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第四章「カルネアデス編」
第180話「タニア ③」
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「君は神への第一歩を踏み出した」
「ちょっと待て、それはどういうことだ?」
神への一歩? そんなものに踏み込んだ覚えはない。
「神様なんて簡単になれるもんじゃない」
神様に簡単になれるんだったら苦労はしない。この世には悩み事なんてなくなるだろう。
それにオレは神なんて器ではない。
「どうしてそうなったんだ?」
何がどうしてそうなった。
「さあね。残念ながらボクにもよくわからないんだ」
何! この不思議子ちゃんにも分からないことがあるだと。
しかし、魔法学園祭の時のタニアの暴走が偶然に引き起こされたとは考えにくかった。
「タニアの暴走も……ワザとなのか?」
「どうでしょう」
とぼけやがった。
タニアはおいしそうにジュースを飲み始める。
こいつ――!
大切な所ははぐらしてばかりで謎は深まるばかりだ。
「悪魔の苗床からの直接攻撃……セービル魔法学園も相当の被害を受けた――もっとも、人的被害は軽微だったみたいだけどね」
それでも多くの被害が出たことには変わりない。
全員の安否が心配だった。
「ボクがこの世界に来る前まではまだ混乱が続いていたみたいだよ」
「そうか……」
もっと知りたい気持ちもあったが、それは今度聞くとしよう。
「カルネアデスはノゾミンを排除しようとした……でも状況が変わった」
タニアがゆっくりと語りだす。
「排除対象が抵抗したため作戦を変更。排除ではなく保護・監視そして――」
「分析」
マヤの言葉にタニアが続ける。
「マザーにとっても今のこの状況はイレギュラーな状況みたいだね」
どこか面白そうに笑う。
「だから君たちの仲間もこの世界に呼んだんだ」
「そんなことができるのか?」
「あくまでも可能性の話ですが、パートナーとして【繋がり】があれば可能です」
マヤが補足してくれた。
つまりはいまだオレ達はマザーの監視下にあるというわけか。
「でも、今はその可能性は低いと思います」
「どういうことだ?」
「私たちが【元の記憶を取り戻した】したからです」
「カルネアデスのシステムも完璧ではありません。私たちは記憶を経変されこの世界に送られてきました。その状態であれば監視することができ分析を行えていたと思います」
「でも、記憶を取り戻したオレたちは監視という枷がなくなったと?」
「そういうことだと思います」
マヤはオレの言葉にうなずいた。
「でも、それは危険な状態でもあるんだ」
タニアはお代わりのジュースを持ってきながらオレの隣に座った。
「マザーの監視下を離れた個体がいるってことはこの世界に異物を含むってことなんだよ」
カルネアデスを一つの生命体だとすると今のオレたちはウイルスみたいなものか。
だとすると――
「先ほどの十六夜美琴の言葉を思い出して下さい」
マヤの言葉が終わるよりも早く。ふっと周囲に闇が訪れた。
「――なんだ?」
「はじまったみたいだね」
タニアが立ち上がる。どこかワクワクしているように見えるのオレの気のせいだろうか。
「これは異物を感知したマザーの自動的な反応です。人でいうと免疫反応でしょうか」
マヤが周囲を警戒しながら言う。レストランにはいつの間にか人けがなくなっていた。
驚くほどの静けさが漂っている。
「つまり?」
「この世界に入り込んだ異物である私たちをマザーが排除しようとしているんです」
「ちょっと待て、それはどういうことだ?」
神への一歩? そんなものに踏み込んだ覚えはない。
「神様なんて簡単になれるもんじゃない」
神様に簡単になれるんだったら苦労はしない。この世には悩み事なんてなくなるだろう。
それにオレは神なんて器ではない。
「どうしてそうなったんだ?」
何がどうしてそうなった。
「さあね。残念ながらボクにもよくわからないんだ」
何! この不思議子ちゃんにも分からないことがあるだと。
しかし、魔法学園祭の時のタニアの暴走が偶然に引き起こされたとは考えにくかった。
「タニアの暴走も……ワザとなのか?」
「どうでしょう」
とぼけやがった。
タニアはおいしそうにジュースを飲み始める。
こいつ――!
大切な所ははぐらしてばかりで謎は深まるばかりだ。
「悪魔の苗床からの直接攻撃……セービル魔法学園も相当の被害を受けた――もっとも、人的被害は軽微だったみたいだけどね」
それでも多くの被害が出たことには変わりない。
全員の安否が心配だった。
「ボクがこの世界に来る前まではまだ混乱が続いていたみたいだよ」
「そうか……」
もっと知りたい気持ちもあったが、それは今度聞くとしよう。
「カルネアデスはノゾミンを排除しようとした……でも状況が変わった」
タニアがゆっくりと語りだす。
「排除対象が抵抗したため作戦を変更。排除ではなく保護・監視そして――」
「分析」
マヤの言葉にタニアが続ける。
「マザーにとっても今のこの状況はイレギュラーな状況みたいだね」
どこか面白そうに笑う。
「だから君たちの仲間もこの世界に呼んだんだ」
「そんなことができるのか?」
「あくまでも可能性の話ですが、パートナーとして【繋がり】があれば可能です」
マヤが補足してくれた。
つまりはいまだオレ達はマザーの監視下にあるというわけか。
「でも、今はその可能性は低いと思います」
「どういうことだ?」
「私たちが【元の記憶を取り戻した】したからです」
「カルネアデスのシステムも完璧ではありません。私たちは記憶を経変されこの世界に送られてきました。その状態であれば監視することができ分析を行えていたと思います」
「でも、記憶を取り戻したオレたちは監視という枷がなくなったと?」
「そういうことだと思います」
マヤはオレの言葉にうなずいた。
「でも、それは危険な状態でもあるんだ」
タニアはお代わりのジュースを持ってきながらオレの隣に座った。
「マザーの監視下を離れた個体がいるってことはこの世界に異物を含むってことなんだよ」
カルネアデスを一つの生命体だとすると今のオレたちはウイルスみたいなものか。
だとすると――
「先ほどの十六夜美琴の言葉を思い出して下さい」
マヤの言葉が終わるよりも早く。ふっと周囲に闇が訪れた。
「――なんだ?」
「はじまったみたいだね」
タニアが立ち上がる。どこかワクワクしているように見えるのオレの気のせいだろうか。
「これは異物を感知したマザーの自動的な反応です。人でいうと免疫反応でしょうか」
マヤが周囲を警戒しながら言う。レストランにはいつの間にか人けがなくなっていた。
驚くほどの静けさが漂っている。
「つまり?」
「この世界に入り込んだ異物である私たちをマザーが排除しようとしているんです」
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