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第四章「カルネアデス編」
第220話「ミーシャ」
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「よお、食べてるか?」
「あっ、ノゾミ」
オレが近づくとミーシャは嬉しそうに隣の席を勧めてくれた。
「こうして炎を見ているとなんだか出会った頃を思い出しますね」
そうだ。カルネアデスから惑星の調査のために派遣されたオレたちを最初に発見したのがミーシャたち冒険者だった。その時は魔法使いのミーシャ、剣士のアラン、弓使いのオットーの三人組のパーティだった。
「あの時はまさか本当に【悪魔の苗床】から来たなんて考えもしなかったんだから」
そう言いながら、今じゃこうして【悪魔の苗床】の中にいるけどね。と笑った。
全くその通りだ。
最初は現地の言葉も分からず、しかも着る物すらない状態だった。あの時にミーシャたちに出会っていなければ今頃どうなっていたことか。下手をすれば野盗に襲われて奴隷にされていた可能性だってあったのだ。
冒険者としてのノウハウや生活の仕方などを教えてくれたのも彼女だった。
オレのハジメテを奪ったのも彼女だった。
「あの……以前言ったと思いますけど、私はノゾミがハジメテだったんですからね……」
「ほほう。奇遇だな。オレもミーシャがハジメテだったぞ」
改まって言われるとドキドキしてしまうのはなぜだろう。
「時々思うんです。ノゾミと出会っていなかったら今頃どうなっていたんだろう……って」
「案外、普通に冒険者として活躍していたかもな」
アランやオットーと冒険を続けていただろうか。しかしあの二人、聖騎士見習とかでしばらく別れたよな。今頃どうしているんだろう。
カルネアデス内の時間経過は魔法世界とズレている。戻った時にどれだけの時間が経過しているのか想像もできない。
「それか……いい相手を見つけて結婚していたりとか……」
そういうとミーシャはオレに抱きついてきた。
「私は一度、ノゾミに命を救われました」
ゴブリンに襲われた時――オレは命がけでミーシャを守った。いや、命がけなんて格好いいこと言っているが現実は違う。オレは打診し生き残る可能性があるからその選択をした――それだけのことだ。
「私は……姉を探すために冒険者になりました」
その話は以前ミーシャから聞いている。
「最初は、村を捨てた姉を探すために冒険者になったんです」
確か姉は冒険者に憧れて村を飛び出した――だったか。
「でも、冒険者を続けていたけど正直どうするか迷っていたんです」
冒険者は命がけの仕事だ。安全の保障などどこにもない。実力不足で死ねばそこまで――
「ノゾミに出会った時も……本当はキリムの街に着いたらアランたちと別れた後、一度村に帰ろうかと思っていたんです」
一度は諦めかけた冒険者の道。オレと出会いもう少しだけ――と伸ばしたつもりだった。
「……ノゾミに出会ってから色々な出会いがありましたね」
猫人族の村ではミャンやニャンに出会うことができた。そこで出会ったシスティーナは今では大切な仲間だ。
ミーシャの紹介で冒険者ギルドにも簡単に入ることができた。最初の依頼で行った孤児院のカルルとシャルカは元気にしているだろうか。
なんだかんだとバージル領にまでついてきた時にはさすがに驚いたが、その後の魔法学園でのことを考えればちょうどよかったのかもしれなかった。
魔法学園では学友として恋人として接してくれた。
彼女の支えがなければ有意義な学園生活なんて送れなかっただろう。
「もし元の世界に戻ったら、何がしたい?」
オレの問いかけにミーシャはウフフと笑う。
とても明るく嬉し気な笑み。
「そうですね。ノゾミと一緒に冒険もいいですけど」
オレの腕にしがみつく。
「私は街で【ちょこぱふぇ】を売りたいです!」
瞳をキラキラとさせながらミーシャは語りだした。
そんなにおいしかったのか。
原材料はチョコにバニラ……冷やすのは魔法で何とかなるか……チョコを再現できるかどうかがカギだな。それに砂糖……かなり高価なものだったと記憶している。
「そうだな。オレもできる限り協力する」
「そんなのじゃダメです!」
えっ? 気合が足りなかったか。
「一緒に【ちょこぱふぇ】屋さんをするんです!」
「一緒にって……ずーっと?」
「ずーっとです!」
真っ赤になりながら、瞳を涙で濡らしながら――腕にしがみついたままの――それは告白だった。
「あっ、ノゾミ」
オレが近づくとミーシャは嬉しそうに隣の席を勧めてくれた。
「こうして炎を見ているとなんだか出会った頃を思い出しますね」
そうだ。カルネアデスから惑星の調査のために派遣されたオレたちを最初に発見したのがミーシャたち冒険者だった。その時は魔法使いのミーシャ、剣士のアラン、弓使いのオットーの三人組のパーティだった。
「あの時はまさか本当に【悪魔の苗床】から来たなんて考えもしなかったんだから」
そう言いながら、今じゃこうして【悪魔の苗床】の中にいるけどね。と笑った。
全くその通りだ。
最初は現地の言葉も分からず、しかも着る物すらない状態だった。あの時にミーシャたちに出会っていなければ今頃どうなっていたことか。下手をすれば野盗に襲われて奴隷にされていた可能性だってあったのだ。
冒険者としてのノウハウや生活の仕方などを教えてくれたのも彼女だった。
オレのハジメテを奪ったのも彼女だった。
「あの……以前言ったと思いますけど、私はノゾミがハジメテだったんですからね……」
「ほほう。奇遇だな。オレもミーシャがハジメテだったぞ」
改まって言われるとドキドキしてしまうのはなぜだろう。
「時々思うんです。ノゾミと出会っていなかったら今頃どうなっていたんだろう……って」
「案外、普通に冒険者として活躍していたかもな」
アランやオットーと冒険を続けていただろうか。しかしあの二人、聖騎士見習とかでしばらく別れたよな。今頃どうしているんだろう。
カルネアデス内の時間経過は魔法世界とズレている。戻った時にどれだけの時間が経過しているのか想像もできない。
「それか……いい相手を見つけて結婚していたりとか……」
そういうとミーシャはオレに抱きついてきた。
「私は一度、ノゾミに命を救われました」
ゴブリンに襲われた時――オレは命がけでミーシャを守った。いや、命がけなんて格好いいこと言っているが現実は違う。オレは打診し生き残る可能性があるからその選択をした――それだけのことだ。
「私は……姉を探すために冒険者になりました」
その話は以前ミーシャから聞いている。
「最初は、村を捨てた姉を探すために冒険者になったんです」
確か姉は冒険者に憧れて村を飛び出した――だったか。
「でも、冒険者を続けていたけど正直どうするか迷っていたんです」
冒険者は命がけの仕事だ。安全の保障などどこにもない。実力不足で死ねばそこまで――
「ノゾミに出会った時も……本当はキリムの街に着いたらアランたちと別れた後、一度村に帰ろうかと思っていたんです」
一度は諦めかけた冒険者の道。オレと出会いもう少しだけ――と伸ばしたつもりだった。
「……ノゾミに出会ってから色々な出会いがありましたね」
猫人族の村ではミャンやニャンに出会うことができた。そこで出会ったシスティーナは今では大切な仲間だ。
ミーシャの紹介で冒険者ギルドにも簡単に入ることができた。最初の依頼で行った孤児院のカルルとシャルカは元気にしているだろうか。
なんだかんだとバージル領にまでついてきた時にはさすがに驚いたが、その後の魔法学園でのことを考えればちょうどよかったのかもしれなかった。
魔法学園では学友として恋人として接してくれた。
彼女の支えがなければ有意義な学園生活なんて送れなかっただろう。
「もし元の世界に戻ったら、何がしたい?」
オレの問いかけにミーシャはウフフと笑う。
とても明るく嬉し気な笑み。
「そうですね。ノゾミと一緒に冒険もいいですけど」
オレの腕にしがみつく。
「私は街で【ちょこぱふぇ】を売りたいです!」
瞳をキラキラとさせながらミーシャは語りだした。
そんなにおいしかったのか。
原材料はチョコにバニラ……冷やすのは魔法で何とかなるか……チョコを再現できるかどうかがカギだな。それに砂糖……かなり高価なものだったと記憶している。
「そうだな。オレもできる限り協力する」
「そんなのじゃダメです!」
えっ? 気合が足りなかったか。
「一緒に【ちょこぱふぇ】屋さんをするんです!」
「一緒にって……ずーっと?」
「ずーっとです!」
真っ赤になりながら、瞳を涙で濡らしながら――腕にしがみついたままの――それは告白だった。
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