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文月文 かけら(2)
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次の夏、翔ちゃんからはメールが来た。
内容は手紙と同じ。
「直、ごめん。
忙しくて夏休みも帰れません。
直に会いたいです」
俺はそれを読んだとき、自分のスマホを投げつけ叩き割ろうかと思った。
「もう聞き飽きたっ!
もういやだ。
待っているだけなのは、いやだっ!
会えないんだ。
これって付き合っているって言えるの?」
自分のことを過信しすぎていた。
結構、人と距離を取るほうなので、翔ちゃんと離れていてもテキトーにできると思っていた。
実際は違った。
翔ちゃんに会いたくて会いたくて仕方なかった。
いつも翔ちゃんと過ごした高校時代のことを思い返していた。
毎日のように会い、じゃれて、笑っていたあの頃。
自立して、誰にも文句を言わせないように大人になって二人で幸せになろう、と口約束をし、それを女の子みたいに俺たちは真っ赤になりながら嬉しがっていた。
こんなどす黒い感情に蝕まれるとは思ってもいなかった。
だけど、こんなひどい言葉、翔ちゃんに投げつけられる?
きちんと食べて寝ているのか、やり過ぎていないのか、身体は大丈夫なのか。
心配で不安で、いっぱいいっぱいの翔ちゃんに心配かけたくなくて。
俺は言葉を飲み込む。
飲み込んで飲み込んで。
夏が終わり、秋が来た。
大学2年の秋、旅費は十分に貯まっていたけど、俺は翔ちゃんに会いに行くことはしなかった。
だんだん、メールの文章も短くなって、間隔も開いてきた。
通話もほとんどなくなった。
話すことがなくなっていった。
冬の初め、翔ちゃんからメールが来た。
「正月に絶対帰るから」
しかし、それも嘘になった。
冬休みに研究をすることになっていた学生がインフルエンザで倒れた。
翔ちゃんは彼の代役を引き受けたんだと電話をかけてきて、俺に謝りながら言った。
生き物を扱う研究だから、休みはない。
それは知っている。
誰かが困ったとき、自分のことを置いて助けようとする翔ちゃんを俺は好きだった。
優しい翔ちゃんが大好きだった。
なのに、今はその優しささえ、俺には最高にイラつかせるものになっていた。
もし、これで翔ちゃんが目の前にいたら、殴りかかっていただろう。
と思うほど、俺は余裕を失った。
こんなに翔ちゃんを求め、翔ちゃんに依存しているとは思わなかった。
ただただ会いたかった。
同じ時間を過ごしたかった。
「わかった。
身体に気をつけて」
俺がスマホに向かって言えたのはそれくらいだった。
そして、それ以上何も聞けなくて、向こうで翔ちゃんが話しているのに俺は通話を切った。
20171010
内容は手紙と同じ。
「直、ごめん。
忙しくて夏休みも帰れません。
直に会いたいです」
俺はそれを読んだとき、自分のスマホを投げつけ叩き割ろうかと思った。
「もう聞き飽きたっ!
もういやだ。
待っているだけなのは、いやだっ!
会えないんだ。
これって付き合っているって言えるの?」
自分のことを過信しすぎていた。
結構、人と距離を取るほうなので、翔ちゃんと離れていてもテキトーにできると思っていた。
実際は違った。
翔ちゃんに会いたくて会いたくて仕方なかった。
いつも翔ちゃんと過ごした高校時代のことを思い返していた。
毎日のように会い、じゃれて、笑っていたあの頃。
自立して、誰にも文句を言わせないように大人になって二人で幸せになろう、と口約束をし、それを女の子みたいに俺たちは真っ赤になりながら嬉しがっていた。
こんなどす黒い感情に蝕まれるとは思ってもいなかった。
だけど、こんなひどい言葉、翔ちゃんに投げつけられる?
きちんと食べて寝ているのか、やり過ぎていないのか、身体は大丈夫なのか。
心配で不安で、いっぱいいっぱいの翔ちゃんに心配かけたくなくて。
俺は言葉を飲み込む。
飲み込んで飲み込んで。
夏が終わり、秋が来た。
大学2年の秋、旅費は十分に貯まっていたけど、俺は翔ちゃんに会いに行くことはしなかった。
だんだん、メールの文章も短くなって、間隔も開いてきた。
通話もほとんどなくなった。
話すことがなくなっていった。
冬の初め、翔ちゃんからメールが来た。
「正月に絶対帰るから」
しかし、それも嘘になった。
冬休みに研究をすることになっていた学生がインフルエンザで倒れた。
翔ちゃんは彼の代役を引き受けたんだと電話をかけてきて、俺に謝りながら言った。
生き物を扱う研究だから、休みはない。
それは知っている。
誰かが困ったとき、自分のことを置いて助けようとする翔ちゃんを俺は好きだった。
優しい翔ちゃんが大好きだった。
なのに、今はその優しささえ、俺には最高にイラつかせるものになっていた。
もし、これで翔ちゃんが目の前にいたら、殴りかかっていただろう。
と思うほど、俺は余裕を失った。
こんなに翔ちゃんを求め、翔ちゃんに依存しているとは思わなかった。
ただただ会いたかった。
同じ時間を過ごしたかった。
「わかった。
身体に気をつけて」
俺がスマホに向かって言えたのはそれくらいだった。
そして、それ以上何も聞けなくて、向こうで翔ちゃんが話しているのに俺は通話を切った。
20171010
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