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だんだんと縺れた糸がほどけていく

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控え室の外で盗み聞き中。



「ダミアン皇太子も鬱憤が溜まってたのを思いっきり吐き出してるね。」

会長が苦笑している。

「泣かせちゃってますよ?まあ、兄弟喧嘩ですから良いか。」

「ちょっと6つ下の弟に対して大人気無い気もするが。」

クライスとカインが何とも言えない顔をしている。



拗れて縺れて絡まりまくったこの兄弟関係と家族関係。

解決するには本音をぶつけ合うしか無いんだと思う。



「親にも同じ様にダミアン皇太子は訴える必要ありそうな展開。」

会長がヨーゼフ王子の本音が聞けて来たと言っている。



「中に入れてもらおうか?」

ゾロゾロと申し訳ないけれど。



トントントントン!ドアをノックすると王子がどうぞと声をかけてくれた。王子の一存で良いのか?



「失礼します。」

そう言って皆で中へ。ヨーゼフ王子は座り込んで泣きじゃくっていた。



「座ろうか。こういう時は目線は一緒が良いんだよ。」

会長がそう言うので皆で床へ座る。

確かに一理ある。上からものを言われる感じするしね。



「えーと。ヨーゼフ。そのそろそろ泣き止まないか?もう怒らないし。あのー。ほら皆さん見てるし。」

ダミアン皇太子はちょっと焦り気味だ。



「お兄様がやっと。やっと・・・。話しかけてくれたし。怒ってくれたし・・うわーーーん!!」

更にヒートアップして泣き出した。


「ダミアン。ヨーゼフ王子がこうなった責任は貴方にもありますよ。」

王子が難しい顔をしてダミアン皇太子を見詰める。

「僕にも?両親じゃなくて?」

ダミアン皇太子は理解していない様だ。



「反抗期だろうな。何か解る。親兄弟から距離を取られたら逆効果なんだよ。」

私もルイスも前世は反抗期の頂点に居た様なものなので何だか気持ちが解る。



「反抗期?」

ダミアン皇太子には聞き慣れない言葉だったのか首を傾げる。


「親兄弟と距離を取りたいと思う思春期にありがちな心の揺らぎみたいなものですね。」

会長が優しく話を始めた。

「2人の話を聞いた感じでは、ダミアン皇太子はコンプレックスによる親と弟と距離を取りたい反抗期。ヨーゼフ王子は可愛がられ過ぎて全てが許されて来た事への疑問から来る反抗期ですかね?」


私もそうだと思う。

「ダミアン皇太子。御両親とお話になった方が良いと思います。」

会長は諭すように話した。


「僕もね王子として普通に接して欲しいと言う気持ちは解る。クラスの子達は一線引いているんだよね。ダミアンもそう思うだろ?」

王子も優しく語る。

ダミアン皇太子は寂しそうに頷いた。


「僕もジェファーソンみたいな友達が欲しいよ。髪の色、顔立ち、友達まで僕は羨ましがってばかりだな。」

そう苦笑した。


「僕は外交に連れて行ってもらえたり音楽や剣技とか勉強とか・・・厳しく教えてもらえてるお兄様が羨ましいと思っていたよ。」

ヨーゼフ王子は手で涙を拭いながらそう言った。


「うん!流石兄弟!見事に性格は似てますね。」

王子がクスクスと笑いだした。


「ええ?似てるのか!?」

困惑顔のダミアン皇太子。


「似てますよー!ねえ?」

王子が私達へ同意を求めてきたので激しく頷いた。うんうんうん!似すぎ!



「後、ダミアン。僕ら友達ですよ?このメンバーも友達ですよ?ヨーゼフ王子も何なら皆、友達になりましょうよ。」

満面の笑みの王子にダミアン皇太子とヨーゼフ王子は頷いた。



「そうか。友達・・・。」

「僕も皆さんと仲良くしたいです!」



「友達だからタメ口だぞ?」

「だな。名前も呼び捨て。」

私とルイスがそう言うと拗れまくっていた2人から最高の笑顔を貰えた。



「本当に無いもの強請りの兄弟ですねぇ。ちゃんと王様とお后様に訴えて下さいね。そうしないとまた拗れますよ?」

王子も嬉しそうに笑った。



「あのー。盛り上がってる所、ごめん。リリーさんの件は?」

ジョージとエミリアがちょっと申し訳なさそうに話に割ってきた。

「そうよ!リリーちゃん虐めにあってたのよ?!」

キャサリンのもそれに加わる。



「それは。そのー。」



「ヨーゼフ。令嬢の取り巻きを作るからだろう?」

皇太子がツッコミを入れる。

ヨーゼフ君は顔を下へ向けてゴニョニョと言い訳をしている。



「リリーの家の事はお兄様も知っているでしょう?僕、押しに弱くて。御令嬢達が寄ってくるのを無下に断れないし。」


「パシフィック家の事は知っている!でも、御令嬢の取り巻きを作っても何の得にもならないぞ?兎に角、世間体が悪すぎる。」

兄弟同士きちんと向き合って話が出来るようになっている。

凄い成長だ。



「リリーちゃんとこは何屋さんなの?」

取り敢えず聞いてみよう。

フランクな対応に皇太子がちょっと驚き気味だったが慣れて貰いたい。

「パシフィック家は帆船を作っていた。今もだが。蒸気船の登場で・・。没落気味なんだよ。」

皇太子は大きく溜息をつく。

なるほど、キャサリンの言っていた事が当たっている。元々は強かったんだが今は他の財閥に圧されているのだろう。選ばれなかったお金持ち令嬢達の格好の的にされているのか。


「帆船か。それは確かに・・。取り敢えず何かしらで地位向上出来れば良い訳だよねぇ。」

会長は悩み始めている。



「ノネット・クライムのレコードを独占販売しても良いですよ?」

王子がニッコリ笑顔で2人を見た。



「後は電波塔を作ってラジオ放送を開始してみるのも良いかもしれないですね。ラジオも独占販売で。」

会長がうんうんと頷く。



アーシェンバードにはまだ電波塔もラジオも無い。これはチャンスだろう。



「ラジオって何だ?」

皇太子の質問に王子と会長が詳しく説明していた。



ラジオをある程度理解した所で

「パシフィック家に取り次いでくれるなら俺の親父を派遣しようか?役に立つし。」

ルイスの話に皇太子とヨーゼフ君は大きく頷く。



「パルドデアとの交渉はカインを通じてやると早いですよ。」

と王子が言うとカインが複雑そうな顔をしたが良いですよと了解していた。アルマーニ王子に頼むにはカインが適任だろうなあ。



「まあ、パシフィック家の問題よりも先に御両親にしっかり話をして下さいね。」

王子のニヤリとした笑顔に皇太子とヨーゼフ君の顔は少し引き攣っていた。

「あの。僕はそのー。まともに母上と会話をした事がないのだよ。」

皇太子がそう言いながらジェファーソンの顔を見て苦笑い。



「僕は最近、怒られる事ばかりしていました。でも・・。見て見ぬふりされていたし。」

ヨーゼフ君は情けない顔をして王子へ懇願する様な目だ。



「着いて行きますか?」

王子は2人へ笑顔を向けた。
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