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第四章「カルネアデス編」
第201話「アンナとミーシャ ④」
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ゴゴゴゴゴゴ!
轟音を立てて装甲車が街の中を爆走する。
「完全に気づかれちゃってるね」
まあ、これだけ目立っていれば当然だろう。むしろこれで目立たないはずはない。
「ノゾミン! あれ!」
今度は何だ。
オレはタニアの横に並ぶ。
そして、我が目を疑った。
「くそ! なんてこった!」
目の前には――とある一家がいた――長年国民に愛され続けてきた海産物一家。
貝類の名を冠したサザ●の名を持つ長女。
その弟で魚類の名を冠したカ●オの名を持つ小学男児。
その妹は海藻の名を冠したワ●メ。
そして、老齢に見えるが実は父と母だという二人の人物。
こいつらも危険度で言えば先ほどのネズミにも匹敵する。
正直面倒くさい。奴らとの戦闘などご免こうむりたい。
「回避だ! 奴らとも戦えん!」
ハンドルを切る。すると海産物一家はものすごい勢いでこちらに迫ってきた。
馬鹿な!
あの顔の大きさでは風の抵抗をもろに受けてうまく走れないはず。
だが、奴らはそんな物理的法則を無視してありえないスピードで迫ってくる。
そうだった。奴らは早い。そのことを失念していた。
家が弾けるほどの帰宅スピード。あの勢いで装甲車に体当たりでもされたらどうなるか分かったものじゃない。横転だけで済めば御の字だ。
「ノゾミ様、これを!」
アンナがオレに手榴弾をよこしてくれた。
なんつーもんを渡すんだ!
しかし、背に腹は代えられない。
オレは海産物一家との前にピンを抜いた手榴弾を放り投げた。避けるか立ち止まるか――と思われたが、なんと手榴弾を拾い上げる一つの影。
しまった!
オレはすぐに自分の愚かさに気づく。
その少年はにやりと笑った――かに見えた。
「いくよ。姉さん!」
しゃべれるだと!
なんてこった。これがアニメだったら声優でバレバレではないか。
いや、そんなどうでも……よくないが……言っている場合ではない。
そう、奴はカツ●は――野球少年なのだ!
カ●オは手榴弾を片手に大きく振りかぶるとそのまま手榴弾をこちらへと投球した。
「くっ! ファイアボルト!」
放った稲妻が手榴弾を貫き爆発が起こる。
衝撃が装甲車にも伝わってきた。
爆風でおこった煙を振り払って爆走のスピードを緩めない海産物一家。
これ以上長引かせるわけにはいかない。
あの海産物一家との戦闘は長引けば長引くほど――【著作権】で守られた敵に対してこちらは明らかに不利。
オレは意を決した。
「アンナ。力を貸してくれ!」
「ノゾミ様のためなら私……脱ぎます」
「脱がんでいい!」
今は……な。
オレはアンナに作戦を耳打ちする。
「……うまくいくでしょうか」
不安げなアンナにオレは「大丈夫だ」と頭を優しくなでた。
「うふふ。できる気がしてきました!」
うん。それでよろしい。
「タニアそこの角を右に曲がったらいったん停車だ!」
「それじゃ、追いつかれちゃうよ!」
「いいから!」
タニアの悲鳴をオレは無視する。
腕を伸ばす。腕に術式の紋章が浮かび上がる。昨晩アンナの指導の下、何とかここまでできるようになっていた。
――集中しろ!
今までの力は全力ではない。
――集中しろ!
腕に力を集中……同時に襲い掛かってくる強烈な脱力感。
「ノゾミ様。これでいいですか?」
アンナの手が添えられる。さすが白竜族の巫女、力の扱いがうまい。それだけで意識がクリアになり力が研ぎ澄まされた。
「行くぞ!」
「うん。いつでも出して下さい!」
うーん。誤解を招くからその言い方止めようね。
ふっと、心が軽くなる。そのことでさらに集中力が増した。
「「アースクエイク!!!」」
二人の声が重なる。
次の瞬間。
大地が割れた。
轟音を立てて装甲車が街の中を爆走する。
「完全に気づかれちゃってるね」
まあ、これだけ目立っていれば当然だろう。むしろこれで目立たないはずはない。
「ノゾミン! あれ!」
今度は何だ。
オレはタニアの横に並ぶ。
そして、我が目を疑った。
「くそ! なんてこった!」
目の前には――とある一家がいた――長年国民に愛され続けてきた海産物一家。
貝類の名を冠したサザ●の名を持つ長女。
その弟で魚類の名を冠したカ●オの名を持つ小学男児。
その妹は海藻の名を冠したワ●メ。
そして、老齢に見えるが実は父と母だという二人の人物。
こいつらも危険度で言えば先ほどのネズミにも匹敵する。
正直面倒くさい。奴らとの戦闘などご免こうむりたい。
「回避だ! 奴らとも戦えん!」
ハンドルを切る。すると海産物一家はものすごい勢いでこちらに迫ってきた。
馬鹿な!
あの顔の大きさでは風の抵抗をもろに受けてうまく走れないはず。
だが、奴らはそんな物理的法則を無視してありえないスピードで迫ってくる。
そうだった。奴らは早い。そのことを失念していた。
家が弾けるほどの帰宅スピード。あの勢いで装甲車に体当たりでもされたらどうなるか分かったものじゃない。横転だけで済めば御の字だ。
「ノゾミ様、これを!」
アンナがオレに手榴弾をよこしてくれた。
なんつーもんを渡すんだ!
しかし、背に腹は代えられない。
オレは海産物一家との前にピンを抜いた手榴弾を放り投げた。避けるか立ち止まるか――と思われたが、なんと手榴弾を拾い上げる一つの影。
しまった!
オレはすぐに自分の愚かさに気づく。
その少年はにやりと笑った――かに見えた。
「いくよ。姉さん!」
しゃべれるだと!
なんてこった。これがアニメだったら声優でバレバレではないか。
いや、そんなどうでも……よくないが……言っている場合ではない。
そう、奴はカツ●は――野球少年なのだ!
カ●オは手榴弾を片手に大きく振りかぶるとそのまま手榴弾をこちらへと投球した。
「くっ! ファイアボルト!」
放った稲妻が手榴弾を貫き爆発が起こる。
衝撃が装甲車にも伝わってきた。
爆風でおこった煙を振り払って爆走のスピードを緩めない海産物一家。
これ以上長引かせるわけにはいかない。
あの海産物一家との戦闘は長引けば長引くほど――【著作権】で守られた敵に対してこちらは明らかに不利。
オレは意を決した。
「アンナ。力を貸してくれ!」
「ノゾミ様のためなら私……脱ぎます」
「脱がんでいい!」
今は……な。
オレはアンナに作戦を耳打ちする。
「……うまくいくでしょうか」
不安げなアンナにオレは「大丈夫だ」と頭を優しくなでた。
「うふふ。できる気がしてきました!」
うん。それでよろしい。
「タニアそこの角を右に曲がったらいったん停車だ!」
「それじゃ、追いつかれちゃうよ!」
「いいから!」
タニアの悲鳴をオレは無視する。
腕を伸ばす。腕に術式の紋章が浮かび上がる。昨晩アンナの指導の下、何とかここまでできるようになっていた。
――集中しろ!
今までの力は全力ではない。
――集中しろ!
腕に力を集中……同時に襲い掛かってくる強烈な脱力感。
「ノゾミ様。これでいいですか?」
アンナの手が添えられる。さすが白竜族の巫女、力の扱いがうまい。それだけで意識がクリアになり力が研ぎ澄まされた。
「行くぞ!」
「うん。いつでも出して下さい!」
うーん。誤解を招くからその言い方止めようね。
ふっと、心が軽くなる。そのことでさらに集中力が増した。
「「アースクエイク!!!」」
二人の声が重なる。
次の瞬間。
大地が割れた。
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