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第四章「カルネアデス編」
第228.5話 048「if-story 崩壊した世界 ⑦」
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「十人以上の人間が暮らしていた?」
設備的にはそれだけのキャパがあることはオレにもわかる。しかし、つい最近まで住んでいた形跡があるというのは驚きだった。
タニアの言葉に驚きを感じつつも納得する部分もあった。
どうしても拭いきれない違和感――それがオレの中でずっとくすぶり続けていたからだ。
「それに、つい最近には若い女の子たちが住んだ形跡があるんだ」
「何人くらい?」
「うーん。多分だけど五人くらいじゃないかな」
それは……思ったよりも多い。
いったいこの屋敷でどんなことが起こったというのだろうか。
「ボクの推理が正しければ……一週間ほど前には十人以上の人間……おそらくは成人した男性がいたはずなんだ」
「そんなことが分かるのか?」
「お酒とタバコ」
タニアはソファと台所、そして庭を眺めながら呟いた。
少なくともタバコを吸う人間がいたことはな違いない。
タニアが屋敷を探索した際に、離れにある小屋に灰皿とタバコの吸い殻を発見したということだった。
「タバコの銘柄だけでも七種類、吸い殻の数からして男が五人以上と女が二人以上」
おいおい、そんなことまで分かるのか。こいつどこかの名探偵か。
オレの知る名探偵は運よく事件現場に居合わせて、しかもそれが連続殺人だったりしたなら、容疑者が残り三人くらいまで粘って犯人を割り出さない――そんな運命を背負った人種だと思っていた。
しかし、こいつは違う。
名探偵タニア。こいつはただのハレンチ女子ではなかった。
「でも、不思議なことにその生活の痕跡が約一週間ほど前から消えているんだ」
「なんやてぇ!」
オレは突っ込み役に徹することにした。
「それは……」
タニアは壁掛け時計を指さす。デジタル式の日付まで表示できるタイプのものだ。
「もしかして、食品の賞味期限……ですか?」
「その通り!」
嬉しそうにタニアは手を叩いて喜んだ。
何かと忙しい女である。
「パンの賞味期限が切れていたんだよ」
そういえば、今朝方タニアがそんなことを言っていたな。
パンの賞味期限は製造から約一週間、商品の補充などがあればそれなりに賞味期限のあるものがあってもおかしくない。
「つまりは、ある一定の時期から食品の購入がなくなっていると……しかもその時期と同じくしてタバコの吸い殻も新しいものがない」
オレの言葉にタニアは頷いた。
「そして、ちょうど住人が消えた時期と入れ替わるようにして新しく女の子たちの生活した跡が見られるようになった。もちろんその中にはボクやノゾミン、多分だけどアメリンも含まれているはずだよ」
「そんな……バカな」
オレにはそんな記憶はない。もしそんなことができるのなら――世界をこんな風に変え、オレたちの記憶すら自由に変えてしまえるような存在がいたとするなら、そんな存在はもはや神ではないか。
「もしくは、ボクたちが全員、何かしらの力で「夢」を見ているかだね」
オレは押し黙った。これが夢であろうとなかろうとここまではっきりとした夢などあり得ない。
「もしタニアの言うことが本当だとして……」
オレはある疑問を口にした。
「その夢を見せている奴の目的はいったい何なんだ?」
次の瞬間。世界にノイズが走る。
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
暗転。
世界は再び静寂に包まれた。
◆ ◆ ◆ ◆
設備的にはそれだけのキャパがあることはオレにもわかる。しかし、つい最近まで住んでいた形跡があるというのは驚きだった。
タニアの言葉に驚きを感じつつも納得する部分もあった。
どうしても拭いきれない違和感――それがオレの中でずっとくすぶり続けていたからだ。
「それに、つい最近には若い女の子たちが住んだ形跡があるんだ」
「何人くらい?」
「うーん。多分だけど五人くらいじゃないかな」
それは……思ったよりも多い。
いったいこの屋敷でどんなことが起こったというのだろうか。
「ボクの推理が正しければ……一週間ほど前には十人以上の人間……おそらくは成人した男性がいたはずなんだ」
「そんなことが分かるのか?」
「お酒とタバコ」
タニアはソファと台所、そして庭を眺めながら呟いた。
少なくともタバコを吸う人間がいたことはな違いない。
タニアが屋敷を探索した際に、離れにある小屋に灰皿とタバコの吸い殻を発見したということだった。
「タバコの銘柄だけでも七種類、吸い殻の数からして男が五人以上と女が二人以上」
おいおい、そんなことまで分かるのか。こいつどこかの名探偵か。
オレの知る名探偵は運よく事件現場に居合わせて、しかもそれが連続殺人だったりしたなら、容疑者が残り三人くらいまで粘って犯人を割り出さない――そんな運命を背負った人種だと思っていた。
しかし、こいつは違う。
名探偵タニア。こいつはただのハレンチ女子ではなかった。
「でも、不思議なことにその生活の痕跡が約一週間ほど前から消えているんだ」
「なんやてぇ!」
オレは突っ込み役に徹することにした。
「それは……」
タニアは壁掛け時計を指さす。デジタル式の日付まで表示できるタイプのものだ。
「もしかして、食品の賞味期限……ですか?」
「その通り!」
嬉しそうにタニアは手を叩いて喜んだ。
何かと忙しい女である。
「パンの賞味期限が切れていたんだよ」
そういえば、今朝方タニアがそんなことを言っていたな。
パンの賞味期限は製造から約一週間、商品の補充などがあればそれなりに賞味期限のあるものがあってもおかしくない。
「つまりは、ある一定の時期から食品の購入がなくなっていると……しかもその時期と同じくしてタバコの吸い殻も新しいものがない」
オレの言葉にタニアは頷いた。
「そして、ちょうど住人が消えた時期と入れ替わるようにして新しく女の子たちの生活した跡が見られるようになった。もちろんその中にはボクやノゾミン、多分だけどアメリンも含まれているはずだよ」
「そんな……バカな」
オレにはそんな記憶はない。もしそんなことができるのなら――世界をこんな風に変え、オレたちの記憶すら自由に変えてしまえるような存在がいたとするなら、そんな存在はもはや神ではないか。
「もしくは、ボクたちが全員、何かしらの力で「夢」を見ているかだね」
オレは押し黙った。これが夢であろうとなかろうとここまではっきりとした夢などあり得ない。
「もしタニアの言うことが本当だとして……」
オレはある疑問を口にした。
「その夢を見せている奴の目的はいったい何なんだ?」
次の瞬間。世界にノイズが走る。
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
ザ――――――――――――――――
暗転。
世界は再び静寂に包まれた。
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