上 下
308 / 369

美少年コンテスト

しおりを挟む
控え室に通された。

美少年コンテスト出場者は僕を入れて5人か。

アウェイ感が凄い。誰だ?って言う不信そうな視線。勿論、飛び入り参加は僕だけだ。視線が痛い。

僕17歳!!全く12歳如きに睨まれたく無い。



金髪碧眼って言っていたからあれがヨーゼフ王子か。やっぱりダミアン皇太子が拗ねるのが解る綺麗な顔立ちしている。僕の顔をチラリと見てそっぽを向いてしまった。やっぱり嫌な感じ。



あっ。チェロ無いな。音楽発表はやっぱりピアノかな。何弾こう。弾き語りにしようかな。それだけは楽しみだ。



男性教師が控え室に入って来てコンテストの説明を始めた。

自己紹介にウォーキング?プリントにそう書いてある。舞台の造りが不思議な形。この中央まで歩くのか。

その後に音楽発表をすると。まあ、いいか。僕はちょっとだけリリーさんの敵討ちみたいなもんだし。皆は勝てるとか言うけれど無理っぽいよ。焦らせることが出来たら良いかなくらいで頑張ろう。



コンテストが始まった。

舞台袖から眺める。



「エントリーNo.1。パーシー・ジョンソン!」

会場にはクラシック音楽が流れ拍手が起こる。自己紹介後にウォーキングはなるほど。その後、パーシー君はピアノを披露していた。子犬のワルツ。可愛い。



やっぱりヨーゼフ王子以外は盛り上がらないのかな。3番手まで拍手は起こるけど昨日の劇みたいな歓声は聞こえない。

次は王子でラストは僕か。出にくいなー。エントリー順なんだろうけど。



「エントリーNo.4!ヨーゼフ・アーシェンバード!」

キャー!!!悲鳴の様な歓声が聞こえる。

うっわー。ちょっと本当にこの後にやりにくいー!



「やあ、可愛いレディ達!ヨーゼフ・アーシェンバードです。」

ヨーゼフ様!ヨーゼフ様!カッコいー!!



少年じゃないけどクライスか会長が出た方が良かったかもー。



ウォーキング中も拍手と声援。音楽発表は彼もピアノだった。

別れの曲か。この国ではショパン流行っているのかな。



ピアノ高難度弾いても良いんだけど。
大人気無いよなあ?何だかブツブツ考えているうちに順番になってしまった。


「エントリーNo.5は何と飛び入り参加です!ジョージ・アンダーソン!」

会場が誰?っとザワつく。出にくい・・・。

でも、僕もノネットメンバーだからね?さあ、楽しもう!


舞台の中央へ歩く。笑顔を向ける。

うーん?無反応?

「初めまして。ジョージ・アンダーソンです。ボードウェン国から修学旅行で来ました。アーシェンバード国は良い国ですね。」

ニッコリ笑顔。


そして。拍手が巻き起こった。

ランウェイを歩く歓声が聞こえる。

ジョージ様!ジョージ様!ジョージ様!!


良かった。やっぱり海外からの客には親切なんだなあ。それに歓声があると燃える!!

「ジョージ様!カッコいいわよー!!」

「ジョージ様!いけいけー!」

キャサリンとルナリーの声に笑いそうになった。


舞台中央へ戻って一礼。拍手喝采が起こる。うん。やっぱり外国人に優しい良い国だ。これは何としてでもヨーゼフ王子を改心させたい。


「音楽発表なんですがオリジナル曲を披露しますね。」

そう言ってピアノへ座る。マイクの位置をちょっと口元までずらしてっと。難易度的には全然難しくないんだけど僕としては名曲。


「聞いてください。愛は勝つ。」

この前奏も好き。


ソロで歌うのは初だけど。


うん。バッチリだ。


立ち上がって一礼して会場を見渡す。あっ。泣かせちゃってる。

ブラボー!!!大きな叫び声が聞こえたかと思うと一斉にスタンディングオベーションで拍手喝采を受けた。


凄く気持ち良いー!

ソロ曲ってこんな感じなんだなあ。いいなあ。



「アンコール!!」

ジェファーソンとクライスとルイスの声かな?流石に無茶だよ?

でもその声に合わせる様に会場中にアンコールが巻き起こった。

アンコール!アンコール!アンコール!


困った。何歌おう。アンコールに応えてこそのプロだよね。


「じゃあ1曲だけだよ?」

ウインクしてピアノに座る。


「聞いてください。世界に一つだけの花。」

結局歌いやすい2曲を披露する事になってしまった。


そして歌い終わりにまた拍手喝采と歓声が鳴り止まない。


「ありがとうございました!」

お辞儀をして後ろに下がる。


ヨーゼフ王子の顔色が悪い。

しまったなぁ。ちょっとやり過ぎた。
ついコンサートのノリでやってしまった僕。
何か舞台に上がるとテンション上がるんだよねぇ。

一旦、舞台袖へ戻る。気まずい・・・。


「アーシェンバード学院美少年コンテスト結果発表!!」

会場は拍手に包まれる。



「第3位・・・」

「第2位!エントリーNo.4 ヨーゼフ・アーシェンバード君!」

げげげ!!もしかして!

「優勝はエントリーNo.5!飛び入り参加のジョージ・アンダーソン君!!」

しまった。やってしまった・・・。



わっ!!と歓声と拍手が起き再び舞台へ上がる。


物凄く機嫌の悪い顔のヨーゼフ王子。

苦笑いの僕。

優勝の可愛いメダルを首から掛けてもらった。


一通り挨拶をして美少年コンテストは終了した。



終わった瞬間だった。



「何で!僕が2位なんだよ!可笑しいじゃないか!!」

ヨーゼフ王子がキレだした。



「飛び入り参加が優勝?こんなに人気者の僕が2位?」

会場はザワザワとして教師達もオロオロしていた。



「止めないか!ヨーゼフ!!」

ざわめきから一際大きい声が聞こえた。立ち上がったのはダミアン皇太子だ。



ダミアン様だ。皇太子様だわ良かった。

そんな声がチラホラと聞こえる。ヨーゼフ王子はダミアン皇太子を見て口を噤んだ。



ダミアン皇太子は後方の席から降りてきて舞台に上がってきてヨーゼフ王子の手を掴む。

「ヨーゼフ!!行くぞ!恥をかかせるな!」

舞台からヨーゼフ王子を引っ張って客席の出口から連れ出した。

その後をエリザベス様や皆も着いて行く。



「後は何とかしますから。大丈夫ですよ!」

教師に一声かけて僕も皆の元へ。

会場は騒然としていたが安堵の声も聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

【完結】救済版:ずっと好きだった

ユユ
恋愛
『ずっと好きだった』を愛読してくださった 読者様にお応えして、救済版として作りました。 あのままでいいという方は読まないでください。 かわいそうなエヴァンとライアンの為のものです。 『ずっと好きだった』を読まないとこの話は理解できないようになっています。 章分けしています。 最初はエヴァン。次はライアン。 最後はライアンの子の章です。 エヴァンとライアンの章はそれぞれ纏めて公開。 ライアンの子の章は1日1話を公開します。 暇つぶしにどうぞ。 * 作り話です。 * 完結しています。 * エヴァンの話は別ルートです。 * ライアンの話は転生ルートです。 * 最後はライアンの子の話しです。

美形な兄に執着されているので拉致後に監禁調教されました

パイ生地製作委員会
BL
玩具緊縛拘束大好き執着美形兄貴攻め×不幸体質でひたすら可哀想な弟受け

王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

Rohdea
恋愛
伯爵令嬢のフルールは、最近婚約者との仲に悩んでいた。 そんなある日、この国の王女シルヴェーヌの誕生日パーティーが行われることに。 「リシャール! もう、我慢出来ませんわ! あなたとは本日限りで婚約破棄よ!」 突然、主役であるはずの王女殿下が、自分の婚約者に向かって声を張り上げて婚約破棄を突き付けた。 フルールはその光景を人混みの中で他人事のように聞いていたが、 興味本位でよくよく見てみると、 婚約破棄を叫ぶ王女殿下の傍らに寄り添っている男性が まさかの自分の婚約者だと気付く。 (───え? 王女殿下と浮気していたの!?) 一方、王女殿下に“悪役令息”呼ばわりされた公爵子息のリシャールは、 婚約破棄にだけでなく家からも勘当されて捨てられることに。 婚約者の浮気を知ってショックを受けていたフルールは、 パーティーの帰りに偶然、捨てられ行き場をなくしたリシャールと出会う。 また、真実の愛で結ばれるはずの王女殿下とフルールの婚約者は───

【完結】些細な呪いを夫にかけ続けている妻です

ユユ
ファンタジー
シャルム王国を含むこの世界は魔法の世界。 幼少期あたりに覚醒することがほとんどで、 一属性で少しの魔力を持つ人が大半。 稀に魔力量の大きな人や 複数属性持ちの人が現れる。 私はゼロだった。発現無し。 政略結婚だった夫は私を蔑み 浮気を繰り返す。 だから私は夫に些細な仕返しを することにした。 * 作り話です * 少しだけ大人表現あり * 完結保証付き * 3万5千字程度

処理中です...