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銀狐の章

第072話「第一次鍋大戦 ④」

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「いや待て!ステイ!」

 今にも飛び掛かってきそうな妹と先輩と神猫を手で制する。
 目の前には熱々の鍋、まったくどうしてそんなに熱くなれる。
 空腹か?空腹がいけないのか?

「とにかく落ち着け!」

 なんで鍋ごときでこんなに疲れないといけないんだ。
 普通に食べるだけだぞ。

「とにかく、皿に盛るからしっかりと待つんだぞ」

 念を押して言っておく。

「仕方ないわね。みんなのお皿には私が盛り付けるわ」

 光が隣に座った。
 やたらと近い。

「これ、近づきすぎじゃ!」

 そういうとシェンは身体を押し付けてきた。
 これに対して光はムッとしたようにオレの腕にすが美ついた。

「あらあら、シェンちゃん。お兄ちゃんの指をしゃぶるなんてなんてうらやま……はしたない!そんなにしゃぶりたければ肥後ずいきでもしゃぶってなさい!」

 肥後すいきとは肥後細川藩が徳川将軍家への献上品として参勤交代の土産物として持参したとされた逸品。さすが光、熊本の特産品まで知っているとは。

「肥後ずいきとな!?」

 シェンが赤くなりながら叫んだ。どうしたんだ。名産品に何か思い出でもあるのか。

「あんな物より本物がいいのじゃ」

 ニヤリと笑いながらシェン。
 いや、肥後ずいきは本物の方がいいだろ。もしかして偽物が出回っているのか。
 うーん。シェンの言っていることが分からん。
 
「モー君、鈍すぎだぞ」

 あーちゃん先輩にまで変な風に言われた。
 おいおい、特産品に対してそれは失礼じゃないか。

 □■□■□■□■用語解説□■□■□■□■

【肥後ずいき】
 熊本の特産品。ハスイモの葉柄の皮をむいて独自の製法で酸化を防ぎながら乾燥させ、木綿糸で縛って「こけし型」や「リング型」に編んで作られている。
 その独特な形状はまあ、色々と想像力を掻き立ててしまうが……他意もなければ意味深なこともない。ないったらない。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

るみえーる
2023.01.01 るみえーる

冒頭は面白いんですけど、事件が起こりはじめるまでの読者サービスがいささか過剰すぎて、話がなかなか進まない感じがします。自分がこの手のものを書く際に参考になる(けど、できそうにない)ものがとても豊富なのが評価のしどころですね。
(「第6回キャラ文芸大賞小説一覧」から最近更新された順に冒頭数話をとりあえず読みます。「お気に入りに追加」は自身の備忘録です)

解除
月影 流詩亜(旧 るしあん)

🌟を付けました。

こちらも応援しますね。

解除

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