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ウロボロスとの死闘

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 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ウロボロスが奇声を上げ、来斗に襲い掛かってきた。

「くっ!」

 キィン! 来斗はウロボロスの邪悪な牙を剣で凌いだ。だが、まともに攻撃を受けてしまった為、ウロボロスの力をその身をもって体感する事になる。

「うわっ!」

 来斗はウロボロスの体当たりのような攻撃により吹き飛ばされた。そして、壁に衝突しそうになる。

 叩きつけられそうになりつつも来斗は何とか耐性を立て直す。壁を地面のように踏みつける事で、受け身を取ったのだ。

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 しかし、来斗の反撃はそれに留まらない。反動を利用し、ウロボロスに向かって斬りかかったのだ。

 ザシュッ!

 来斗の剣は的確にウロボロスの皮膚を斬り裂いた。
 
 ――だが。鋼鉄のような強靭な皮膚は来斗の攻撃を軽減させ、致命傷には足りえない。

 そしてウロボロスの所有しているスキル、自動回復(大)の存在である。来斗の与えたダメージなどなかった事かのように、ウロボロスは傷を負った箇所を回復させた。一瞬で元通りだ。

「ちっ……」

 来斗は舌打ちをする。このままじゃ埒が明かなかった。来斗は装飾品(アクセサリ)である『破邪の腕輪(リング)』を掲げる。

「解除魔法(ディスペル)!」

 来斗はウロボロスに対して解除魔法(ディスペル)を放った。ウロボロスは輝かしい光にその身を包まれ、一つのスキルが解除される。来斗が解除したスキルは『自動蘇生』のスキルだ。

 厄介なスキルを解除した。このスキルを解除しないとそもそも、勝負にならない。それでも自動回復(大)のスキルは残るが、それでも両者を天秤にかけた場合、解除する必要があったのは自動蘇生の方だったから仕方がない。

 後は何とかしてウロボロスのHPを0まで削り取るだけだ。

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 来斗はウロボロスに斬りかかる。

 ザシュッ! 

 ウロボロスの尻尾が勢いよく斬れた。

 キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!

 ウロボロスが奇声を上げた。自動回復(大)の効果により、その尻尾も段々と回復していくが、すぐにとまではいかないようだ。しばらくの間、尻尾による攻撃は使えない様子だった。

 しかし、その口回りに関しては何の障害もない。ウロボロスは口を大きく広げた。ウロボロスは牙による攻撃だけではない。口から強力な酸を吐き出してきた。酸の息吹(アシッドブレス)だ。

 この酸の息吹(アシッドブレス)はありあらゆる鋼鉄すら溶かす程、強力な酸による攻撃である。当然のように人体などという脆弱な部材に与えれば、一瞬で溶けてしまう、非常に強力な攻撃であった。

「聖なる光の壁(ホーリーウォール)!」
 
 しかし、その攻撃はティアの放った聖魔法『聖なる光の壁(ホーリーウォール)』により防がれた。

「オールステータスバフ!」

 そして、ティアは来斗に全ステータスを底上げする補助魔法をかけた。その魔法により、来斗のステータスが若干であるがUPした。来斗の身体に確かな力を感じる。

「ありがとう! ……ティアっ! はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 来斗は確信していた。勝てる……このまま行けば問題なく。来斗は剣を振るっていく。そして、その剣は聖属性の弱点も相まって、ウロボロスに確実にダメージを与えていく。

 そしてウロボロスのHPが全体の3割程になった時の事だった。ウロボロスの目が赤く光る。

(しまった……)

 来斗は失念していた。ウロボロスのHPが少なくなった時……目安としては三割を切った当たりで、必殺技が使われるという事を。

 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ウロボロスが奇声を上げた。そして、その奇声に従うようにして、周囲にいる無数の蛇達が壁を作るようにして、周囲を囲み続ける。

「……な、なんですかこれは!」

 ティアは慌てふためいた。実に不気味な光景だったからだ。

 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ウロボロスは魔法を使用する。その魔法はウロボロスの切り札であり、ある意味では最強の魔法であった。

 その魔法とは即死魔法(デス)だ。パーティー全体にかけられる、オール即死魔法(デス)。しかも普通の即死魔法(デス)とは違い、必中魔法である。避ける方法はいくつかあるが、限定的だ。

 身代わりとなるような装飾品(アクセサリ)を身に着けるか、あらかじめ自動蘇生するような魔法をかけておくか。

 身代わりとなる装飾品(アクセサリ)である『身代わり人形』は相当なレアアイテムであり、レア度はSランク相当である。そして自動蘇生の魔法は神官が相当なLVに至らないと習得する事ができない。

 いずれにせよ対策をする難易度は高かった。だが、幸いな事にティアに関してはその対策ができていた。ティアは吸血鬼であり、吸血鬼とはすなわち、不死者(アンデッド)である。不死者(アンデッド)はその種族の特性として、即死魔法(デス)の類を完全に無効化できる。

 即死魔法(デス)を完全に無効化できる種族はそう多くなかった。そういった意味では不死者(アンデッド)であるティアが仲間になってくれたのは来斗にとっては幸運だった。彼女がいる事でパーティーの敗北は防げたのだ。

 ――だが、当然のように来斗の種族は人間種である。人間種は特段、即死魔法(デス)に対する耐性を持っていない。

「うっ!」

 ドクン! 来斗の心臓が強く脈を打った。即死魔法(デス)の効果が発動したのである。心臓発作を起こした来斗の心臓は止まった。

 ドサッ。

「うっ……ううっ……」

 来斗は地面に崩れ落ちた。そして指一本動かせないようになる。

「ライトさんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 ティアの声が響く。次第に来斗はその声すら聞こえなくなっていった。

 そして来斗は心停止を起こした。通常の見解から言えば、間違いなく来斗は死んだのである。





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