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銀狐の章
第023話「神狐とデート ①」
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朝――目覚めるとそこにダボTトランクス姿のシェンが抱きついていた。
おかしい。昨晩は簀巻きにして隣の部屋に置いておいたのに……
「おい、シェン……」
声をかけるが起きる気配がない。
否、こいつ……起きてやがる。その証拠に尻尾はぶんぶんと振られているではないか。
「むにゃむにゃ……お目覚めの【きす】があれば起きるのじゃ……」
いやいや、ワザとらしいのもほどがある。
ワザとだ。絶対ワザとだ。
その証拠にこれ見よがしに身体を擦り付けてきているし、Tシャツの大きな襟元からチラチラと見えるピンクの野イチゴなんかも目の毒だ。
「あーあ、早く起きないと朝ごはんが食べられなくなりそうだなな」
ピタッとシェンの動きが止まった。
「今日の朝ご飯は焼き魚なんだけどなぁ」
不自然なほどにシェンの束縛が解かれる。
シェンが単純な奴で助かった。以前、鍵をかけていたのにあーちゃん先輩が部屋に侵入しベッドにもぐりこんでいる事件があった。オレが目覚めた時には半裸のあーちゃん先輩が寝ぼけてオレの服を脱がしかかっていたのだった。
正直あれが寝ぼけての行動なのかどうだったのか――今はそのことを確かめるのがちょっと怖い。
オレは身を起こしてシェンをそのままに部屋を出る。
「朝食ができたら起こしに来る」
小さくシェンの耳が動くのが分かった。
◆ ◆ ◆ ◆
朝食が出来上がりシェンに声を掛けに行くと彼女はオレのベッドの中で気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てていた。
いわゆる二度寝というやつだ。
「おい、起きろ」
「眠いのじゃ、あと半刻……」
日を追うごとにこいつの自堕落さが目立つようになってきたいないか?
「今日は一緒に出掛けるんだろ」
オレの一言にシェンはぱっちりと目を開ける。
「そうじゃった。今日は【でーと】の日じゃったのう!」
からくり人形のようにぴょんとベッドの上で食率になるシェン。
彼女はそのまま部屋を出るとすたすたとリビングへと向かう。
きっちり席に着いてオレを急かした。
「お主様早くごはんにするのじゃ」
解せぬ――なんでオレが遅いみたいになっているんだ。
まあいい。とにかく早めに出発しなければ。
オレは時計を見ながら早々に朝食を済ませることにした。
おかしい。昨晩は簀巻きにして隣の部屋に置いておいたのに……
「おい、シェン……」
声をかけるが起きる気配がない。
否、こいつ……起きてやがる。その証拠に尻尾はぶんぶんと振られているではないか。
「むにゃむにゃ……お目覚めの【きす】があれば起きるのじゃ……」
いやいや、ワザとらしいのもほどがある。
ワザとだ。絶対ワザとだ。
その証拠にこれ見よがしに身体を擦り付けてきているし、Tシャツの大きな襟元からチラチラと見えるピンクの野イチゴなんかも目の毒だ。
「あーあ、早く起きないと朝ごはんが食べられなくなりそうだなな」
ピタッとシェンの動きが止まった。
「今日の朝ご飯は焼き魚なんだけどなぁ」
不自然なほどにシェンの束縛が解かれる。
シェンが単純な奴で助かった。以前、鍵をかけていたのにあーちゃん先輩が部屋に侵入しベッドにもぐりこんでいる事件があった。オレが目覚めた時には半裸のあーちゃん先輩が寝ぼけてオレの服を脱がしかかっていたのだった。
正直あれが寝ぼけての行動なのかどうだったのか――今はそのことを確かめるのがちょっと怖い。
オレは身を起こしてシェンをそのままに部屋を出る。
「朝食ができたら起こしに来る」
小さくシェンの耳が動くのが分かった。
◆ ◆ ◆ ◆
朝食が出来上がりシェンに声を掛けに行くと彼女はオレのベッドの中で気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てていた。
いわゆる二度寝というやつだ。
「おい、起きろ」
「眠いのじゃ、あと半刻……」
日を追うごとにこいつの自堕落さが目立つようになってきたいないか?
「今日は一緒に出掛けるんだろ」
オレの一言にシェンはぱっちりと目を開ける。
「そうじゃった。今日は【でーと】の日じゃったのう!」
からくり人形のようにぴょんとベッドの上で食率になるシェン。
彼女はそのまま部屋を出るとすたすたとリビングへと向かう。
きっちり席に着いてオレを急かした。
「お主様早くごはんにするのじゃ」
解せぬ――なんでオレが遅いみたいになっているんだ。
まあいい。とにかく早めに出発しなければ。
オレは時計を見ながら早々に朝食を済ませることにした。
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