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23.お茶を用意してくれる友がいるので

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「シャル?」

 困惑した顔の兄の顔を見つめながら私は息を大きく吸う。
 
「あんな怪我なんで隠したの! なんで、悪化するまで放っておくの! ……なんで、話してくれなかったの?」
「ごめん」
 
 しょんぼりと謝罪を口にする兄。今はまだ謝罪を受け入れるときじゃない。
 
 「質問に答えて!」
 
 そう畳みかけると、兄は口をつぐむ。何かを考えるように目をつむった。
 
「……心配かけたくなかった。シャルが、悲しむ顔を、見たくなかったんだ」
「私、大泣きしたのよ。意識のない兄さまの横で」
「私の身勝手だ。……シャルを悲しませてしまった」
「そう、身勝手! 兄さまは私を優先しすぎるの! 怪我をしたときくらい私を一番にするのやめて!」
「いや、でも。私はシャルが一番、それは変えられないよ……」
 
「違う! 兄さまが私を大事なのと同じくらい、私も兄さまが大事なの! 私が怪我隠してたらどう思う!?」
 
 そこまで言い切ると、兄の目が大きく見開かれた。
 少し考えているようで、だんだんと目が潤み始めている。

「……それは、とても悲しい」
「でしょ? 私の気持ちわかった?」

 何度も頷く兄を見て私はやっと椅子に腰かけた。

「シャーロット。本当に、すまなかった。もうこういうことはしない」
「えぇ。絶対にしないでね」

 私の気持ちを吐き出したら、謝罪はすんなり受け入れることができた。
 後ろに控えてくれていたレイが隣に来て肩に手を置く。

「言いたいこと全部言えたか?」

 レイを先に行かせて残ったこととか、まだいろいろ言いたいことはあるがきりがない。
 それは言わなくていいかと思っていると、兄がでも、と口を開く。

「シャルも、襲撃者に睡眠薬のませるみたいなのは危なすぎるから、やめてほしい」
「兄さまもレイを先に行かせて残ったじゃない。あれは危ないことじゃないの?」
「それとこれとは話が」
「同じでしょ?」

 これに関しては譲れない。私が唇を尖らせると、兄は困ったように眉を八の字にする。
 互いに譲れないらしい。
 
 膠着状態になった私たちの横でレイがケーキを準備し始めた。

「それ、喧嘩が終わったらって言ってなかった?」

 そう聞くと、レイは今がちょうどいい、と言いながら紅茶をカップに注いだ。

「お互い様で終わらせたほうがいいこともあるだろ」
 
 レイは怪訝な顔を作って話を続ける。
 
「このままだと、オレにとばっちりが来る」

 兄と二人、顔を見合わせる。
 兄を置いて、一人で先に屋敷へ走ったレイも十分危ないことをしていた。
 だから、私はこれが終わったらレイにも文句を言おうと思っていたのだ。

 見透かされていたようで面白くない。

 どうやらそれは兄も同じようだった。
 向かいに座る兄のいたずらがバレたと言いたそうな顔を見て、思わず笑った。

「……デイビットもシャーロットもはそういうところあるよな」
 
 兄妹なんだよ。結局。レイがそう言ってため息をついている。
 
 どういうところだろう。そう思っているとレイがまたため息をつく。

「まったく同じ顔してる」

 その言葉に、兄がこちらを見て、すぐに文句のありそうな顔をしてレイのほうを向く。

「シャルのほうがかわいいだろう!」
「当たり前のことを言うな!」

 兄がレイに、当たり前のことでも言葉にしなくては、だとか、お前は言葉にしなさすぎる、だとか言っている。
 正直、同じことを兄にも言ってやりたいなと思いながら、兄とレイが楽しそうに言い争っているのを見ながら紅茶を飲んだ。

 レイは紅茶をいれるのもとても上手だ。
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