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第四章「カルネアデス編」

 第228.5話 010「if-story システィーナ ①」

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 夏の日差しが照りつける。
 高校のグラウンド。
 今は夏休みだ。
 校庭では夏休みだというのに球児たちが練習に汗を流していた。

 ――あづい……!

 正門前――木陰とはいえ吹く風はぬるく、照り返しの日差しがほほを焼く。

「やあ、待たせたな」

 背後からかけられる涼し気な声音。

「遅いぞシスティーナ」

 オレは振り返りながら文句を言う。

「まあ、そう怒るな」

 そう言って彼女はスポーツ飲料のペットボトルを手渡してくれた。
 程よく冷えたペットボトルは手に握るだけで身体が涼しくなるから不思議だ。
 麦わら帽子に白いワンピース姿のシスティーナは見ているだけでこちらまで涼やかな気持ちになる。それは彼女の印象だろう。こんなに暑いのに汗一つ書いていないとか、さすがとしか言いようがない。
 オレはペットボトルを開けると一気に飲んだ。熱い身体が一気に冷めていく。
 ぷはぁーと飲み干してから息を吐く。

「どうだ。落ち着いたか?」

「ああ、ありがとう。助かった」

 一気に飲んだとはいえ中身はまだ残っている。

「飲むか?」

 汗をかいていないように見えるが彼女も厚いだろう。

「えっ、いいのか?」

 システィーナはちょっとびっくりした顔でオレを見る。もしかしてオレが飲んだペットボトルで飲むことに抵抗を感じているのかもしれなかった。悪いことをしたのかもしれない。今更ながら、新しいものを買って渡せばよかったのではないかと後悔する。

「あ、すまん。気が利かなかった。新しいものを買ってこようか?」

「そっちがいい!」

 システィーナがオレからペットボトルを奪い取った。
 今すぐ飲みたいほどに飲みたかったのか。それに気づかないとはオレは彼氏として失格だな。

 システィーナはしばらくペットボトルの飲み口の部分を見つめていたが意を決したように口に運ぶ。
 彼女の清楚なお口がペットボトルを口に含む姿にオレは思わずつばを飲み込んでしまった。なんというか……とても綺麗だと思ってしまったのだ。

「どうした?」

 システィーナの澄んだ瞳がオレを見つめる。

「いや、システィーナってすごく綺麗だなって思って」

 言葉にした途端に急に恥ずかしくなった。それはシスティーナも同じらしく耳まで真っ赤にしてしまっている。

「そ、そんなことより。今日は学校を案内してくれるんだろ」

 ああ、そうだった。システィーナにせがまれて今日はオレの母校を案内することになっているんだった。
 システィーナは金髪の美女だ。スタイルもいいし何より一つ一つの所作に清楚さが感じられる。

「しっかり私をエスコートしてくれよ」

 そう言って腕に抱きついてくる。ふんわりとしたっ胸の感覚に思わずどきりとしてしまった。

「お任せあれ、お嬢様」
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