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第四章「カルネアデス編」

 第94.5話  044メザイヤ編「黒き殺戮者 ①」

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 ヨルダと別れてからオレは騎士団の詰め所に戻ることにした。
 何の連絡も入れず一晩帰らなかったのだ。ノルンやリベラ、ミネルバが心配しているかもしれなかった。

「ノゾミお兄ちゃん!」

 騎士団の詰め所に到着する前に扉の前で待ち構えていたノルンがオレの姿を見るなり飛び込んでくる。

「もう、心配したんだからね!」

 涙目になりながらノルンがまくしたてる。

「心配かけてすまなかったな」

 ノルンの頭を撫でながら振り向くとちょうどミネルバがこちらへと駆けつけてくるところだった。

「ノゾミ、ちょうどよかった。昨晩は帰ってこなかったから心配していたんだぞ!」

 怒ったミネルバもまた美しい。

「おい、聞いているのか?」

「心配かけてすまなかったな」

 素直に謝ると「いや、お前のことが心配だったからつい……」とごにょごにょし出す。

「まあ、無事ならそれでいい」

 ミネルバはオレの手を掴んだ。

「ちょっと応接室に来てくれ」

 また大事な話があるというのだろうか。

 ◆ ◆ ◆ ◆

 応接室に入るとすぐに扉に鍵を掛けられ、遮音の魔法がかけられる。
 事は急を要し、また重要なことであるら仕しかった。

「ノゾミ殿には悪いが……計画の見直しをしなければならなくなった」

 アマンダ団長は開口一番暗い表情でそう言い放った。

「いったい何があったんです?」

 いつもは強気なアマンダ団長にしては珍しい。
 ダンベル副団長も苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「ヤツだ……」

 声を震わせてダンベル副団長。

「【黒き殺戮者】の目撃情報があったのです!」

 ミネルバが叫ぶ。

「ほお」

 けったいな二つ名だな。もしかして殺し屋か?

「ヤツは昨日武闘大会の受付近くにいたらしいのだ」

「ほおお」

 下手をすればオレはそこに鉢合わせしたことになる。そんなヤバイ奴なら襲撃を受けていた可能性もあった。ノルンやリベラと一緒じゃなくてよかった。そんなヤバそうな襲撃者なら襲撃の際に守り切れないかもしれない。

「その後、奴らしき姿がスラム街で目撃されている」

「ほおおお」

「奴は歩く災害! 現にスラム街では多くの建物が被害にあっているのだ」

「ほおおおお」

 なんか身に覚えが――いや、気のせいだ。気のせいに違いない。【黒き殺戮者】【歩く災害】そんな中二病みたいな二つ名だったのか。

「一応聞くけど、そいつの名前って……」

「そヤツの名はヨルダ。黒竜族の女戦士ヨルダ!」

 そうか。あいつってそんな二つ名だったんだ。いいなぁ二つ名。

「ヨルダの名はノゾミ殿もご存じだったようだな……」

「さらに恐ろしいのは、その兄ヤムダ――噂ではバージル領内で冒険者に倒されたと聞いている」

「できれば、そのヤムダを倒したという冒険者と連絡がつけばいいのだが……」

 ええっと、ここにいますが何か?
 ダンベル副団長がすがるような目でオレを見る。

「ノゾミ殿はその冒険者とお知り合いではございませんか?」
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