので」

 ◇

「ふう……」

 私は与えられただだ広い、そして豪勢な部屋で調薬をしておりました。

 その時でした。

「疲れているようだね。アイリス」

 部屋にエル王子が訪れてきました。エル王子は私に優しく微笑みかけてきました。

「エル王子!」

「何か僕にできることはないかい?」

 エル王子は私に優しく語りかけてきます。

「できることって?」

「なんでもいいんだ。言ってみなよ」

「あっ」

 エル王子は私を背後から抱き締めてきました。

 ドキドキドキ。

 私の心臓の音が高鳴り始めます。

「温かいね……アイリスの体は」

 それはエル王子のせいです。エル王子のせいで私の体が熱くなっているのです。

「何かして欲しいことはあるかい? アイリス」

「特にしてほしいことはないですが……できれば」

 私は顔を真っ赤にして告げます。

「このままこうしていてください」

「このままこうしてだね。わかったよ」

 こうして私はエル王子にしばらく抱きしめられました。

「ありがとうございます。これでまた薬を作るのを頑張れそうです」

「うん。それはよかった。僕にできることならまた何でも言ってよ」

「何でもですか?」

「うん、何でもだよ。じゃあ、自分自身が体を壊さないように無理なくやってね。アイリス」

 エル王子はそう微笑み、私の部屋から出て行きそうでした。

「よし!」

 私は気合を入れなおしました。まだまだお仕事頑張れそうです。これもエル王子のおかげです。

こうして私は調薬に戻りました。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~

五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。 「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」  ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。 「……子供をどこに隠した?!」  質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。  「教えてあげない。」  その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。 (もう……限界ね)  セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。  「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」    「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」    「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」  「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」  セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。  「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」  広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。  (ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)  セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。  「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」  魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。  (ああ……ついに終わるのね……。)  ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」  彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。  

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

王女殿下を優先する婚約者に愛想が尽きました もう貴方に未練はありません!

灰銀猫
恋愛
6歳で幼馴染の侯爵家の次男と婚約したヴィオラ。 互いにいい関係を築いていると思っていたが、1年前に婚約者が王女の護衛に抜擢されてから雲行きが怪しくなった。儚げで可憐な王女殿下と、穏やかで見目麗しい近衛騎士が恋仲で、婚約者のヴィオラは二人の仲を邪魔するとの噂が流れていたのだ。 その噂を肯定するように、この一年、婚約者からの手紙は途絶え、この半年ほどは完全に絶縁状態だった。 それでも婚約者の両親とその兄はヴィオラの味方をしてくれ、いい関係を続けていた。 しかし17歳の誕生パーティーの日、婚約者は必ず出席するようにと言われていたパーティーを欠席し、王女の隣国訪問に護衛としてついて行ってしまった。 さすがに両親も婚約者の両親も激怒し、ヴィオラももう無理だと婚約解消を望み、程なくして婚約者有責での破棄となった。 そんな彼女に親友が、紹介したい男性がいると持ち掛けてきて… 3/23 HOTランキング女性向けで1位になれました。皆様のお陰です。ありがとうございます。 24.3.28 書籍化に伴い番外編をアップしました。

処理中です...