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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 028メザイヤ編「ミネルバ補佐官 ③」
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騎士団の詰所に着くと早速応接室に呼び出された。
「まずは昨日の襲撃については、やはり――といったところか」
開口一番、予想通りという言葉。
敵の動きは速い。
はっきり言ってオレが想像していた以上の動きの早さだった。
それに関してはオレの考えが甘かったとしか言いようがない。
もし、騎士団の協力を断り独断で行動していたのなら、大変なことになっていた可能性もあった。
「そのことについてはノルンとリベラを保護して下さりありがとうございました」
「なに、市民を守るのは騎士の務め、気にすることはない……とはいえ」
アマンダ団長はズイと身を乗り出す。
「ミネルバ補佐官を一晩独占するというのは……いささかやりすぎではないかな?」
「はうっ!」
オレの後ろでミネルバの小さな悲鳴が聞こえる。
「いやはや、しかし下っ端とはいえガルハン卿の部下を捕まえることができたのだ。多少の事には目をつむろうではないか」
「ええ、団長の言う通りです」
アマンダ団長とダンベル副団長は頷き合う。
「そうであろう。ミネルバ補佐官?」
「………は……はひ………っ」
振り返ることはできないが、おそらくミネルバは真っ赤になって震えていることだろう。
「捕まえた者たちは何か吐きましたか?」
このままではかわいそうなので話題を変えることにした。
ガルハン卿の部下とはいえ所詮は下っ端、有益な情報を得られるとは思っていなかった。しかし、ガルハン卿がかかわったという証拠はできるだけ多い方がいい。
「これといった情報は掴めなかったな」
アマンダ団長はため息をつく。今回の事件はガルハン卿が動き出した証拠だ。しかし、相手はその裏をかいくぐり今ものうのうと生きている。
「ガルハン卿はいつもどこにいるんだ?」
「ガルハン卿は屋敷だな。外出する時はいつも多くの護衛を引き連れている」
どいつもこいつもガラの悪い奴らだがなとアマンダ団長は皮肉気に笑う。これについては何とも言えない。類が類を呼ぶからなのか、そんな奴らしか集まらなかったからなのか。
「公の場に顔を出すことは?」
「そうだな……」
アマンダ団長は少しの間黙り込む。手元を、そして何かを思いついたかのようにオレの顔を見てにやりと笑った。
「そうだ……妙案がある」
「お断りします!」
立ち上がり立ち去ろうとするオレの後ろからアマンダ団長が抱きついてきた。
「まあ待ちたまえ」
熱い抱擁――ではない、これはがっしりとした捕獲だ。
本来女性に抱きつかれて感じるはずのドキドキを全く感じなかった。否、感じてはいた。しかし、これは嫌な予感のドキドキだ。
「君にとっても悪くない話だと思うぞ」
悪徳商法の常套句だ。まずは話の興味を引き、相手を自分のペースに巻き込む。
「まずは、話だけ聞いてもらえればいい」
そして、小さな切り口から傷口をどんどん大きくしていくのだ。
大丈夫。オレの心の壁――ATフィールドは健在だ。アマンダ団長の説得などオレには通じない。
そう、アマンダ団長の言葉など通じないのだ。
ぬはははは! オレには最終兵器マザーさんがいるのだよ。
呪うならオレを相手にしたことを呪うがいい!
困った時のドラ●もん。マザーさん。
(………………。)
あれ、返事がない。
マザーさん?
マザーさ――ん!
(報告。おかけになった電話番号は現在使われておりません。もう一度おかけ直しになるか――)
うそん。
まさかの通信障害!? って、そんなはずあるかい!
ちょ、ま、まじですか。
アマンダ団長がオレをソファーへと座らせる。
がっちりと手を掴んでオレの目を見つめる。
――う、動けない!
「大丈夫だ。痛くない痛くない」
何が? 何が痛くないの?何させる気なの?
「そうだ。もし私の言うことを聞いてくれたら――ミネルバ補佐官をおまけにつけようではないか」
「――なっ!?」
ミネルバが声を上げた。ちょっと嬉しそうな顔。
「なっ、悪い話じゃないから」
アマンダ団長の甘い声がオレの耳に聞こえてきた。
「まずは昨日の襲撃については、やはり――といったところか」
開口一番、予想通りという言葉。
敵の動きは速い。
はっきり言ってオレが想像していた以上の動きの早さだった。
それに関してはオレの考えが甘かったとしか言いようがない。
もし、騎士団の協力を断り独断で行動していたのなら、大変なことになっていた可能性もあった。
「そのことについてはノルンとリベラを保護して下さりありがとうございました」
「なに、市民を守るのは騎士の務め、気にすることはない……とはいえ」
アマンダ団長はズイと身を乗り出す。
「ミネルバ補佐官を一晩独占するというのは……いささかやりすぎではないかな?」
「はうっ!」
オレの後ろでミネルバの小さな悲鳴が聞こえる。
「いやはや、しかし下っ端とはいえガルハン卿の部下を捕まえることができたのだ。多少の事には目をつむろうではないか」
「ええ、団長の言う通りです」
アマンダ団長とダンベル副団長は頷き合う。
「そうであろう。ミネルバ補佐官?」
「………は……はひ………っ」
振り返ることはできないが、おそらくミネルバは真っ赤になって震えていることだろう。
「捕まえた者たちは何か吐きましたか?」
このままではかわいそうなので話題を変えることにした。
ガルハン卿の部下とはいえ所詮は下っ端、有益な情報を得られるとは思っていなかった。しかし、ガルハン卿がかかわったという証拠はできるだけ多い方がいい。
「これといった情報は掴めなかったな」
アマンダ団長はため息をつく。今回の事件はガルハン卿が動き出した証拠だ。しかし、相手はその裏をかいくぐり今ものうのうと生きている。
「ガルハン卿はいつもどこにいるんだ?」
「ガルハン卿は屋敷だな。外出する時はいつも多くの護衛を引き連れている」
どいつもこいつもガラの悪い奴らだがなとアマンダ団長は皮肉気に笑う。これについては何とも言えない。類が類を呼ぶからなのか、そんな奴らしか集まらなかったからなのか。
「公の場に顔を出すことは?」
「そうだな……」
アマンダ団長は少しの間黙り込む。手元を、そして何かを思いついたかのようにオレの顔を見てにやりと笑った。
「そうだ……妙案がある」
「お断りします!」
立ち上がり立ち去ろうとするオレの後ろからアマンダ団長が抱きついてきた。
「まあ待ちたまえ」
熱い抱擁――ではない、これはがっしりとした捕獲だ。
本来女性に抱きつかれて感じるはずのドキドキを全く感じなかった。否、感じてはいた。しかし、これは嫌な予感のドキドキだ。
「君にとっても悪くない話だと思うぞ」
悪徳商法の常套句だ。まずは話の興味を引き、相手を自分のペースに巻き込む。
「まずは、話だけ聞いてもらえればいい」
そして、小さな切り口から傷口をどんどん大きくしていくのだ。
大丈夫。オレの心の壁――ATフィールドは健在だ。アマンダ団長の説得などオレには通じない。
そう、アマンダ団長の言葉など通じないのだ。
ぬはははは! オレには最終兵器マザーさんがいるのだよ。
呪うならオレを相手にしたことを呪うがいい!
困った時のドラ●もん。マザーさん。
(………………。)
あれ、返事がない。
マザーさん?
マザーさ――ん!
(報告。おかけになった電話番号は現在使われておりません。もう一度おかけ直しになるか――)
うそん。
まさかの通信障害!? って、そんなはずあるかい!
ちょ、ま、まじですか。
アマンダ団長がオレをソファーへと座らせる。
がっちりと手を掴んでオレの目を見つめる。
――う、動けない!
「大丈夫だ。痛くない痛くない」
何が? 何が痛くないの?何させる気なの?
「そうだ。もし私の言うことを聞いてくれたら――ミネルバ補佐官をおまけにつけようではないか」
「――なっ!?」
ミネルバが声を上げた。ちょっと嬉しそうな顔。
「なっ、悪い話じゃないから」
アマンダ団長の甘い声がオレの耳に聞こえてきた。
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