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隣国の王子の命を救った結果求婚されてしまいます
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「げほっ……げほっ」
「ごほっ……ごほっ」
王国トリスタンについた私は悲惨な現状を目の当たりにしてしまう。多くの人々が咳き込んでいました。顔色も良くないのです。
恐らくは何かしらの疫病にかかっている様子。
「ひどい現状でしょう? セシリア様」
「ええ……そうですね。悲痛な状況だと存じ上げます」
執事ギルバートの質問に私はそう答えました。
「その上にこの王国には結界もないのです。その為、多くのモンスターが襲撃してきます。その度に騎士団総出で対処に当たっているのですが、傷つく騎士も多く、取り逃がした場合は多くの国民に被害が及んでいるのです」
「まあ……そのような状況だったのですか」
「ですから聖女、いえ。大聖女セシリア様がこの王国トリスタンにお越しになられた事は皆歓迎してくれると思いますよ」
「……だといいのですが」
「セシリア様に是非お会いになって欲しい人がいるのです」
「私に会って欲しい人? どなたですか?」
「この国の王子です。是非いらしてください」
こうして私はこの王国の王子にところへ招かれるのです。
◇
「ランスロット様。大聖女セシリア様をお連れしました」
「ごほっ! げほっ! ごほっ! ……ギルバートか」
部屋には王子がいました。整った部屋。ここは王子の部屋のようです。
そこには金髪をした美しい青年がいました。私の婚約者だった王子も決して悪くない見た目をしていたのですが。それでも目の前にいるランスロット王子程ではありませんでした。
ランスロット王子はそれはもう私の理想をそのまま形にしたような、美しい見た目をしているのです。
しかし、やはり病に侵されているためか顔色がよくないです。ランスロット王子の魅力が大変損なわれてしまっています。
「ギル……そこの女性は誰だ?」
「ランス王子。彼女は隣国から起こしになった大聖女のセシリア様です」
どうやらギルバートの略称はギルで、ランスロット王子の略称はランス王子というようです。
「大聖女様……わざわざ起こしになってくれたのですか。ありがとうございます。げほっごほっ!」
私を出迎えようとした結果、ランス王子は咳き込んでしまいます。
「む、無理をしないでくださいっ!」
私は王子に駆け寄ります。
「セシリア様……どうか王子の病を治せないでしょうか? 今まで何人もの医者に診てもらいましたが、なかなか病を治す事ができずにいます。このままではランス王子は座して死を待つばかり」
そう、ギルは嘆くのです。
「どうか、大聖女セシリア様。我らの王子、ランス王子の命をお救いください」
「無理を言うな。ギル。彼女も困るだろう? いくら大聖女とはいえできる事とできない事が」
「わかりました。王子の病を治せばいいのですね?」
「い、今、なんとおっしゃいました?」
驚いた様子でランス王子が聞き返してきます。
「ですから、王子の病を治せばいいのですね? と私は聞いたのです」
「で、できるのですか!? セシリア様」
「ええ……恐らくは」
「セシリア様、是非お願いします! 是非王子の病を治してください」
ギルは熱烈に私に頼み込んできます。
「わかりました」
私は大聖女としての魔法を発動します。身体に魔力がみなぎってくるのです。
「おお……物凄い魔力、これが大聖女の魔法」
「すごい……これほどの魔力、僕は初めて見ましたよ」
二人は驚いていました。何を驚いているのかわかりません。私にとっては普通の事です。
「治癒魔法(ヒーリング)!」
私は魔法を発動しました。オーソドックスな回復魔法です。
「おおっ! ……これは僕の身体に力がみなぎってきます」
一瞬にして王子の体内に巣食っていた病魔が滅せられました。
「ふう……終わりです」
私は胸を撫でおろします。なんとか治療は成功したようです。ランス王子の命が救われて何よりの事でした。
ここで思ってもいない出来事が起こります。
「ありがとうございます! 大聖女セリシア様!」
ランス王子は私の手を握ってきます。
「いえいえ。命が救われたようで何よりです。お役に立てたみたいでよかったです」
私は微笑みます。
「大聖女セシリア様」
「なんでしょうか? ランス王子」
「あなたは命の恩人です! そして素晴らしい女性だ! どうか僕と結婚して妻となってください!」
「今なんと?」
聞き間違えかと思いました。結婚? と聞こえたような気がするのです。
「ですからセシリア、僕と結婚してください。そしてゆくゆくはこの王国トリスタンの王妃となって欲しいのです」
「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! それは本気ですか!?」
「本気です! あなたの事を一生大切にしますっ!」
真剣な眼差しでランス王子は私に訴えてきます。どうやら本気のようです。
まさか、王子から婚約破棄をされてそれよりもずっと素敵な王子から求婚されるとは私は思ってもみませんでした。
こうして隣国の小国で、大聖女セシリアと王子を巡る物語の幕が開かれたのです。
「ごほっ……ごほっ」
王国トリスタンについた私は悲惨な現状を目の当たりにしてしまう。多くの人々が咳き込んでいました。顔色も良くないのです。
恐らくは何かしらの疫病にかかっている様子。
「ひどい現状でしょう? セシリア様」
「ええ……そうですね。悲痛な状況だと存じ上げます」
執事ギルバートの質問に私はそう答えました。
「その上にこの王国には結界もないのです。その為、多くのモンスターが襲撃してきます。その度に騎士団総出で対処に当たっているのですが、傷つく騎士も多く、取り逃がした場合は多くの国民に被害が及んでいるのです」
「まあ……そのような状況だったのですか」
「ですから聖女、いえ。大聖女セシリア様がこの王国トリスタンにお越しになられた事は皆歓迎してくれると思いますよ」
「……だといいのですが」
「セシリア様に是非お会いになって欲しい人がいるのです」
「私に会って欲しい人? どなたですか?」
「この国の王子です。是非いらしてください」
こうして私はこの王国の王子にところへ招かれるのです。
◇
「ランスロット様。大聖女セシリア様をお連れしました」
「ごほっ! げほっ! ごほっ! ……ギルバートか」
部屋には王子がいました。整った部屋。ここは王子の部屋のようです。
そこには金髪をした美しい青年がいました。私の婚約者だった王子も決して悪くない見た目をしていたのですが。それでも目の前にいるランスロット王子程ではありませんでした。
ランスロット王子はそれはもう私の理想をそのまま形にしたような、美しい見た目をしているのです。
しかし、やはり病に侵されているためか顔色がよくないです。ランスロット王子の魅力が大変損なわれてしまっています。
「ギル……そこの女性は誰だ?」
「ランス王子。彼女は隣国から起こしになった大聖女のセシリア様です」
どうやらギルバートの略称はギルで、ランスロット王子の略称はランス王子というようです。
「大聖女様……わざわざ起こしになってくれたのですか。ありがとうございます。げほっごほっ!」
私を出迎えようとした結果、ランス王子は咳き込んでしまいます。
「む、無理をしないでくださいっ!」
私は王子に駆け寄ります。
「セシリア様……どうか王子の病を治せないでしょうか? 今まで何人もの医者に診てもらいましたが、なかなか病を治す事ができずにいます。このままではランス王子は座して死を待つばかり」
そう、ギルは嘆くのです。
「どうか、大聖女セシリア様。我らの王子、ランス王子の命をお救いください」
「無理を言うな。ギル。彼女も困るだろう? いくら大聖女とはいえできる事とできない事が」
「わかりました。王子の病を治せばいいのですね?」
「い、今、なんとおっしゃいました?」
驚いた様子でランス王子が聞き返してきます。
「ですから、王子の病を治せばいいのですね? と私は聞いたのです」
「で、できるのですか!? セシリア様」
「ええ……恐らくは」
「セシリア様、是非お願いします! 是非王子の病を治してください」
ギルは熱烈に私に頼み込んできます。
「わかりました」
私は大聖女としての魔法を発動します。身体に魔力がみなぎってくるのです。
「おお……物凄い魔力、これが大聖女の魔法」
「すごい……これほどの魔力、僕は初めて見ましたよ」
二人は驚いていました。何を驚いているのかわかりません。私にとっては普通の事です。
「治癒魔法(ヒーリング)!」
私は魔法を発動しました。オーソドックスな回復魔法です。
「おおっ! ……これは僕の身体に力がみなぎってきます」
一瞬にして王子の体内に巣食っていた病魔が滅せられました。
「ふう……終わりです」
私は胸を撫でおろします。なんとか治療は成功したようです。ランス王子の命が救われて何よりの事でした。
ここで思ってもいない出来事が起こります。
「ありがとうございます! 大聖女セリシア様!」
ランス王子は私の手を握ってきます。
「いえいえ。命が救われたようで何よりです。お役に立てたみたいでよかったです」
私は微笑みます。
「大聖女セシリア様」
「なんでしょうか? ランス王子」
「あなたは命の恩人です! そして素晴らしい女性だ! どうか僕と結婚して妻となってください!」
「今なんと?」
聞き間違えかと思いました。結婚? と聞こえたような気がするのです。
「ですからセシリア、僕と結婚してください。そしてゆくゆくはこの王国トリスタンの王妃となって欲しいのです」
「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! それは本気ですか!?」
「本気です! あなたの事を一生大切にしますっ!」
真剣な眼差しでランス王子は私に訴えてきます。どうやら本気のようです。
まさか、王子から婚約破棄をされてそれよりもずっと素敵な王子から求婚されるとは私は思ってもみませんでした。
こうして隣国の小国で、大聖女セシリアと王子を巡る物語の幕が開かれたのです。
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