とある令嬢は愛されることが理解できない

本編

4. 皇太子殿下はとても細かい

　やってまいりましたわ、宮殿へ。相変わらず無駄に広く無駄に豪華な無駄に権力をひけらかした場所ですわね。

　そのようなことを口にすれば首が飛びますので申しませんが、私はあまり好きではございませんの。

　だって目がチカチカしますもの。ああ、サングラスが欲しいわ。


「レイチェル、先程は余裕がなくて言えなかったけど、そのドレス、とても似合っているよ。やはりこだわってオーダーした甲斐があった。
　ああそれと、次からお茶会は別邸の湖畔にあるガゼボでやろうと思うんだ。
　此処よりは装飾も少なくて静かだし、何より、「王族とその婚約者及び配偶者以外の立ち入りを禁ず」だからね。」

「……いつからご存知でしたの…？」

「初めて招待した時から疑問だったんだ。確信したのは先ほどだけどね。
　いつも眩しそうにシャンデリアを眺めているのに気がついたのは5度目。
　従者やメイドの対応に困っているのに気づいたのは8度目。
　建物内よりも外の自然に触れる方が好きだと気づいたのは13度目だったかな。」


　相変わらず細かいですわね。記憶力がおかしいのです。

　絶対暗記パンですわ。でもそれだと一時的ですわね。ああ、でも日記に記しておけば、私に会うときだけ暗記するという手も…

　いえ、そもそもこの世界にネコ型青狸ロボは居ませんでしたわね。非常に残念です。

　今日は皇妃殿下もいらっしゃいますので、宮殿敷地内の温室に参ります。

　役者が揃ったところから、お小言を言う会のスタートですわ。

　尤もっとも、皇妃殿下は他貴族マダム達との交流がございますので、お会いできるのはまださきですけれどね。