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第56話 急遽領都再訪決定。

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 ダフネさん一家のマリアちゃんに馬車で一度教えたんだけど、結局特に変わりなかった。エレナの場合、先日見せてもらった限りは、マリアちゃんよりも魔法で出る水が少なかったから、うまくいくと思えない。しかしそういえば、得意な系統魔法があるというし、エレナの場合、水魔法ではなく他の系統ならうまくいくかもしれないな。

「教えますけど、期待しないでくださいね。前に一度、少しだけ<クリエイトウォーター>が使える子供に、教えたことがあったんですけど、結局変わりなかったんですよ。それでもよければ。」

「もちろんです。すぐに使えるようにならなくても、もしかしたらずっと教えてもらっているうちに、使えるようになるかもしれませんし。」

 ギュッと両手の拳を胸の前で握って、決意を示しているけど、ほんと分からないからね。冒険者登録した後くらいから、のんびりと教えていくことにしよう。ついでにインベントリに適当な本があるかもしれないので探しておこう。

「それじゃ、サルハの街で冒険者登録してから、魔法の授業を開始します。とはいっても、僕もちゃんと教えること自体初めてなので、急がずにゆっくりと教えていきますね。」

「はい。お願いします。アタール先生。」

「こちらこそ。さて、そろそろお腹空いたのでは?」

 結構集中していたせいで、時間がたつのも忘れていた。サルハの街に行くのは4日後の午前中で良いと思うので、その間にも親交も深めることができるだろうし、思い立つこともあるだろう。今日は凝縮した1日だった。まだ外は少し明るいけど。

 食事前に、エレナはいつもの村人風の服に着替え、僕はスエットの上下に着替える。エレナの普段着も増やさないとな。ちなみにスリッパは普通にあった。まあ、モデルハウスだもんね。

 晩御飯はちょっとガッツリ系ということで、から揚げ弁当。それに、グリーンサラダと、カップスープにした。ログハウスの食器棚に、けっこういい感じのお皿やカップがあったので、クリーンをかけて盛り付け。フォークやスプーンもステンレス製。大皿には、またバナナを置いてある。一度エレナは日本に連れて行っているので、食器類くらいは開き直っている。上空からだけで地上には下りてないけどね。というか、もうログハウスの時点でどうでもよくなってる。

 夕食を終えた後も色々話した。お互いの個人的なことまでは、まだ僕が躊躇するので、他愛ない話。液晶テレビにスマホを繋いで何か見せようと思ったけど。映画とかアニメはまだ怖くて見せられない。地球の現実と勘違いされたら、それこそ『神々の国・・・』とか言われそうだから。適当な時間に、エレナにお風呂を勧め、その間に僕は【エルフ村】用の衣装のみ写真を撮影。そういや、書斎にLANケーブル引かなければ。おそらく細かいところでいろいろすべきことが残っていると思う。

 セレナは交代で僕が風呂に入った後すぐに自分の部屋に向かったようで、おそらく眠ったのだろう。僕も日課のシステム確認と【エルフ村】にアタールでお昼に入ったレストランのウエイトレスさんの隠し・・・撮影写真と、朝購入した服の写真をアップしたら寝ることにする。

 結局【エルフ村】への投稿後そのまま寝てしまった。昨日は、いや昨日も精神的にかなり疲れていたようだ。田舎の朝は早い。何と言ってもちょっと前まで無人島だった場所だ。エレナはまだ眠っていると思う。ノックがないし。僕はひとつ増えた日課の、魔石にチャージした魔力チェック。まあ場所は寝室横の書斎の飾り棚なんだけど。ウッディでかっこいい。ログハウスだから。

 実験施設・・・これも名前を考え直す必要があるな。とにかく、実験施設エリア用の障壁の魔石は、まだチャージしたときと同じ、銀色に輝いている。そしてそのすぐ近くにある島全体用の魔石は・・・これも変わらない。まあ、まだ数日だし。ちなみに実験施設用には7/21、島用には 7/23と油性マーカーで充填日を書いてある。電池交換目安決めの定番だ。

 あ、そうだ。エレナが起きたら、インベントリの中の魔物をどうしたらいいか、相談してみよう。彼女ならいいアドバイスをくれそうな気がする。魔石の在庫も欲しいし。あ、そういえば芝生に似た植物を領都で見かけので、領都に買いに行くのもいいかもしれない。徒歩で3日もあれば領都からサルハの街には行けるから、今日朝食後に領都に引き返したことにして行ってみようかな。予定が1日延びるくらいなら・・・。

「コンコン」

 噂をすれば・・・。急ぎ扉を開けお互い「おはようございます。」と挨拶して、今日も朝から福眼。もうちょっとバリエーションが必要だな。この場合は男性用でいいから、買い物も楽だ。まあ、通販だけど。

「朝食は何がいいです?」

「アタールさんが出してくれるものは、どれも美味しいので、何でもいいですよ。」

 なら、今日はパンケーキだな。レンジでチンした方がいいだろう。シロップは付いているし。飲みものは、ミルクでいいな。念のためバナナも出しておこう。もうこれ、自宅での食生活よりぜんぜん充実してる。まあ、コンビニシリーズだけど。そのうちこっちの食材でどんなものが作れるか試してみよう。腕が必要のないレシピで。はっ、日本の高級店巡りして、すべて複製してインベントリに入れておくという手もある。いや、聞いてます?って言われる前に、エレナさんに尋ねなければ。

「エレナさんは、魔物詳しいですか?」

 盛況のうちに朝食も終え、早速魔物の件から切り出す。

「はい何でも知っているわけではありませんけど。集落では狩りはしていませんが、解体のお手伝いはしていましたから。」

 おお、これは頼もしい。あ、もしかしたら解体の手順を見れば、魔法で自動化できるかもしれない。いちどインベントリの魔物を整理しなきゃ・・・あ、生きている魔物のほうが多いのか・・・数匹出しながら、手っ取り早い息の根の止め方を実験しないと。まずそれからか。

「ええっと、実は、この島にですね、魔物が居たんです。それを・・・捕獲?したので見てもらえないかな。と思っていまして。」

「アタールさん、なんだか話し方変ですよ?捕獲?生きているのですか?それで、何体くらいですか?」

 何体だろう・・・。インベントリの中身数えれるかな?んーと・・・。

「だいたいなんですけど、大小合わせて、3500体くらい?」

「・・・・・・」

 まあ、そういう反応になるかなとは思っていたので、丁寧に事情をお話ししたのだが、説明をしている間、ずっと固まっていらした。

「あの、わたし思うんですが、領主様にお聞きしたほうがいいと思います。その、魔物についてという意味ではなく、もしかしたら、昨日話していたことが、全部解決するかもしれないと思うのです。なんとなくですが。」

「あ、この国って言っても、ここはおそらく魔物の山の延長にある島だから、どこの国でもないと思う。」

「・・・・・・」

 また固まってしまった。まあ、エレナの言うことだから、そこは間違いないだろう。どうせ領都には行くつもりだったから、着替えができたら、早速向かおう。

「じゃぁ、エレナさん。昨日領都で買った服に着替えて、早速行きましょう。用意出来たらすぐに行きますから。」

 コクコクと頷くエレナさん。昨日の後半はエレナさん無双だったから、久々に見た気がする。
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