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キャサリンはボカロが歌いたい

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チケット発売日。

何だか皆、朝早くから集合して落ち着かない。

「練習した方が良いんだけど何かドキドキしますよね。」

ジェファーソンがソワソワしている。チケット販売状況は大司教様から夕方に学校に連絡があるらしい。



「あのさ。私、思ったんだけど。」

実はちょっとコンサートの曲目で思ってた事がある。

「この前、コンクール2位のルナリーファンっていっぱい来るんじゃないかしら?今回、ルナリーボーカル曲無いのよね。」



ん?そうだっけ?別に良いのにとルナリーは軽く言う。



「仮面舞踏会、島唄、We are the world、ネバーエンディングストーリー、愛は勝つ、大都会、万里の河、千本桜、Missing、ヴァージニティー、ラブ・ストーリーは突然に。」



曲目を読み上げる。やっぱり無いのよ。

「まあ、無いけど良いよ。もうこの前のコンクールで歌い過ぎたし。」

気にしすぎだと思うんだけどなあとルナリーは首を捻った。

「会長はどう思います?」

私は会長に確かめる様に聞いた。



会長は腕組みをし天井を見上げてうーん?と悩んでいる。

「そーだねー。コンクールの時ルナリーとルイスファン増えたよねー。」



そうそう!そうなのよ!あの日の共演者達のルナリーファン。超熱狂的だった。



「そうか!デュエットさせれば良いじゃないか!」

会長がニヤっと不敵な笑みを浮かべる。

デュエット?私の解らないジャンルだ。



「何かコンサートで歌う曲じゃなくないか?」

とルナリーが聞く。確かに何か夜のお店のイメージ。



「会長、今回は本当に歌わなくて良いよ。」

ルイスもルナリーも同じ思いなのかそう言ったが会長が任せとけ!と自信満々で答える。





会長はノートを広げて楽譜作成中。なかなか会長も暴走するのよね。きっと良い曲知っているんだろなあ。



会長を待つ間、私の個人曲を披露する事になった。



ボカロの中では1番一般に広まっている千本桜。本当はブリキノダンスとかロキとか歌いたかったんだけどなあ。

まだ早かったかな。



さて、マイ三線を取り出す。

歌は良いけど三線だけは相当練習した。元々弾けたけど結構早弾きだし。三味線にしなかったのは何となく慣れから。



「じゃ聞いて下さい。千本桜。」

ジェファーソンと目が合う。ニッコリ笑顔。引かないでね。。ちょっと思うけど。歌いたいのー!



三線を軽快に奏でる。前奏全力疾走よ!

皆の顔を見る余裕無し!



「大胆不敵に ハイカラ革命 磊々落々 反戦国家」



「環状線 を走り抜けて 東方西走なんのその」



さあ行くぞー!

「千本桜 夜ニ紛レ 君ノ声モ 届カナイヨ 」

「此処は宴 鋼の檻 その断頭台で見下ろして」



「青藍の空 遥か彼方 その光線銃で打ち抜いて」



三線早弾き!皆の様子を見る。あっやっぱり呆気に取られてるよね。

あー!スッキリー!歌い終わった。

反応が・・・無い?



「キャサリン!すっげー!」

ルナリーの第一声。

「すげーな!なんだその三線!」

ルイスが凄く感心している。まあ、彼等の反応はウケが良い。

問題はジェファーソンだ。



「キャサリン!この前も思ったけどプラゲ語が凄い!そしてその三線技能の巧みさに正直、感動してる。」

ジェファーソンがうんうんと頷いた。

だっ大丈夫だったのかしら?



「三線マスターだね!早口過ぎて全然歌詞解らなかった!でも良い曲だと思ったよ!」

クライスが優しい。

他の人の反応も。あっ大丈夫だ。



「本番どうします?キャサリンが三線で伴奏も全部します?」

ジョージが聞いてくる。あっどうしよう。



「えっとピアノが欲しいかな。」

そう言うとジェファーソンが僕の腕の見せ所ですねー。早弾きしますよー!と言ってくれた。嬉しい。



漸くボカロが認められたのね。感無量。



その後は僕も歌ってみよう!とクライスとジェファーソンが個人曲を歌う。

彼等の曲のピアノはジョージが弾く。

この曲、2曲とも良い曲よね。聞いた事だけはあった。



これ確実に御令嬢が大喜びしそう。

聞いていてうっとりする。

クライスの声って、やっぱり良い声だなあ。



ジェファーソンも優しい声。

この曲、泣けるわ。あー。ダメ!こんなメロメロにする曲を観客に聞かせたくなーい!ちょっとヤキモチ出ちゃいそう。



聴き終わって拍手!

「2人とも凄く良いわ!感動しちゃった。」

本当に泣きそ。

クライスもジェファーソンも嬉しそう。



「でも、やっぱりこの歌詞恥ずかしいなあ。」

クライスはまだ慣れないらしい。



「さあ、ルナリーとルイス!歌ってくれ!」

もう出来た?と言うスピードで会長がデュエット曲?の楽譜を2人に渡す。

2人は口に手を当てて顔が赤い。

「えっ。まじか。恥ずかしい・・・・。」

「ルイスと歌うのか・・・・。人前で?わー。」

明らかに狼狽えている。



「結婚記念にピッタリだろ?」

会長はニヤリと笑う。

2人の背後からクライスとカインが歌詞を眺めていて。

わーおーと言う顔をしている。

「姐さん、ルイス、これは頑張るしかないねー!」

「うん。いやー!恥ずかしいな。でも聞きたい!」

くすくすと笑う。

もう、どんな歌なのよ!気になって私も見せてもらった。

《愛が生まれた日》

あーー!これはちょっと知ってる。確かに良いデュエット曲だ。

そして照れるのも解る。



「ちょっと練習してからね。披露はまた今度。。」

ルナリーがごにょごにょと呟く。珍しいなあ。歌に関しては何でもアリだと思ってたけど。

デュエット曲ってきっと照れ臭いのね。



お昼ご飯を食べている最中に大司教様から電話があったと連絡が入り急いで職員室へ向かう。



「連絡、早いですよね?」

「まさか完売かな?」

それは無いかとジェファーソンと2人で走る。



職員室の電話を借りてジェファーソンが電話に出た。

「もしもし。大司教様?ジェファーソンです。」

電話に出た瞬間ジェファーソンは不信そうな顔に変わった。

え?チケット売れてないとか?



ジェファーソンは更に不満そうな顔に変わり私を見る。

「キャサリンに電話代わって欲しいそうです。」

ジェファーソンは凄く不機嫌。何でよ大司教様ー!ジェファーソン、結構ヤキモチ妬くのよ!



「もしもし、フラームです。どうしたんですか?」

仕方なく電話に出る。



「すみません。一大事なんです!ワンクッション置かないと私の口からジェファーソン様にはとても言えない。。」

大司教様はめちゃくちゃ焦った声で言った。



「一大事って?チケット売れてないんですか?」

まさか?そんな事態が発生?!



「チケットは順調に売れてます。もう半分売れました!」

「えー?それは凄いじゃないですか!良かった。」

あぁ、ジェファーソンの視線が痛い。



「本題です。何処から聞きつけたか知りませんがジェファーソン様の天敵がコンサートを見に来ます。」

大司教様はボソボソと言いにくそうに話を始めた。

天敵ってまさか・・・・。



「隣国のアーシェンバードの皇太子がコンサートに来ます。アーシェンバードの教会経由でチケット確保の電話が朝イチでありまして。私には流石に王族を断る権限がありません。」



「それは凄く一大事ですね・・・・。」

私の顔がヒクつくのが解る。そして大司教様がワンクッション置きたい気持ちも解る。



アーシェンバードとの国交はとても良好。お互いの国へ留学する者も多く王様同士は仲良しだ。



しかし、皇太子とジェファーソンは・・・・。

この事は王族と大司教様の様な権力のある者しか知らない極秘事項。



「私が言うんですね・・・・。」

「お願いします。怖いです!流石にこれは怖い!宜しく御願いします!チケットはしっかり完売させますから。では!」

大司教様は捲し立てるように一方的に話して電話を切ってしまった。



「キャサリン?」

不満そうだったジェファーソンが私の顔を見て心配そうにしている。

皆にも知ってもらう必要あるわよね。

ジェファーソンの手を取りレッスンルームまで走る事にした。



「どうしたのそんなに急いで?!」

「ごめんなさい!ジェファーソン!私、1人では背負えない!!」



不思議そうなジェファーソンを無視して取り敢えず急いで戻った。
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