【短編未満集】かけらばこ

騎士が花嫁 かけら（１）

結婚式である。
参列者はめでたい席で、酒が振舞われているのでみんな楽しそうである。
俺は袖を通したこともないような上等の布で作られた晴れ着を着ている。
手には祝いの杯が持たされている。
これは俺の結婚式。
いや、めでたい。
めでたくないはずがない。
そうなんだけど。

俺の隣に座る、頭からベールをかぶった花嫁は、いかつい身体に花嫁衣裳を盛大に着つけられ、「スラークの赤熊」と恐れられた騎士様だ。




どうしてこうなった？
ひどい話だ。
自分でも、自分が置かれている状況がよくわかっていない。

ことの始まりは3日前。
長い戦いの末、俺が住む南の大国メリニャが北の大国スラークを倒し、消滅させた。
移動にもたっぷり2か月はかかる行程を経て、メリニャ王ピニャータ様が凱旋された。
王都は大騒ぎで、派手に紙吹雪が舞い、王様の凱旋を祝福した。
王宮の命令で、人は皆、沿道に出ていた。






20160912