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第45話 ログハウスにて。
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さて、こういう時はどういう行動をとればいいか分からないし、実際には飛び降りるのかさえ分からないので、上空からひとまずは衝撃吸収結界を彼女の足元、崖側に展開しておく。もし飛び降りようとしても、実は段差がなくて、膝がガクってなるだろうな。顔面から飛び込んでも、衝撃吸収だから安心。
静かに地上に降りて、しばらく様子を見ているが動きがないので、透明化も解除しておく。驚かせてはいけないから、声をかけることもできないんですよねぇ。あまりにも絶壁ギリギリに立っていらっしゃるから。後ろ姿から察するに、猫耳さん。もちろん尻尾も見えている。猫人族というらしいけど虎人族さんもいるし、まだ亜人さんの存在に慣れていないので、猫耳で統一してる。
しばらく待っても全く動きがないので、少し近寄ってみたら、崖の縁から一歩踏みだして、固まっていた。いつの間に・・・。もう身投げしてたのね。いや投げてというか落ちてはいないけど。
「もしもし、お嬢さん?」
ごめん、女性に対しての声のかけ方が全く分からない。けど声に気づいた彼女は「ギギギギ」という音がまるで聞こえるような感じで、振り返った。
「身投げの最中にすみません。大丈夫です?」
身投げの最中なんだから、大丈夫じゃぁないよね。自分のことながら、うんざりさするわ。顔面蒼白のまま後ずさる彼女。後ずさってはいるけど、崖からだから僕には近寄ってる。そして数歩後ずさってから、操り人形の糸が切れたようにへたり込んだ。僕はもう数歩お彼女に近づいてみるが、特に反応は無い。ここは理由とか聞いてみるべきかな。
「差し出がましいですけど、理由とかお聞きしてもいいですか?」
月並みな言葉しか出てこない。こういう時は魔法はなんの意味もなさないのか。へたり込んだままの彼女は全く反応を示さないので、彼女のすぐそばまで移動して、肩を軽く叩いてみた。
「もしもし、聞こえてます?」
電波が悪い場所でのスマホかっ。心の中で自分の発言に突っ込む。振り返った彼女の目には光が宿って無かった。
「これは絶望を感じた時の目だよな。」
聞こえないくらいの小さな声で独り言ちる。感じた体験や対象は全く違うだろうけど、この目は何度も鏡で見たことある。夢や希望も持たず、勘違いに気づくまで・・・・世界の不幸を一人で背負ってると思ってた時の目。この娘は何を背負ってしまっているのだろうか。他人にとって他愛ないことであっても、その人にとっては、何より大切だったりするんだよね。それを失ったり、傷つけられたりしたのだろうか。
「もう、理由とかいいから、おなかすいてない?何か食べる?」
コクコクと頭を縦に振る彼女に少し笑ってしまった。彼女を見て、とにかく消化に良くて食べやすく栄養のあるものということで、インベントリからプリンをふたつ出した。ひとつはもちろん自分の分。蓋を開け、木のスプーンを添えて彼女に差し出した。しまった。ここはひとつのプリンを、あ~んして食べさせてあげるとこだったか。
僕が先に食べ始めると、彼女も恐る恐る口にして、目を見開いた。しんどいときは、美味しいもの食べると少し復活するよね。ゆっくりと味わうように食べているように見えても、量が量だけにすぐに食べ終わったので、お代わりを取り出して渡した。結局みっつ目まで食べ切った。
「ありがとう。」
消え入るような声だったけど、確かに聞こえたので、僕は優しいほほえみを返した。あれ?返したつもりだったのだけど、気づかれなかったようなので。「どういたしまして。」と言葉で返した。
彼女の額に手をかざし<ハイヒール>を唱える。今回は発声している。まあ、本当は呪文関係ないけども。彼女の体の悪いところを治し、瘢痕を治し、さらに今回は体に有害な細菌やウィルスも駆逐するイメージ。おそらくこの娘は、数日間はまともなものは食べていないだろうし、何かしらの重大な疾患も持っていただろう。観察力のない僕でさえわかるくらいなのだから。魔法の光が彼女を優しく包んだあと、何かしら安心したのだろう、そして疲れていたのだろう。なんとそのまま地面で寝てしまった。
かれこれ1時間かな。まだ起きないよ。このまま寝てたら、風邪引くよ。まあ、寒くはないけど、海べりだから潮風きついし、ベタベタしてくるし。かといってかっこよくお姫様ダッコして崖から離れるとかも無理なので、付かず離れずの距離を保ち、見守っている。
そういや、ログハウスもあったわ。崖から20mほどセットバックしたところに、音を立てないように慎重に、地面を平地にして固める。そしてこちらも、そっと音を立てないよう、ログハウスを取り出して設置。
「もしもし、起きられる?」
軽く二の腕あたりを叩いて起こそうとするけど、まだ起きないようだ。お腹が冷えないように、ログハウスから毛布でもとって来ようとすると、身じろぎしたようなので、再度彼女に声をかける。
「眠るなら、ベッドで寝なきゃ疲れちゃうよ。」
目は開いたんだけど、寝ぼけ眼で焦点が定まっていない。これ起きてるのかな?しかし、彼女はすくっと立ち上がり、僕の手を取った。何が何だか分からないけれど、その手を引いてログハウスに連れていき、ベッドの前まで連れていくと、再び彼女はベッドにもぐりこんだかと思うとそのまま眠ってしまった・・・。しょうがないので、とりあえず彼女の着ている服にリペアとクリーンだけかけて、ログハウスの付近を散歩することにした。誰かが近寄って来たら困るし。
見回っても人はいないし、上空から確認しても村や集落はまったくなかった。彼女はいったいどの方角、いや何処から来たのだろうか。持ち物も何ももっていなかったようだし。ログハウスの中に入ると彼女らしき声が小さく聞こえたので、立ち止まる。
「やっぱり、夢かしら・・・でもやっぱり死んだのよね・・・ここは天国?地獄?服、新しくなってるし・・・けど同じ服なんだ。死んでも、奇麗な服じゃないんだ・・・やっぱり地獄?・・・・・」
いや、死んでないし。落ちなかったの覚えてるでしょう。つぶやきの最初あたりらしい所から聞けたということは、目が覚めたばかりなんだろうけど、これ、タイミングがいいのか悪いのか。音を立てないよう、玄関まで戻って、扉をノックした。
「コンコン」
もちろん返事は無いけど、木のコップに水も用意して、普通に足音を立てて彼女の下に向かう。ベッドを見ると毛布にもぐりこんでいてはいるが、もぞもぞと動いているのはわかる。
「のどが渇いていたら飲んでください。お水です。」
と、ベッドサイドテーブルにコップを置き、すこしベッドから離れて椅子に座り再び話しかけてみる。
「天国でも地獄でもないですよ。」
すると、毛布の中から頭が半分のぞいた。猫耳がピクピクと動いている。
「水分摂った方がいいですよ。」
なるべく優しく笑顔で接しているけれど、鏡を見ているわけでもないので、どういう顔になっているかはわからない。彼女は、恐る恐るという感じでやっと、毛布から上半身を起こしてコップを手に取って水を飲みだした。飲みながらもこちらをチラッと窺がっている。まあ、怪しいよね。でもこのログハウスは僕のだし。土地は誰のかわかんないけども。
「・・・・あなたは?」
水を飲みほした第一声。ここはどこ?わたしはだれ?というのを期待しなかったわけではないが、まあおそらく記憶喪失ではないし。
「僕はアタールといいます。何か聞きたいことはありますか?」
僕の割にはグイグイ行っているように感じるだろうけど、最初の声掛けのように、何してたの?とか、なんで崖に?みたいな質問は止めにした。どうせ聞いてもろくな事言えないしね。個人的なこととか独り言ならいろいろ話せるんだけど、対人でしかも女性が相手だと、普段の実力を発揮してしまう。
「わたし、夢を見てました・・・。」
あ、これプリン食出したり、ハイヒールかけたりしたやつが、夢ってパターンだよね。
静かに地上に降りて、しばらく様子を見ているが動きがないので、透明化も解除しておく。驚かせてはいけないから、声をかけることもできないんですよねぇ。あまりにも絶壁ギリギリに立っていらっしゃるから。後ろ姿から察するに、猫耳さん。もちろん尻尾も見えている。猫人族というらしいけど虎人族さんもいるし、まだ亜人さんの存在に慣れていないので、猫耳で統一してる。
しばらく待っても全く動きがないので、少し近寄ってみたら、崖の縁から一歩踏みだして、固まっていた。いつの間に・・・。もう身投げしてたのね。いや投げてというか落ちてはいないけど。
「もしもし、お嬢さん?」
ごめん、女性に対しての声のかけ方が全く分からない。けど声に気づいた彼女は「ギギギギ」という音がまるで聞こえるような感じで、振り返った。
「身投げの最中にすみません。大丈夫です?」
身投げの最中なんだから、大丈夫じゃぁないよね。自分のことながら、うんざりさするわ。顔面蒼白のまま後ずさる彼女。後ずさってはいるけど、崖からだから僕には近寄ってる。そして数歩後ずさってから、操り人形の糸が切れたようにへたり込んだ。僕はもう数歩お彼女に近づいてみるが、特に反応は無い。ここは理由とか聞いてみるべきかな。
「差し出がましいですけど、理由とかお聞きしてもいいですか?」
月並みな言葉しか出てこない。こういう時は魔法はなんの意味もなさないのか。へたり込んだままの彼女は全く反応を示さないので、彼女のすぐそばまで移動して、肩を軽く叩いてみた。
「もしもし、聞こえてます?」
電波が悪い場所でのスマホかっ。心の中で自分の発言に突っ込む。振り返った彼女の目には光が宿って無かった。
「これは絶望を感じた時の目だよな。」
聞こえないくらいの小さな声で独り言ちる。感じた体験や対象は全く違うだろうけど、この目は何度も鏡で見たことある。夢や希望も持たず、勘違いに気づくまで・・・・世界の不幸を一人で背負ってると思ってた時の目。この娘は何を背負ってしまっているのだろうか。他人にとって他愛ないことであっても、その人にとっては、何より大切だったりするんだよね。それを失ったり、傷つけられたりしたのだろうか。
「もう、理由とかいいから、おなかすいてない?何か食べる?」
コクコクと頭を縦に振る彼女に少し笑ってしまった。彼女を見て、とにかく消化に良くて食べやすく栄養のあるものということで、インベントリからプリンをふたつ出した。ひとつはもちろん自分の分。蓋を開け、木のスプーンを添えて彼女に差し出した。しまった。ここはひとつのプリンを、あ~んして食べさせてあげるとこだったか。
僕が先に食べ始めると、彼女も恐る恐る口にして、目を見開いた。しんどいときは、美味しいもの食べると少し復活するよね。ゆっくりと味わうように食べているように見えても、量が量だけにすぐに食べ終わったので、お代わりを取り出して渡した。結局みっつ目まで食べ切った。
「ありがとう。」
消え入るような声だったけど、確かに聞こえたので、僕は優しいほほえみを返した。あれ?返したつもりだったのだけど、気づかれなかったようなので。「どういたしまして。」と言葉で返した。
彼女の額に手をかざし<ハイヒール>を唱える。今回は発声している。まあ、本当は呪文関係ないけども。彼女の体の悪いところを治し、瘢痕を治し、さらに今回は体に有害な細菌やウィルスも駆逐するイメージ。おそらくこの娘は、数日間はまともなものは食べていないだろうし、何かしらの重大な疾患も持っていただろう。観察力のない僕でさえわかるくらいなのだから。魔法の光が彼女を優しく包んだあと、何かしら安心したのだろう、そして疲れていたのだろう。なんとそのまま地面で寝てしまった。
かれこれ1時間かな。まだ起きないよ。このまま寝てたら、風邪引くよ。まあ、寒くはないけど、海べりだから潮風きついし、ベタベタしてくるし。かといってかっこよくお姫様ダッコして崖から離れるとかも無理なので、付かず離れずの距離を保ち、見守っている。
そういや、ログハウスもあったわ。崖から20mほどセットバックしたところに、音を立てないように慎重に、地面を平地にして固める。そしてこちらも、そっと音を立てないよう、ログハウスを取り出して設置。
「もしもし、起きられる?」
軽く二の腕あたりを叩いて起こそうとするけど、まだ起きないようだ。お腹が冷えないように、ログハウスから毛布でもとって来ようとすると、身じろぎしたようなので、再度彼女に声をかける。
「眠るなら、ベッドで寝なきゃ疲れちゃうよ。」
目は開いたんだけど、寝ぼけ眼で焦点が定まっていない。これ起きてるのかな?しかし、彼女はすくっと立ち上がり、僕の手を取った。何が何だか分からないけれど、その手を引いてログハウスに連れていき、ベッドの前まで連れていくと、再び彼女はベッドにもぐりこんだかと思うとそのまま眠ってしまった・・・。しょうがないので、とりあえず彼女の着ている服にリペアとクリーンだけかけて、ログハウスの付近を散歩することにした。誰かが近寄って来たら困るし。
見回っても人はいないし、上空から確認しても村や集落はまったくなかった。彼女はいったいどの方角、いや何処から来たのだろうか。持ち物も何ももっていなかったようだし。ログハウスの中に入ると彼女らしき声が小さく聞こえたので、立ち止まる。
「やっぱり、夢かしら・・・でもやっぱり死んだのよね・・・ここは天国?地獄?服、新しくなってるし・・・けど同じ服なんだ。死んでも、奇麗な服じゃないんだ・・・やっぱり地獄?・・・・・」
いや、死んでないし。落ちなかったの覚えてるでしょう。つぶやきの最初あたりらしい所から聞けたということは、目が覚めたばかりなんだろうけど、これ、タイミングがいいのか悪いのか。音を立てないよう、玄関まで戻って、扉をノックした。
「コンコン」
もちろん返事は無いけど、木のコップに水も用意して、普通に足音を立てて彼女の下に向かう。ベッドを見ると毛布にもぐりこんでいてはいるが、もぞもぞと動いているのはわかる。
「のどが渇いていたら飲んでください。お水です。」
と、ベッドサイドテーブルにコップを置き、すこしベッドから離れて椅子に座り再び話しかけてみる。
「天国でも地獄でもないですよ。」
すると、毛布の中から頭が半分のぞいた。猫耳がピクピクと動いている。
「水分摂った方がいいですよ。」
なるべく優しく笑顔で接しているけれど、鏡を見ているわけでもないので、どういう顔になっているかはわからない。彼女は、恐る恐るという感じでやっと、毛布から上半身を起こしてコップを手に取って水を飲みだした。飲みながらもこちらをチラッと窺がっている。まあ、怪しいよね。でもこのログハウスは僕のだし。土地は誰のかわかんないけども。
「・・・・あなたは?」
水を飲みほした第一声。ここはどこ?わたしはだれ?というのを期待しなかったわけではないが、まあおそらく記憶喪失ではないし。
「僕はアタールといいます。何か聞きたいことはありますか?」
僕の割にはグイグイ行っているように感じるだろうけど、最初の声掛けのように、何してたの?とか、なんで崖に?みたいな質問は止めにした。どうせ聞いてもろくな事言えないしね。個人的なこととか独り言ならいろいろ話せるんだけど、対人でしかも女性が相手だと、普段の実力を発揮してしまう。
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