267 / 406
第四章「カルネアデス編」
第221話「システィーナ」
しおりを挟む
「ふふふ。どうした?」
先ほどのミーシャの言葉の意味を考えながらボーっとしているとシスティーナが声をかけてきた。彼女の名はシスティーナ・アイスクラ。交易都市キリムの三大領主の一人、アイスクラ・マイスター卿の一人娘だ。
彼女と出会ったのはオレたちがミーシャたちに拾われて最初に訪れた猫人族の村だった。そこで洞窟で行方不明になっていた猫人族の娘を探しているときに出会ったのがきっかけだった。その時のことを思い出すと今でも申し訳なさでいっぱいになる。オレはこともあろうにシスティーナに対して無意識下で【フェロモン】の能力を使ってしまったのだ。清廉潔白眉目秀麗容姿端麗のこのお嬢様がまるでサキュバスが如く変異してしまったのは、ひとえにオレのせいなのだ。
「いや、色々と迷惑をかけて申し訳ないなと思ってな」
「そんなことか」
女聖騎士のシスティーナは優雅にオレの言葉を一笑にふした。
「民の声を聞き、それに応える――挫ける者があれば支え、泣く者があれば隣に寄り添う。決して助けるのではない。それは強者の務めだ。私は自分が弱いことを知っている。決して強者ではない」
システィーナがオレの瞳を覗き込んだ。彼女は決して強者ではない。弱い部分もあり強い部分もある一人の人間だ。
「困ったものがいれば助ける。そもそも私にその気がなければ助けない。助けようと思ったのは私のせいだ。そのことで何が起ころうと私のせいだ」
つまりは気にするなということか。
――なに、今日のシスティーナめっちゃ恰好いいんですけど。
「やべ、惚れちゃいそう」
「いくらでも惚れてかまわないぞ」
がっしりと両腕で抱きすくめられてしまった。
柔らかな胸の感触は最初だけだった。
ぐ、ぐるじい!
「おおっと、すなまい」
システィーナはすぐにオレを解放する。
「将来、我が夫になる男のためだ」
システィーナの目は真剣だ。ことあるごとにオレを旦那にしようとしているが果たしてどこまで本気なのだろうか。
聞けばきっと答えは決まっている。
信念は一本。
決して曲がらず、横道にそれたりズレたりしない。
それがシスティーナという女性だ。
「聖騎士の中にもなかなか見どころのある男もいないではなかったが」
システィーナは領主の娘。政略的にもお家柄的にも問題ない。逆にオレの方が問題だらけだ。
出自不明正体不明種族不明の謎だらけ。普通ならば成敗されるレベルだ。
「あなたと共にあり、色々なものを見、経験してきたつもりだ」
そうだな。洞窟の中、お風呂場、森の中、学園の教室、そして、体育館倉庫……数え上げればきりがない。
「こら、今変なこと考えていただろ?」
おおっと、考えが顔に出ていたか。
「バージル卿が認めた男だ。さすがというか底が知れないな」
うーん。褒められてる? 学園でもかなりやらかした感じがしていたが。
「諸々のことを含めて……私はあなたのことを愛しているのだ」
システィーナ――格好良すぎ!
先ほどのミーシャの言葉の意味を考えながらボーっとしているとシスティーナが声をかけてきた。彼女の名はシスティーナ・アイスクラ。交易都市キリムの三大領主の一人、アイスクラ・マイスター卿の一人娘だ。
彼女と出会ったのはオレたちがミーシャたちに拾われて最初に訪れた猫人族の村だった。そこで洞窟で行方不明になっていた猫人族の娘を探しているときに出会ったのがきっかけだった。その時のことを思い出すと今でも申し訳なさでいっぱいになる。オレはこともあろうにシスティーナに対して無意識下で【フェロモン】の能力を使ってしまったのだ。清廉潔白眉目秀麗容姿端麗のこのお嬢様がまるでサキュバスが如く変異してしまったのは、ひとえにオレのせいなのだ。
「いや、色々と迷惑をかけて申し訳ないなと思ってな」
「そんなことか」
女聖騎士のシスティーナは優雅にオレの言葉を一笑にふした。
「民の声を聞き、それに応える――挫ける者があれば支え、泣く者があれば隣に寄り添う。決して助けるのではない。それは強者の務めだ。私は自分が弱いことを知っている。決して強者ではない」
システィーナがオレの瞳を覗き込んだ。彼女は決して強者ではない。弱い部分もあり強い部分もある一人の人間だ。
「困ったものがいれば助ける。そもそも私にその気がなければ助けない。助けようと思ったのは私のせいだ。そのことで何が起ころうと私のせいだ」
つまりは気にするなということか。
――なに、今日のシスティーナめっちゃ恰好いいんですけど。
「やべ、惚れちゃいそう」
「いくらでも惚れてかまわないぞ」
がっしりと両腕で抱きすくめられてしまった。
柔らかな胸の感触は最初だけだった。
ぐ、ぐるじい!
「おおっと、すなまい」
システィーナはすぐにオレを解放する。
「将来、我が夫になる男のためだ」
システィーナの目は真剣だ。ことあるごとにオレを旦那にしようとしているが果たしてどこまで本気なのだろうか。
聞けばきっと答えは決まっている。
信念は一本。
決して曲がらず、横道にそれたりズレたりしない。
それがシスティーナという女性だ。
「聖騎士の中にもなかなか見どころのある男もいないではなかったが」
システィーナは領主の娘。政略的にもお家柄的にも問題ない。逆にオレの方が問題だらけだ。
出自不明正体不明種族不明の謎だらけ。普通ならば成敗されるレベルだ。
「あなたと共にあり、色々なものを見、経験してきたつもりだ」
そうだな。洞窟の中、お風呂場、森の中、学園の教室、そして、体育館倉庫……数え上げればきりがない。
「こら、今変なこと考えていただろ?」
おおっと、考えが顔に出ていたか。
「バージル卿が認めた男だ。さすがというか底が知れないな」
うーん。褒められてる? 学園でもかなりやらかした感じがしていたが。
「諸々のことを含めて……私はあなたのことを愛しているのだ」
システィーナ――格好良すぎ!
0
お気に入りに追加
507
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる