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第一章「いきなり冒険者」
第28.5話 003「無邪気な子供」
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冒険者ギルドの依頼。それは通常であれば掲示板に張り出された時点で契約が成立したことになり、報酬などは予めギルドに納められていなければならない。
しかしながら今回の依頼は内容が内容であり、また依頼主が子供ということもあって報酬は成功報酬。しかも、依頼料は依頼主から直接もらうこととなっていた。
今回の依頼、金額は冒険者ギルドの依頼としては驚くほどに安い。
市民のお手伝いから国王の依頼まですべてをこなすのが冒険者ギルドの方針だ。
しかしながら、それでも今回の依頼は異例中の異例であるようだった。
依頼主は郊外に住む二人の兄妹だという。
ギルドを出発し、目的の家に到着したころには既に日も傾きかけてきた頃だった。
牧歌的な風景の中を三人で進む。
周囲には牧場が広がり、その向こうには苗植えを行っている畑が見える。
今年は雨が少ないとミーシャは言っていた。ならば、今年の収穫はいかほどのものか。
作物の実りはそのまま生活へと直結する。領主への納めもあるだろう。
この町は三人の領主が治めていると聞いている。
時折通り過ぎる農夫たちを見る限りにおいて、治世はしっかりと行われているようだ。
あのアイスクラ卿も性格はアレだがいい領主なのだろう……そう、性格はアレだが……
えっ? オレは悪くないよ。
ちょっと娘さんとイチャイチャしただけだもん。
それだけで目の敵にされるなんて横暴だ。
……でも、今度からは少しだけ気をつけるようにしよう。
そうこうしているうちに大きな建物が見えてくる。
「着きました」
ミーシャが建物を指差す。
それは教会に併設して建てられた建物だった――身寄りのない子供たちを集め、子供たちに食べ物と教育を与え社会に貢献する場所――つまりは孤児院だった。
「ここが依頼主の住んでいる場所?」
オレの言葉にミーシャは頷く。
てっきりオレはどこかのボンボンが金に物を言わせて依頼をかけたのだと思っていた。
実はそうではなかったのだ。
個々は素直に反省しなければならない……はい、反省終わり。
門をくぐり中庭へと入る。
そこは子どもたちの遊び場なのか、たくさんの子供たちが楽しそうな声を上げて遊んでいる。
なんだか保育園や幼稚園を思い出す光景だった。
にぎやかな光景。
オレたちが中庭に入ると子供たちがわらわらと集まってきた。
興味津々な顔でオレたちを見つめてくる。
なぜだろう、子供たちの素直な瞳の前にさらされると急に恥じ入ってしまうような感覚に襲われてしまうのは……やましいことなどない……はずだ。
「お前誰だ?」
七歳くらいの生意気そうなお子様が声をかけてきた。
大人であるオレは子どもに「お前」呼ばわりされてもちっとも気にしない。
「バーカバーカ!」
気にしない気にしない。
「おお! お姉ちゃんええチチしとるのぉ!」
無邪気にミーシャの胸を触り始めた。
ミーシャもひきつった笑顔のままされるがままになっている。
子供はミーシャの皮の胸当てをばっしばっしと無邪気に叩く。
おいおい、女の子に乱暴してはいけませんよ。
ここは教会。神様が見ていますよ。
「こっちのちっこい女の子もなかなか柔らかそうな……」
嗚呼、ここに神はいないのか……ならば、オレが神となろう!
「くぅおらぁぁぁ!」
獅子はウサギを狩るのにも全力を出すという。
ならばオレは全力でお相手するとしよう。
生まれてきたことを後悔させてくれる!
「ぎゃぁぁ! 男が怒った!」
ふははは! 己の浅はかさを悔いるがいい!
そこにはなりふり構わず全力で子供を追い回す大人げない大人の姿があった――オレだった。
「ノゾミ!」
「お兄ちゃん!」
止めてくれるな皆の衆。男には決して止めてはいけない瞬間というものがあるのだよ。
「ちょっと、そこで何しているんですか! シスターを呼びますよ!」
唐突に声がかけられる。
見るとそこには怒気もあらわに立つ一人の少女の姿があった。
しかしながら今回の依頼は内容が内容であり、また依頼主が子供ということもあって報酬は成功報酬。しかも、依頼料は依頼主から直接もらうこととなっていた。
今回の依頼、金額は冒険者ギルドの依頼としては驚くほどに安い。
市民のお手伝いから国王の依頼まですべてをこなすのが冒険者ギルドの方針だ。
しかしながら、それでも今回の依頼は異例中の異例であるようだった。
依頼主は郊外に住む二人の兄妹だという。
ギルドを出発し、目的の家に到着したころには既に日も傾きかけてきた頃だった。
牧歌的な風景の中を三人で進む。
周囲には牧場が広がり、その向こうには苗植えを行っている畑が見える。
今年は雨が少ないとミーシャは言っていた。ならば、今年の収穫はいかほどのものか。
作物の実りはそのまま生活へと直結する。領主への納めもあるだろう。
この町は三人の領主が治めていると聞いている。
時折通り過ぎる農夫たちを見る限りにおいて、治世はしっかりと行われているようだ。
あのアイスクラ卿も性格はアレだがいい領主なのだろう……そう、性格はアレだが……
えっ? オレは悪くないよ。
ちょっと娘さんとイチャイチャしただけだもん。
それだけで目の敵にされるなんて横暴だ。
……でも、今度からは少しだけ気をつけるようにしよう。
そうこうしているうちに大きな建物が見えてくる。
「着きました」
ミーシャが建物を指差す。
それは教会に併設して建てられた建物だった――身寄りのない子供たちを集め、子供たちに食べ物と教育を与え社会に貢献する場所――つまりは孤児院だった。
「ここが依頼主の住んでいる場所?」
オレの言葉にミーシャは頷く。
てっきりオレはどこかのボンボンが金に物を言わせて依頼をかけたのだと思っていた。
実はそうではなかったのだ。
個々は素直に反省しなければならない……はい、反省終わり。
門をくぐり中庭へと入る。
そこは子どもたちの遊び場なのか、たくさんの子供たちが楽しそうな声を上げて遊んでいる。
なんだか保育園や幼稚園を思い出す光景だった。
にぎやかな光景。
オレたちが中庭に入ると子供たちがわらわらと集まってきた。
興味津々な顔でオレたちを見つめてくる。
なぜだろう、子供たちの素直な瞳の前にさらされると急に恥じ入ってしまうような感覚に襲われてしまうのは……やましいことなどない……はずだ。
「お前誰だ?」
七歳くらいの生意気そうなお子様が声をかけてきた。
大人であるオレは子どもに「お前」呼ばわりされてもちっとも気にしない。
「バーカバーカ!」
気にしない気にしない。
「おお! お姉ちゃんええチチしとるのぉ!」
無邪気にミーシャの胸を触り始めた。
ミーシャもひきつった笑顔のままされるがままになっている。
子供はミーシャの皮の胸当てをばっしばっしと無邪気に叩く。
おいおい、女の子に乱暴してはいけませんよ。
ここは教会。神様が見ていますよ。
「こっちのちっこい女の子もなかなか柔らかそうな……」
嗚呼、ここに神はいないのか……ならば、オレが神となろう!
「くぅおらぁぁぁ!」
獅子はウサギを狩るのにも全力を出すという。
ならばオレは全力でお相手するとしよう。
生まれてきたことを後悔させてくれる!
「ぎゃぁぁ! 男が怒った!」
ふははは! 己の浅はかさを悔いるがいい!
そこにはなりふり構わず全力で子供を追い回す大人げない大人の姿があった――オレだった。
「ノゾミ!」
「お兄ちゃん!」
止めてくれるな皆の衆。男には決して止めてはいけない瞬間というものがあるのだよ。
「ちょっと、そこで何しているんですか! シスターを呼びますよ!」
唐突に声がかけられる。
見るとそこには怒気もあらわに立つ一人の少女の姿があった。
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