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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 008メザイヤ編「聖騎士団 ③」
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――何なんだいったい!
いきなり模擬戦だと言われて戦闘してみれば、今度は剣を見せろだの騎士団に入らないかだの色々と言ってくる。
目立つな。
システィーナとの約束はいきなりご破算となりました。
いつもの事かも知れないけど、オレって約束を守れない男なの?と疑いたくなる。
何しろ大切な案件になると必ず邪魔が入るというか、下手をすれ続行不可能なくらいに横やりが入るのだ。
――オレは悪くない!
悪くない……はずだ。うっかり盗賊に出くわしてしまったのも、それを撃退したのも不可抗力だ。その結果が今のようになってしまったきっかけでなあるが、オレが自発的に起こしたことではないことだけはしっかりとさせておかなければならない。
何が「私と契約して騎士団に入りな」だ。オレは別件でここにきているんだ。騎士団なんてそんなものに入るつもりなど毛頭ない。
「そうか……」
オレの答えを聞いて、アマンダ団長はしばらく考え込んでいた。
「まあ、よかろう。もし気が変わったならいつでも来るがいい」
お前ならいつでも大歓迎だ。とアマンダ団長は言ってくれたが、何が悲しくて男ばっかりの騎士団に入らなきゃならんのだ。そんなことするくらいならミーシャたちと楽しく冒険者として暮らした方がよっぽどいい。
「オレには果たさなければならない崇高な使命があるんだ」
「な、なんだと……まさか……そうか、そういうことか……なるほど……」
クツクク……と意味深な笑みのアマンダ団長。
いや、オレ何も言ってませんけど。
オレを置き去りにしてアマンダ団長はなんだか一人で盛り上がっているみたいだった。
――もう勝手にしてくれ……
こういったタイプは一度信じてしまうと壁にぶち当たっても軌道修正しない。壁を破壊するまで挑み続けるのだ。
オレは説明をあきらめその場を後にする。とにかく疑いは晴れたのだ。これ以上ここにいる必要はない。
「オレは宿に戻りたいんだが……」
もちろん嘘だ。この街に来る前に衛兵に出会ってしまった。故に宿を探す暇も何もなかったのだが。
「そうか、それはすまないことをしたな」
アマンダ団長はあっさりと引き下がった。その姿を見、ダンベル他騎士たちも名残惜しそうに剣をオレに返してくれた。
「ノゾミ殿、我々はいつでも貴殿をお待ちしておりますぞ!」
ダンベルが熱く握手を交わす。
潔い男だと思った。
常に一緒にいるのは嫌だが、たまになら付き合ってやらなくもない。
「ああ、また来る」
オレはそう言って騎士の詰め所を後にした。
◆ ◆ ◆ ◆
「ダンベル副団長、今の男どう思う?」
ノゾミが立ち去った後、アマンダ団長がポツリと呟いた。
「死んだ魚のような目をしておりますが……なかなかどうして、実力はかなりのものだと」
ダンベル副団長の言葉にアマンダ団長も「そうだな」と頷いた。たとえ剣がなくとも騎士団全員で――アマンダ団長を含めて――襲い掛かったとしても勝てるビジョンが思い浮かばない。
「他の支部に連絡だ。至急あの男についての調査を行うように……それと……」
アマンダ団長は言葉を切る。
「私を含めて……特訓のやり直しだ」
「い、今からですか?」
再確認するダンベル副団長にアマンダ団長はぞっとするほど妖艶な笑みを浮かべる。
「もちろんだ。安心しろ今夜は寝かせんぞ!」
騎士団全員から悲鳴が上がったのは言うまでもなかった。
いきなり模擬戦だと言われて戦闘してみれば、今度は剣を見せろだの騎士団に入らないかだの色々と言ってくる。
目立つな。
システィーナとの約束はいきなりご破算となりました。
いつもの事かも知れないけど、オレって約束を守れない男なの?と疑いたくなる。
何しろ大切な案件になると必ず邪魔が入るというか、下手をすれ続行不可能なくらいに横やりが入るのだ。
――オレは悪くない!
悪くない……はずだ。うっかり盗賊に出くわしてしまったのも、それを撃退したのも不可抗力だ。その結果が今のようになってしまったきっかけでなあるが、オレが自発的に起こしたことではないことだけはしっかりとさせておかなければならない。
何が「私と契約して騎士団に入りな」だ。オレは別件でここにきているんだ。騎士団なんてそんなものに入るつもりなど毛頭ない。
「そうか……」
オレの答えを聞いて、アマンダ団長はしばらく考え込んでいた。
「まあ、よかろう。もし気が変わったならいつでも来るがいい」
お前ならいつでも大歓迎だ。とアマンダ団長は言ってくれたが、何が悲しくて男ばっかりの騎士団に入らなきゃならんのだ。そんなことするくらいならミーシャたちと楽しく冒険者として暮らした方がよっぽどいい。
「オレには果たさなければならない崇高な使命があるんだ」
「な、なんだと……まさか……そうか、そういうことか……なるほど……」
クツクク……と意味深な笑みのアマンダ団長。
いや、オレ何も言ってませんけど。
オレを置き去りにしてアマンダ団長はなんだか一人で盛り上がっているみたいだった。
――もう勝手にしてくれ……
こういったタイプは一度信じてしまうと壁にぶち当たっても軌道修正しない。壁を破壊するまで挑み続けるのだ。
オレは説明をあきらめその場を後にする。とにかく疑いは晴れたのだ。これ以上ここにいる必要はない。
「オレは宿に戻りたいんだが……」
もちろん嘘だ。この街に来る前に衛兵に出会ってしまった。故に宿を探す暇も何もなかったのだが。
「そうか、それはすまないことをしたな」
アマンダ団長はあっさりと引き下がった。その姿を見、ダンベル他騎士たちも名残惜しそうに剣をオレに返してくれた。
「ノゾミ殿、我々はいつでも貴殿をお待ちしておりますぞ!」
ダンベルが熱く握手を交わす。
潔い男だと思った。
常に一緒にいるのは嫌だが、たまになら付き合ってやらなくもない。
「ああ、また来る」
オレはそう言って騎士の詰め所を後にした。
◆ ◆ ◆ ◆
「ダンベル副団長、今の男どう思う?」
ノゾミが立ち去った後、アマンダ団長がポツリと呟いた。
「死んだ魚のような目をしておりますが……なかなかどうして、実力はかなりのものだと」
ダンベル副団長の言葉にアマンダ団長も「そうだな」と頷いた。たとえ剣がなくとも騎士団全員で――アマンダ団長を含めて――襲い掛かったとしても勝てるビジョンが思い浮かばない。
「他の支部に連絡だ。至急あの男についての調査を行うように……それと……」
アマンダ団長は言葉を切る。
「私を含めて……特訓のやり直しだ」
「い、今からですか?」
再確認するダンベル副団長にアマンダ団長はぞっとするほど妖艶な笑みを浮かべる。
「もちろんだ。安心しろ今夜は寝かせんぞ!」
騎士団全員から悲鳴が上がったのは言うまでもなかった。
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