【短編未満集】かけらばこ

ドラゴンの食事 かけら（１）

どうしましょう！
今まさに僕、食べられようとしています！

「だめっ！パトラッシュ、だめ、だめですったら～！！」

パトラッシュというのは先日もらった卵から孵ったドラゴンの名前です。
かわいいでしょう？
オレンジの身体に紺の羽根、目は黒々と濡れて、たまに火を吐きます。
うっとり見惚れるほど綺麗なんです。

がっ！
今、僕を食べようとしているのはパトラッシュの人型でして…
どういうわけかわからないのですが、人間になることができるのです。
もしかしたら、すごくできるコなのかもしれません。
育て方には慎重にならなければなりませんね。

「んんんっ！」

人間になったパトラッシュは双房が混じったオレンジの髪に、黒目がちの大きな瞳で、これまた見惚れてしまいます。
育ての親の贔屓目を入れても、綺麗です。

「そんなとこ、舐めちゃ、だ…めぇ…！」

このパトラッシュの食事というのが、あの、その、えーっとですね、いや、そんな、まぁいわゆる、せっくす、でして…
そして、僕がついうっかり、「食べるのは僕だけにすると約束してください！」と言ったものなので、時間を問わず食べられそうになっているのですが…

「も、もう、だめだから…」

ぶっちゃけると何回かは食べられちゃったんですけど…
でも…

「倒れちゃうよ、パトラッシュ…
僕、2日も食べてない…」

空腹で目が回ります。
もう、ぐるぐるです。
お恥ずかしい話なんですが、僕はあまり能力のない魔術師でして、稼ぎがあまりないんです。
パトラッシュがなにを食べるかわからなかったとき、あれこれ買ってみたり、昨日ここの家賃を支払ってしまったらお金がすっかりなくなってしまいまして。
仕事に行こうにもパトラッシュに食べられてしまうと、身動きできなくて仕事に行けず、2日も食べていない状態になってしまったんです。

どうしましょう…
朦朧としてきました。

「ほんとうに、だ、めだから…
僕、もう、だ…め…」





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