74 / 406
第一章「いきなり冒険者」
第48.5話 002「アンナと白竜族 ①」
しおりを挟む
白竜族は竜人族の中でも光魔法を得意とする部族だ。
その中でも巫女とともなればその力は絶大なものとなる。
アンナのおかげでオレたちは白竜族の村に入ることができた。
入ることはできたのだが――
◆ ◆ ◆ ◆
通された部屋は最奥の部屋だった。
部屋には多くの者たちがいた。
竜人族というからてっきり竜に出会えるのかと思ったが、皆アンナと同じように人型をしていた。頭の角がなければ見分けがつかないだろう。
それにしても、この村には男が少ない。
いたとしても子供か年寄り、あとは女性だけだった。
祭壇と言ってもいい仰々しいまでに装飾された部屋だ。
その中にひっそりとたたずむ老婆がいた。
「おお、アンナ・ジーシュルカ! そなた無事であったか!」
「大婆様!」
アンナはその場に膝をつき首を垂れる。
「黒竜族がそなたを追っていると聞いて戦士たちをお前のもとへ送り出そうと考えていたところじゃ」
老婆の後ろに立つ男たちがそうなのだろう。
正直あまり強そうには見えないが。
老婆が慈しみを込めてアンナの肩に手を置いた。
「大婆様。そのことについてお話が……」
「ほお、冒険者を雇いこの地まで逃れてきたのじゃな」
老婆のオレを見る目はそっけない。蔑んだ目はオレではなく人間全体に向けられているようだった。
「おい、誰かこの冒険者に褒美を!」
そばに仕えていた女性が立ち上がる。これから報酬を取りに行こうというのか。
「いや、オレは……」
「なんじゃ、何か不満でもあるのかえ?」
老婆はオレをねめつける。
ふんと鼻を鳴らしてすぐに背を向けてしまった。
なんだそりゃ。
こいつ、人の話を全く聞いてねえ。
「オレはノゾミ。アンナの仲間だ」
「人間風情が仲間じゃと?」
老婆がゆっくりと振り向いた。
同時に小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「人間のくせに生意気な事を言いよるわ」
ヒャヒャヒャといやらしく笑う。それに合わせ周囲の者たちもくすくすと笑いだした。
「誰かこの者をつまみ出せ!」
「御意」
鎧を着た男がオレの前に現れた。
「お待ちください大婆様!」
アンナが男とオレの間に立ちふさがる。
「アンナ。こんな人間のことなど忘れておしまい」
優しい声色でアンナを諭す。やんわりとではあるが力を込めてオレを小突いた。
何するんだよ!
抗議の意を込めて老婆を睨みつけると呆けたように己の手を見る老婆と目が合った。
老婆は――何かを感じた。
白竜族にしか分からない――老婆にしか分からない何かに気づいたのだ。
老婆はアンナを見、次いでオレを見た。
その瞳がみるみる怒気に染まっていく。
「アンナ、お主……よもやこの人間と誓約の議を行ったのではなかろうな!」
周囲の竜人族の者たちがざわめく。
「はい。その通りでございます」
アンナが頷く。
「愚かな!」
一人の大男が悲鳴に似た声を上げた。顔は怒気にまみれオレを射殺さんばかりに睨みつけてくる。
「ゆ、許さんぞ……人間!」
怒りの矛先はオレに集中している。
あれ、これってかなりやばい展開ではないだろうか。
「我らが白竜族は竜人族に対し、光を司り常に種族の導き手としてその道を照らしてきた」
老婆が手に持った杖でオレを指す。
「それが人間如きに下るなど……」
一触即発、周囲が殺気に満ちる。
見るところ老婆はこの村の長、長老のような者なのだろう。
そして、おそらくだがアンナの肉親もしくは血縁関係の者なのかもしれない。
なにしろ怒り方が尋常じゃない。
この流れ……いや~な感じしかしない。
「斬首じゃ……」
ぽつりと老婆が呟いた。
「この人間を……斬首の刑に処す!」
その中でも巫女とともなればその力は絶大なものとなる。
アンナのおかげでオレたちは白竜族の村に入ることができた。
入ることはできたのだが――
◆ ◆ ◆ ◆
通された部屋は最奥の部屋だった。
部屋には多くの者たちがいた。
竜人族というからてっきり竜に出会えるのかと思ったが、皆アンナと同じように人型をしていた。頭の角がなければ見分けがつかないだろう。
それにしても、この村には男が少ない。
いたとしても子供か年寄り、あとは女性だけだった。
祭壇と言ってもいい仰々しいまでに装飾された部屋だ。
その中にひっそりとたたずむ老婆がいた。
「おお、アンナ・ジーシュルカ! そなた無事であったか!」
「大婆様!」
アンナはその場に膝をつき首を垂れる。
「黒竜族がそなたを追っていると聞いて戦士たちをお前のもとへ送り出そうと考えていたところじゃ」
老婆の後ろに立つ男たちがそうなのだろう。
正直あまり強そうには見えないが。
老婆が慈しみを込めてアンナの肩に手を置いた。
「大婆様。そのことについてお話が……」
「ほお、冒険者を雇いこの地まで逃れてきたのじゃな」
老婆のオレを見る目はそっけない。蔑んだ目はオレではなく人間全体に向けられているようだった。
「おい、誰かこの冒険者に褒美を!」
そばに仕えていた女性が立ち上がる。これから報酬を取りに行こうというのか。
「いや、オレは……」
「なんじゃ、何か不満でもあるのかえ?」
老婆はオレをねめつける。
ふんと鼻を鳴らしてすぐに背を向けてしまった。
なんだそりゃ。
こいつ、人の話を全く聞いてねえ。
「オレはノゾミ。アンナの仲間だ」
「人間風情が仲間じゃと?」
老婆がゆっくりと振り向いた。
同時に小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「人間のくせに生意気な事を言いよるわ」
ヒャヒャヒャといやらしく笑う。それに合わせ周囲の者たちもくすくすと笑いだした。
「誰かこの者をつまみ出せ!」
「御意」
鎧を着た男がオレの前に現れた。
「お待ちください大婆様!」
アンナが男とオレの間に立ちふさがる。
「アンナ。こんな人間のことなど忘れておしまい」
優しい声色でアンナを諭す。やんわりとではあるが力を込めてオレを小突いた。
何するんだよ!
抗議の意を込めて老婆を睨みつけると呆けたように己の手を見る老婆と目が合った。
老婆は――何かを感じた。
白竜族にしか分からない――老婆にしか分からない何かに気づいたのだ。
老婆はアンナを見、次いでオレを見た。
その瞳がみるみる怒気に染まっていく。
「アンナ、お主……よもやこの人間と誓約の議を行ったのではなかろうな!」
周囲の竜人族の者たちがざわめく。
「はい。その通りでございます」
アンナが頷く。
「愚かな!」
一人の大男が悲鳴に似た声を上げた。顔は怒気にまみれオレを射殺さんばかりに睨みつけてくる。
「ゆ、許さんぞ……人間!」
怒りの矛先はオレに集中している。
あれ、これってかなりやばい展開ではないだろうか。
「我らが白竜族は竜人族に対し、光を司り常に種族の導き手としてその道を照らしてきた」
老婆が手に持った杖でオレを指す。
「それが人間如きに下るなど……」
一触即発、周囲が殺気に満ちる。
見るところ老婆はこの村の長、長老のような者なのだろう。
そして、おそらくだがアンナの肉親もしくは血縁関係の者なのかもしれない。
なにしろ怒り方が尋常じゃない。
この流れ……いや~な感じしかしない。
「斬首じゃ……」
ぽつりと老婆が呟いた。
「この人間を……斬首の刑に処す!」
0
お気に入りに追加
507
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる