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空と傷 かけら(3)
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受勲式も報告会も滞りなく進んでいった。
1度、国王自らが受勲者に勲章を授けるとき、少し騒がしくなったくらいだ。
それは勲章が人差し指の爪ほどの大きさしかないことがわかったときだ。
もっと大きなものを想像していた者が不満を漏らした。
それを制したのは2代前の王に仕えた宰相の補佐をしており、今はマグリカ王の宰相を務めるワジだった。
「勲章の大きさが誉の大きさだとお考えですか」
長身の褐色の肌に真っ白な長い髪を揺らめかせた老人が静かにそう言っただけで、その場が静かになった。
それを引き継いでマグリカ王が言った。
「すまないな、ウルムラ。
そなたが望むほど大きな勲章を授けられない私を許してくれぬか」
そう言いながらもマグリカは少しも許しを請うている様子はなかった。
「勲章にかかる費用をもっと他のことに充てたいと考えた。
せっかく遊学から医局、薬局の者が帰ってきたので、彼らが活躍できる場所を国中に作りたいと思っている。
そなたが品種改良してくれた麦で飢えから救われる者も増えるだろう。
しかし怪我や病にかかればその者は命を落とすかもしれない。
私の願いは国民の健やかな生活だ」
贅沢三昧を繰り返した前王でありマグリカの父が亡くなり、内乱の後、王として立ったマグリカの懸命な働きを知らない国民はいなかった。
国王と宰相は、小さい勲章には精密な細工が施されているこ
20180911
1度、国王自らが受勲者に勲章を授けるとき、少し騒がしくなったくらいだ。
それは勲章が人差し指の爪ほどの大きさしかないことがわかったときだ。
もっと大きなものを想像していた者が不満を漏らした。
それを制したのは2代前の王に仕えた宰相の補佐をしており、今はマグリカ王の宰相を務めるワジだった。
「勲章の大きさが誉の大きさだとお考えですか」
長身の褐色の肌に真っ白な長い髪を揺らめかせた老人が静かにそう言っただけで、その場が静かになった。
それを引き継いでマグリカ王が言った。
「すまないな、ウルムラ。
そなたが望むほど大きな勲章を授けられない私を許してくれぬか」
そう言いながらもマグリカは少しも許しを請うている様子はなかった。
「勲章にかかる費用をもっと他のことに充てたいと考えた。
せっかく遊学から医局、薬局の者が帰ってきたので、彼らが活躍できる場所を国中に作りたいと思っている。
そなたが品種改良してくれた麦で飢えから救われる者も増えるだろう。
しかし怪我や病にかかればその者は命を落とすかもしれない。
私の願いは国民の健やかな生活だ」
贅沢三昧を繰り返した前王でありマグリカの父が亡くなり、内乱の後、王として立ったマグリカの懸命な働きを知らない国民はいなかった。
国王と宰相は、小さい勲章には精密な細工が施されているこ
20180911
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