【短編未満集】かけらばこ

王様とひつじ 180109

テントの中の寝袋に潜り込んだばかりの王様とアメリはごそごそしていましたが、やがて自分の寝心地のいい場所を見つけ、落ち着きました。

「どんな国を作ろうかと思ってたんだけどね」

王様がなんの脈絡もなく話し始めたのをアメリは黙って聞きました。

「道が施設が建物がとかなんとか考えていたんだけど」

アメリは王様が時々リュックサックから手帳を取り出し書き付けていたのを見ていました。

「ぜーんぶやめてさ」

アメリはぎょっとしましたが、何も言いませんでした。

「まずは俺とアメリが楽しいところを作ろうと思う」

ここまで聞いてアメリはやっと「え」と声を出しました。

「だってここは俺の国であり、国民はアメリ一匹だもん。
俺たちが楽しくなくちゃね！」

「すってきぃ～！」

アメリは寝袋の中でもふんと王様に抱きつきました。

「王宮は作らないけどさ、いつまでもテントだと長期滞在はつらいから、小屋を作ろうと思うんだけど、どう？」

「うん！うん！」

アメリはテントの生活も好きでしたが、それは常に移動しているときのことで、一か所に長くい続けるにはちょっと窮屈に感じていました。

「いずれは他にも国民がくるかもしれないけど、まずは俺たちの居場所を作ろう」

アメリは王様の言葉に大きくうなずきながら言いました。

「小屋にも旗を立てる？」

「もちろん！
王様とアメリはここにいます、っていう目印だからね」

アメリは嬉しくて王様に抱きついた前脚にぎゅうううっと力を込めました。
王様も両腕でアメリをぎゅうううっと抱き返してくれました。