323 / 406
第四章「カルネアデス編」
第228.5話 050「if-story 美琴 ②」
しおりを挟む
シャワーの音が遠くから聞こえる。
オレがシャワーを浴び終わると入れ替わるように美琴がシャワーを浴びた。
オレは何も言わない。
美琴も何も言わない。
二人とも無言のまま――やけに熱っぽい視線だけ交わして――美琴がサワーを浴びている間、オレは居間でソファに座ってテレビを観る。
番組の内容なんて全く頭に入ってこなかった。
何を観ても頭に入ってこないし、目にも映っていない。
ただ、心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえていた。
カチャリ。
ドアが開く。濡れた髪を拭きながら美琴が姿を現した。
Tシャツに短パンというラフな格好だ。
しかし、その恰好が余計に煽情的な雰囲気を醸し出している。
彼女はゆっくりとした動作で明かりを消すとオレの隣に腰を下ろす。
ぴったりと身を寄せてきた。
ふわりと石鹸とシャンプーの香り。
それだけで、オレは口内がカラカラになっているのを感じる。
美琴の手がオレの手に触れる。
それだけで心臓の鼓動が高鳴る。
――やばい。何も考えられない。
心臓は高鳴ったまま、呼吸は浅く早い。
「ねえ、望……」
美琴の声がどこか遠くで聞こえた気がした。
「……ねえ」
「は、はい」
ギギギと首を美琴へと向ける。美琴の顔がすぐ目の前にあった。
いつもなら軽口をたたいてくる美琴が今はやけに静かだ。
彼女の目はじっとオレを見つめている。
彼女の顔は上気し瞳も心なしか潤んでいるように見える。
「ア、アタシのことどう思っているの?」
どストレートの質問が来た。
「どどどどど、どうって?」
我ながら挙動不審だ。
落ち着けオレ。
そう、彼女は友達だ。
何を遠慮することがある。
しばらく沈黙が続いた。
「もう。好きかだどうか聞いてるのよ!」
ちょっと拗ねたように美琴。
――か、可愛い。
学校でいつも見慣れている彼女と今の彼女はまるで別人だった。濡れた髪、石鹸の香り――それだけでオレの心臓が高鳴る。
心臓は爆発寸前。
ぐるぐると様々なことが頭の中をめぐるが、その中で一つだけ辞すかな部分があった。
オレの芯なる部分。そこだけは冷静に美琴のことを考えていた。
ああ、とオレは気づく。
――オレはこいつのことが好きなんだ。
そのことが、すんなりとオレの中に入ってくる。
「ねえ。アタシの事好き?」
美琴がオレの手を握った。
オレは美琴を見つめる。
オレは美琴の手を握り返した。
「す、好きだ」
情けないほどにオレの声は上ずっていた。
オレがシャワーを浴び終わると入れ替わるように美琴がシャワーを浴びた。
オレは何も言わない。
美琴も何も言わない。
二人とも無言のまま――やけに熱っぽい視線だけ交わして――美琴がサワーを浴びている間、オレは居間でソファに座ってテレビを観る。
番組の内容なんて全く頭に入ってこなかった。
何を観ても頭に入ってこないし、目にも映っていない。
ただ、心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえていた。
カチャリ。
ドアが開く。濡れた髪を拭きながら美琴が姿を現した。
Tシャツに短パンというラフな格好だ。
しかし、その恰好が余計に煽情的な雰囲気を醸し出している。
彼女はゆっくりとした動作で明かりを消すとオレの隣に腰を下ろす。
ぴったりと身を寄せてきた。
ふわりと石鹸とシャンプーの香り。
それだけで、オレは口内がカラカラになっているのを感じる。
美琴の手がオレの手に触れる。
それだけで心臓の鼓動が高鳴る。
――やばい。何も考えられない。
心臓は高鳴ったまま、呼吸は浅く早い。
「ねえ、望……」
美琴の声がどこか遠くで聞こえた気がした。
「……ねえ」
「は、はい」
ギギギと首を美琴へと向ける。美琴の顔がすぐ目の前にあった。
いつもなら軽口をたたいてくる美琴が今はやけに静かだ。
彼女の目はじっとオレを見つめている。
彼女の顔は上気し瞳も心なしか潤んでいるように見える。
「ア、アタシのことどう思っているの?」
どストレートの質問が来た。
「どどどどど、どうって?」
我ながら挙動不審だ。
落ち着けオレ。
そう、彼女は友達だ。
何を遠慮することがある。
しばらく沈黙が続いた。
「もう。好きかだどうか聞いてるのよ!」
ちょっと拗ねたように美琴。
――か、可愛い。
学校でいつも見慣れている彼女と今の彼女はまるで別人だった。濡れた髪、石鹸の香り――それだけでオレの心臓が高鳴る。
心臓は爆発寸前。
ぐるぐると様々なことが頭の中をめぐるが、その中で一つだけ辞すかな部分があった。
オレの芯なる部分。そこだけは冷静に美琴のことを考えていた。
ああ、とオレは気づく。
――オレはこいつのことが好きなんだ。
そのことが、すんなりとオレの中に入ってくる。
「ねえ。アタシの事好き?」
美琴がオレの手を握った。
オレは美琴を見つめる。
オレは美琴の手を握り返した。
「す、好きだ」
情けないほどにオレの声は上ずっていた。
0
お気に入りに追加
507
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる