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第一章「勇者=男 私=女」
第012話「魔王 ②」
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スーファと私はしばらく無言のまま食事を続ける。
あーなんで抱きついたりしたんだろ。
考えてみれば見た目はともかく中身は男なのだ。
そして、私は中身はともかく見た目は男なのだ。
「ちっ、イチャつきやがって」
「スーファ様に抱きつくなんてあの男……!」
「あら、あの可愛いボウヤなかなかやるじゃない」
色々な声が周囲から聞こえる。
しまった。スーファは有名人だった。美少女勇者に抱きつく美少年(私)……下手をすればスキャンダルだ。
「もう少し節度を持って接しよう……私」
「ん? なんか言ったか?」
「いいえ、何でもないです」
思わず口に出していたらしい。
「まあ、魔王もそんなに悪い奴じゃないんだから別に倒さなくてもいいんじゃないか?」
スーファの言い方にちょっと違和感を覚えた。
まるで知り合いであるかのような言い方。
もしかして、スーファは魔王と知り合いなんじゃないだろうか?
そんな考えが頭をよぎったがすぐにその考えを振り払う。
そんな馬鹿なことが起こりうるはずがない。
人類を滅ぼそうとする魔王に対して、まさか勇者に選ばれる人物が魔王と仲良しだなんてことはありえなかった。
「今日は色々あったし……早めに寝るようにしよう」
「うん」
なんだかいっぱい考えたような気がする。
私は何も知らない。
この世界のことも、スーファのことも。
魔王は悪者かもしれない――でも、もしかしたら――違う見方をしたならば、世界は違って見えるのかな。
そんなことを思いながら、私たちは宿へと帰り走行に眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
次の日の朝は早めに目が覚めた。
「う~ん。おはよう」
「おはようございます……って、なんて格好してるんですか!」
私は目を見開く。
「ん? ああ、これね。昨晩寝苦しかったから……」
スーファはぼりぼりと頭を掻きながらえへへと寝ぼけ眼で答えた。
部屋は二人で一部屋を借りている。お金を持っていない私はスーファの財布に頼るしかないわけで、宿代もスーファ持ちなのだから相部屋でも文句は言えない。言えないのだが――
スーファは裸だった。いや、ズボンははいている。しかし、上半身は何も着ていなかった。
トップレス。
朝日に照らされて金色の髪のスーファは天使のようだった。いや、旗をもって廃墟でも走り回れば立派な絵になるだろうと言わんばかりの見事な胸――悔しくなんかない。断じて!
でも、なんでだろう。彼女の裸を見て胸がドキドキしてしまっている。それにこの下半身に感じる力強さは……!?
「見られても減るもんじゃないし」
それは持っている人だからこそ言えるのです。持たざる者は言うことができないのです。
「へええ、でも迷惑なんで服着てくださいね」
私はズイととスーファに顔を近づけて警告する。
「でも、重いし……」
重い? 何が?
「分かりましたね?」
「は、はい……」
全くこの男は……
五年もずっとこんな感じだったのだろうか。
周囲に注意する人はいなかったのだろうか。
――私がしっかりしないと!
この男(こ)を立派なレディにする!
私はひそかに決意するのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
【トップレス】
上半身裸の意。平松愛理の「マイセレナーデ」の歌詞の中にも「あこがれじゃらじゃら ネックレスみたいにいつだってすれすれ トップレスな恋」というのがあるが、そんなの関係ねぇ。
【旗でも持って廃墟の中でも走り回れば】
ウジェーヌ・ドラクロワによって描かれた絵画「民衆を導き自由の女神」上半身裸――自由を表しているということだが果たして……
あーなんで抱きついたりしたんだろ。
考えてみれば見た目はともかく中身は男なのだ。
そして、私は中身はともかく見た目は男なのだ。
「ちっ、イチャつきやがって」
「スーファ様に抱きつくなんてあの男……!」
「あら、あの可愛いボウヤなかなかやるじゃない」
色々な声が周囲から聞こえる。
しまった。スーファは有名人だった。美少女勇者に抱きつく美少年(私)……下手をすればスキャンダルだ。
「もう少し節度を持って接しよう……私」
「ん? なんか言ったか?」
「いいえ、何でもないです」
思わず口に出していたらしい。
「まあ、魔王もそんなに悪い奴じゃないんだから別に倒さなくてもいいんじゃないか?」
スーファの言い方にちょっと違和感を覚えた。
まるで知り合いであるかのような言い方。
もしかして、スーファは魔王と知り合いなんじゃないだろうか?
そんな考えが頭をよぎったがすぐにその考えを振り払う。
そんな馬鹿なことが起こりうるはずがない。
人類を滅ぼそうとする魔王に対して、まさか勇者に選ばれる人物が魔王と仲良しだなんてことはありえなかった。
「今日は色々あったし……早めに寝るようにしよう」
「うん」
なんだかいっぱい考えたような気がする。
私は何も知らない。
この世界のことも、スーファのことも。
魔王は悪者かもしれない――でも、もしかしたら――違う見方をしたならば、世界は違って見えるのかな。
そんなことを思いながら、私たちは宿へと帰り走行に眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
次の日の朝は早めに目が覚めた。
「う~ん。おはよう」
「おはようございます……って、なんて格好してるんですか!」
私は目を見開く。
「ん? ああ、これね。昨晩寝苦しかったから……」
スーファはぼりぼりと頭を掻きながらえへへと寝ぼけ眼で答えた。
部屋は二人で一部屋を借りている。お金を持っていない私はスーファの財布に頼るしかないわけで、宿代もスーファ持ちなのだから相部屋でも文句は言えない。言えないのだが――
スーファは裸だった。いや、ズボンははいている。しかし、上半身は何も着ていなかった。
トップレス。
朝日に照らされて金色の髪のスーファは天使のようだった。いや、旗をもって廃墟でも走り回れば立派な絵になるだろうと言わんばかりの見事な胸――悔しくなんかない。断じて!
でも、なんでだろう。彼女の裸を見て胸がドキドキしてしまっている。それにこの下半身に感じる力強さは……!?
「見られても減るもんじゃないし」
それは持っている人だからこそ言えるのです。持たざる者は言うことができないのです。
「へええ、でも迷惑なんで服着てくださいね」
私はズイととスーファに顔を近づけて警告する。
「でも、重いし……」
重い? 何が?
「分かりましたね?」
「は、はい……」
全くこの男は……
五年もずっとこんな感じだったのだろうか。
周囲に注意する人はいなかったのだろうか。
――私がしっかりしないと!
この男(こ)を立派なレディにする!
私はひそかに決意するのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
【トップレス】
上半身裸の意。平松愛理の「マイセレナーデ」の歌詞の中にも「あこがれじゃらじゃら ネックレスみたいにいつだってすれすれ トップレスな恋」というのがあるが、そんなの関係ねぇ。
【旗でも持って廃墟の中でも走り回れば】
ウジェーヌ・ドラクロワによって描かれた絵画「民衆を導き自由の女神」上半身裸――自由を表しているということだが果たして……
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