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第114話 集落に結界を張る。
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集落の成り立ちなんかはなんとなく理解した。ただ納得はまだしてない。だいたいなんでオークの声帯で人間の言葉が話せるのかわからないし。知能が高くても魔物が人間の言葉を理解するというのはちょっと意外過ぎるよね。さすが異世界ファンタジー。
それでも人間に敵対していないのと、支配ではなく共生しているというのは好感が持てたので、今度は歴史ではなく現状を色々聞いてみよう。
言語教育というのは特に施されているわけではなく、日常生活の中で少しずつ覚えていくのだそうだ。このオークたちはどんだけ人間とコミュニケーションとっているんだよ。
今一緒に話している爺さんや人間たちは、一応名前を持っているそうだ。そして村長を始めとしてオークたちには名前はない。
「村長さん、アルテムさん、何か僕にできることがあれば言ってくださいね。僕を受け入れたくれたお礼と言ってはなんですが、たとえば、この集落に他の魔物が入らないようにすることができますよ。」
「「なんと、それは本当か。」」
人間のいるエリアの周りの柵は、いわば最終防衛線で、魔物が襲ってきた場合に弱い人間たちを守るために築いた防衛用の柵だそうで、僕は強力な魔物相手にはちょっと心もとないと思っている。だって、オークさん達は柵の上から覗けるんだし。
しかも地域的に常に他の魔物が集落に入ってくるので、集落防衛には苦労しているそうだし、毎日何人かのオークは犠牲になっているという。まあオークは魔物なのでそういう殺伐とした環境にも適応しているということで、集落が維持できる程度の犠牲ならば意に介していないようだけれど。何度も言うけどほんとオークたち有能すぎ。でも毎日数人死んでも集落維持してるって、オークの繁殖力は侮れないな。
村長とアルテムさんの前に、A4のコピー用紙と鉛筆を出し、開けた草原っぽいところのほぼ真ん中の僕が作った台地を中心に、まずは集落の地図を描いてみる。めちゃくちゃアバウトだけどまあ位置関係は分かると思う。
「この真中が僕の建てた家で、この四角が僕が作った台地です。そしてこの端っこがあなたたちの集落。どこからどこまでは分からないので、だいたいの印をつけてください。」
一匹とひとりは驚きながらも僕の書いた地図を覗いていたので、鉛筆を渡して印をつけてもらう。村長のオークさんの手では鉛筆は持ちづらかったらしく、アルテムさんがぎこちなく鉛筆を握って集落の範囲を記入してくれた。ちなみに村長さんはアルテムさんのことを『人間の族長』と呼んでいる。仲もよさそう。
「もし問題なければ、集落を案内していただけませんか?」
おそらくだけど、ここで村長とアルテムさんにお聞きした内容と実際の集落についてもいろいろと齟齬のある可能性があると思っている。オークは人間言語を理解して、なんというか進化している感じなんけれど、人間の方はいろいろと退化している可能性が高いんだよね。
村長さんは僕の申し出を快諾してくれて、村長、アルテムさん、そして護衛の若いオーク3匹が集落を案内してくれることとになった。
まずは集落の外周。結界を張るとしても、どこからどこまで張ればよいのかわからないので、外周の確認は重要だ。集落は草原ではなく林の中だけど、さすがに場所は把握しているようで、サクサクと林の中を進んでいく。ただ、集落のオークたちが僕たちが通るたびに『ブヒッ』と鳴くのは何とかしてほしい。オークの挨拶らしいけれど。
簡易地図に印をつけながら、外周を進む。僕ひとりの時と違い、たまに魔物に遭遇するけれども、護衛担当のオークが簡単に屠っていく。しかも屠った魔物のうち、食用にできるものは、血抜きをして棒にぶら下げている。オークめっちゃ強いじゃん・・・。しかも血抜きだと・・・。
尋ねてみると、本来オークだけならば血抜きせずともそのまま食糧にするのだそうだけど、人間と共生するようになってから、獲物を処理するということを覚えたそうだ。そのほうが獲物を長持ちさせることができるのと、人間でも食べることができるという理由で。いろいろと文化的なオークさん達だった。
ちなみに血抜きした獲物は内臓を抜いたり冷やしたりしていないので、あまり長持ちしない気がするけど、魔物は魔石を抜かなければ普通の動物と違い劣化が遅いそうだ。だから数時間後に解体しても問題ないという。なんか冒険者ギルドで聞くよりも勉強になる。干し肉や燻製肉の生産も人間によってされているというから、共生もめっちゃ成功しているのではないだろうか。
2時間ほどで外周の案内が終わったので、村長さんに許可を取って結界を張る。魔石は複製した大きめの物に魔力チャージして、いつもの銀色の魔石を作り、魔物を通さない設定で結界を張る。でもオークさん達を排除することは問題なので、オークを含むそれより小さな魔石を持った魔物は通せるように設定していく。範囲は草原とその周辺の林を含んだのでかなり広い。半径10kmだから、島の結界より広いんだよね。
結界の設定時には魔石を中心として広げて行ったから、あとで逃げ遅れて林の木々と結界に挟まれて圧死した魔物たちの魔石は回収しておこう。島でやったのと同じように地面から持ち上げれば一括回収できると思うし。
「結界は張り終わりました。目に見えませんから実感できないと思いますので、数日様子を見てください。オークさん達より強い魔物は、集落には入って来ません。もし必要ならば、オークさん達以外の魔物が入って来れないようにもできますけど、それだと獲物が捕まえにくくなってしまいますよね?」
オークさん全員とお会いすれば、個別透過設定もできそうな気がするけど、それだと新しくオークが生まれるたびに設定しないといけないので、大雑把な透過設定にしておいた。
「人間の雄よ、感謝する。しかし本当に強い魔物がここに入って来ることはないのか?」
いや、だから数日様子を見て欲しいんだけども・・・。あ、そうだインベントリから強そうな魔物を開放してみようか。
「ちょっと待ってください、捕獲した魔物を何匹か開放して試してみますね。」
インベントリの中を探ってみる。さすがにドラゴンはやり過ぎだろうと思うので、何匹か見繕ってみよう。地上と上空の結界確認だと・・・お、モンスター・ボアがいる。それとこれはワイバーンだよね。大きさもだいたい魔物図鑑に載っているのと同じくらいだし。
「それじゃ、ここの先がだいたい結界の端なのでそこまでみんなで行って皆さんは結界の内側、僕は結界向う側に行って、魔物を放ってみます。待機する場所は指示しますので、見て居てくださいね。」
数分みんなで結界の端まで移動した後、みんなに待機を指示する。なんだか見学者・・・見学オークさんたちの数が数十匹に増えているけども、まあ気にしない。
インベントリから慎重にワイバーン3匹と大小のモンスター・ボア5匹、合計8匹を出す。一応完全に放つ前に、障壁で動けないようにしておくのも忘れない。まずは頭部のみ障壁を解除してみると、ちゃんと生きていた。まあ、そのへんは盗賊ですでに実験済みだから問題ない。
障壁を半解除したワイバーンやモンスター・ボアはこちらをめちゃくちゃ睨んで雄たけびを上げている。オークさんたちが人語を理解できるんだから、この魔物も理解できるかもしれないと思って、何度か声をかけて見るけど、雄たけびしか上げない。ぜんぜんダメっぽい。
見学している方々の方を振り返って見ると、数が減っていた。というか、護衛を含む戦士っぽいオークさんたちは臨戦態勢をとっている。僕の説明を聞いていなかったのだろうか。
「それじゃ、放ちますよ。そこで見て居てくださいね。」
サクっとワイバーンとモンスター・ボアの障壁を完全解除する。あ、なんかワイバーンもモンスター・ボアも僕を狙っているようだ。まあ、そうなるよね。でもそれだと結界のお披露目にならないので、魔物を後にしてゆっくり歩いて結界の内側に移動。だいたい結界の端から30cmくらいの所が良いかな。
結界に到達する前に、何度か背中を軽く押された感じがして振り返って見ると、モンスター・ボアが体当たりしていた。めちゃくちゃびっくりした・・・。
オークたちがものすごく驚いたお顔をしていたのはそのせいか。というか、表情が読みにくいオークさん達でも、驚く顔は人間と同じように目を見開くんだ。わかりやすかった。あ、頭にコツコツと何か当たってたのは、ワイバーンの攻撃だったんだ。
結界の内側に入ってすぐに振り返ると、もうワイバーンもモンスター・ボアも僕への直接攻撃はできない。オークさん達は相変わらず臨戦態勢だけれど、結界に阻まれてこちら側に入ってこれないからね。
「どうでしょうか?結界は、こんな風に強い魔物を防いでくれます。集落全体を結界で囲いましたから、もう強い魔物に襲われることはないですよ。」
実際には集落だけではなく、草原や周辺の山林も含んでいるけどね。だって細長い結界とかめんどくさいから、結局円形のドーム型にしたもん。
それでも人間に敵対していないのと、支配ではなく共生しているというのは好感が持てたので、今度は歴史ではなく現状を色々聞いてみよう。
言語教育というのは特に施されているわけではなく、日常生活の中で少しずつ覚えていくのだそうだ。このオークたちはどんだけ人間とコミュニケーションとっているんだよ。
今一緒に話している爺さんや人間たちは、一応名前を持っているそうだ。そして村長を始めとしてオークたちには名前はない。
「村長さん、アルテムさん、何か僕にできることがあれば言ってくださいね。僕を受け入れたくれたお礼と言ってはなんですが、たとえば、この集落に他の魔物が入らないようにすることができますよ。」
「「なんと、それは本当か。」」
人間のいるエリアの周りの柵は、いわば最終防衛線で、魔物が襲ってきた場合に弱い人間たちを守るために築いた防衛用の柵だそうで、僕は強力な魔物相手にはちょっと心もとないと思っている。だって、オークさん達は柵の上から覗けるんだし。
しかも地域的に常に他の魔物が集落に入ってくるので、集落防衛には苦労しているそうだし、毎日何人かのオークは犠牲になっているという。まあオークは魔物なのでそういう殺伐とした環境にも適応しているということで、集落が維持できる程度の犠牲ならば意に介していないようだけれど。何度も言うけどほんとオークたち有能すぎ。でも毎日数人死んでも集落維持してるって、オークの繁殖力は侮れないな。
村長とアルテムさんの前に、A4のコピー用紙と鉛筆を出し、開けた草原っぽいところのほぼ真ん中の僕が作った台地を中心に、まずは集落の地図を描いてみる。めちゃくちゃアバウトだけどまあ位置関係は分かると思う。
「この真中が僕の建てた家で、この四角が僕が作った台地です。そしてこの端っこがあなたたちの集落。どこからどこまでは分からないので、だいたいの印をつけてください。」
一匹とひとりは驚きながらも僕の書いた地図を覗いていたので、鉛筆を渡して印をつけてもらう。村長のオークさんの手では鉛筆は持ちづらかったらしく、アルテムさんがぎこちなく鉛筆を握って集落の範囲を記入してくれた。ちなみに村長さんはアルテムさんのことを『人間の族長』と呼んでいる。仲もよさそう。
「もし問題なければ、集落を案内していただけませんか?」
おそらくだけど、ここで村長とアルテムさんにお聞きした内容と実際の集落についてもいろいろと齟齬のある可能性があると思っている。オークは人間言語を理解して、なんというか進化している感じなんけれど、人間の方はいろいろと退化している可能性が高いんだよね。
村長さんは僕の申し出を快諾してくれて、村長、アルテムさん、そして護衛の若いオーク3匹が集落を案内してくれることとになった。
まずは集落の外周。結界を張るとしても、どこからどこまで張ればよいのかわからないので、外周の確認は重要だ。集落は草原ではなく林の中だけど、さすがに場所は把握しているようで、サクサクと林の中を進んでいく。ただ、集落のオークたちが僕たちが通るたびに『ブヒッ』と鳴くのは何とかしてほしい。オークの挨拶らしいけれど。
簡易地図に印をつけながら、外周を進む。僕ひとりの時と違い、たまに魔物に遭遇するけれども、護衛担当のオークが簡単に屠っていく。しかも屠った魔物のうち、食用にできるものは、血抜きをして棒にぶら下げている。オークめっちゃ強いじゃん・・・。しかも血抜きだと・・・。
尋ねてみると、本来オークだけならば血抜きせずともそのまま食糧にするのだそうだけど、人間と共生するようになってから、獲物を処理するということを覚えたそうだ。そのほうが獲物を長持ちさせることができるのと、人間でも食べることができるという理由で。いろいろと文化的なオークさん達だった。
ちなみに血抜きした獲物は内臓を抜いたり冷やしたりしていないので、あまり長持ちしない気がするけど、魔物は魔石を抜かなければ普通の動物と違い劣化が遅いそうだ。だから数時間後に解体しても問題ないという。なんか冒険者ギルドで聞くよりも勉強になる。干し肉や燻製肉の生産も人間によってされているというから、共生もめっちゃ成功しているのではないだろうか。
2時間ほどで外周の案内が終わったので、村長さんに許可を取って結界を張る。魔石は複製した大きめの物に魔力チャージして、いつもの銀色の魔石を作り、魔物を通さない設定で結界を張る。でもオークさん達を排除することは問題なので、オークを含むそれより小さな魔石を持った魔物は通せるように設定していく。範囲は草原とその周辺の林を含んだのでかなり広い。半径10kmだから、島の結界より広いんだよね。
結界の設定時には魔石を中心として広げて行ったから、あとで逃げ遅れて林の木々と結界に挟まれて圧死した魔物たちの魔石は回収しておこう。島でやったのと同じように地面から持ち上げれば一括回収できると思うし。
「結界は張り終わりました。目に見えませんから実感できないと思いますので、数日様子を見てください。オークさん達より強い魔物は、集落には入って来ません。もし必要ならば、オークさん達以外の魔物が入って来れないようにもできますけど、それだと獲物が捕まえにくくなってしまいますよね?」
オークさん全員とお会いすれば、個別透過設定もできそうな気がするけど、それだと新しくオークが生まれるたびに設定しないといけないので、大雑把な透過設定にしておいた。
「人間の雄よ、感謝する。しかし本当に強い魔物がここに入って来ることはないのか?」
いや、だから数日様子を見て欲しいんだけども・・・。あ、そうだインベントリから強そうな魔物を開放してみようか。
「ちょっと待ってください、捕獲した魔物を何匹か開放して試してみますね。」
インベントリの中を探ってみる。さすがにドラゴンはやり過ぎだろうと思うので、何匹か見繕ってみよう。地上と上空の結界確認だと・・・お、モンスター・ボアがいる。それとこれはワイバーンだよね。大きさもだいたい魔物図鑑に載っているのと同じくらいだし。
「それじゃ、ここの先がだいたい結界の端なのでそこまでみんなで行って皆さんは結界の内側、僕は結界向う側に行って、魔物を放ってみます。待機する場所は指示しますので、見て居てくださいね。」
数分みんなで結界の端まで移動した後、みんなに待機を指示する。なんだか見学者・・・見学オークさんたちの数が数十匹に増えているけども、まあ気にしない。
インベントリから慎重にワイバーン3匹と大小のモンスター・ボア5匹、合計8匹を出す。一応完全に放つ前に、障壁で動けないようにしておくのも忘れない。まずは頭部のみ障壁を解除してみると、ちゃんと生きていた。まあ、そのへんは盗賊ですでに実験済みだから問題ない。
障壁を半解除したワイバーンやモンスター・ボアはこちらをめちゃくちゃ睨んで雄たけびを上げている。オークさんたちが人語を理解できるんだから、この魔物も理解できるかもしれないと思って、何度か声をかけて見るけど、雄たけびしか上げない。ぜんぜんダメっぽい。
見学している方々の方を振り返って見ると、数が減っていた。というか、護衛を含む戦士っぽいオークさんたちは臨戦態勢をとっている。僕の説明を聞いていなかったのだろうか。
「それじゃ、放ちますよ。そこで見て居てくださいね。」
サクっとワイバーンとモンスター・ボアの障壁を完全解除する。あ、なんかワイバーンもモンスター・ボアも僕を狙っているようだ。まあ、そうなるよね。でもそれだと結界のお披露目にならないので、魔物を後にしてゆっくり歩いて結界の内側に移動。だいたい結界の端から30cmくらいの所が良いかな。
結界に到達する前に、何度か背中を軽く押された感じがして振り返って見ると、モンスター・ボアが体当たりしていた。めちゃくちゃびっくりした・・・。
オークたちがものすごく驚いたお顔をしていたのはそのせいか。というか、表情が読みにくいオークさん達でも、驚く顔は人間と同じように目を見開くんだ。わかりやすかった。あ、頭にコツコツと何か当たってたのは、ワイバーンの攻撃だったんだ。
結界の内側に入ってすぐに振り返ると、もうワイバーンもモンスター・ボアも僕への直接攻撃はできない。オークさん達は相変わらず臨戦態勢だけれど、結界に阻まれてこちら側に入ってこれないからね。
「どうでしょうか?結界は、こんな風に強い魔物を防いでくれます。集落全体を結界で囲いましたから、もう強い魔物に襲われることはないですよ。」
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