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第四章「カルネアデス編」
第159話「魔法 ②」
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「魔法……ですか?」
「そうだ」
オレの言葉にミーシャとアンナは沈黙する。それはそうだ。まだ超能力だとか言われた方がしっくりくる。
しかし、今こうしてアブールという証人がいるのだ。ここは信じるしかないだろう。
「ねえねえ、それじゃあ空飛ぶ絨毯とかあるの?」
意外と食いつきが良かったのはミーシャだった。
「そんな便利な魔法なんてないです」
アブールはミーシャの反応に驚いたようだ。
そういえば向こうの世界ではこんな反応はあまりなかったような気がする。
「本当に魔法が使えるの?」
アンナの言葉にアブールは頷いた。
「私は樹人族で……土魔法が得意です」
樹人族――と言われてもピンとこないだろう。それでも土魔法という言葉には反応していた。
「土魔法……他にも魔法を使えるの?」
「初級の魔法であれば、火魔法、風魔法、光魔法を使えます。でも、この世界に来てからはうまく魔法が使えなくなったんです」
以前の世界でも中級以上になると素質が必要となった。中級の二属性の魔法が使えるだけでもその希少価値は計り知れない。
この世界で魔法が使える?
そもそもこの世界とはなんだ?
まさか、オレのいた時代に奇跡的にタイムスリップしたとか?
いくらなんでもそれはないだらう。そうなると時間的にも空間的にも無理がありすぎた。
「今できるのは植物を操ることだけ」
アブールがすまなそうにする。
それでも十分に凄いことなのだが。
「リンゴちゃんが魔法使いなのは分かったわ」
アンナさん魔法を受け入れちゃったんですね。
「それで、私達に話とは何?」
単刀直入に聞いてくる。
「恐らく……というかほぼ間違いないんだが……」
オレは二人の顔を見比べる。
「君達二人はオレ達の仲間だった。そして、ミーシャは兎人族の冒険者、アンナは竜人族の巫女だったんだ」
しばし二人は沈黙した。
笑うか怒るか――しかし、二人の沈黙は続く。
「今の望の話を聞いて……」
アンナはささやく。
「私は否定も肯定もしません」
「私も……まだハッキリしないっていうか」
二人は真面目な顔で互いに見つめ合った。
「今日のところは家に帰るね。ちょっと考えてみるよ」
ミーシャが立ち上がる。つられてアンナも立ち上がった。
仕方ないか。いきなりあなたは仲間で魔法も使えるんですよと言われてもピンとこないだろう。
「そりゃそうだ……とにかくゆっくりでいい。何か思い出したりしたら電話してくれ」
オレは番号を書いた紙を渡す。
「ええ……そうね」
そう言ってからミーシャは不思議そうに紙を見つめた。
「これは?」
「これはオレの携帯の番号だ」
「えっ……念じるだでいいんじゃないの?」
「なぜそう思う?」
「だって、ケイタイって……」
そこまで言うとミーシャは静かになる。
オレたちは魔法世界では念話をする為に魔具を使用していた。番号ではなく相手の事を念じれば通じるというものだ。ここにきてこの世界の常識と魔法世界との差異に気づいたのだろう。
「まあ、明日またここに来てくれ」
これ以上混乱させても仕方ない。少し考える時間が必要だ。
「分かりました。ミーシャと今日のことについてもう一度話をしてみます」
アンナは静かな声で言った。
「お邪魔してすみませんでした」
ミーシャとアンナはそう言うと帰っていった。まあ、近くに住んでいるわけだし、何かあればこちらに駆けつけてくるだろう。
……ん? 待てよ。
ということは、今この家にはアブールとオレの二人だけってことにならないか。
いやいや、決してやましい事など考えていませんよ。
確かに魔法の世界では色々やらかしていましたが、ここはオレの世界ですよ。
ほら、何かあったりしたら……その大変ですよね。
「……二人っきりだな」
アブールが腕に絡みついてきた。
わずかな胸の膨らみがオレの腕にふんわりと伝わってきた。
「そうだ」
オレの言葉にミーシャとアンナは沈黙する。それはそうだ。まだ超能力だとか言われた方がしっくりくる。
しかし、今こうしてアブールという証人がいるのだ。ここは信じるしかないだろう。
「ねえねえ、それじゃあ空飛ぶ絨毯とかあるの?」
意外と食いつきが良かったのはミーシャだった。
「そんな便利な魔法なんてないです」
アブールはミーシャの反応に驚いたようだ。
そういえば向こうの世界ではこんな反応はあまりなかったような気がする。
「本当に魔法が使えるの?」
アンナの言葉にアブールは頷いた。
「私は樹人族で……土魔法が得意です」
樹人族――と言われてもピンとこないだろう。それでも土魔法という言葉には反応していた。
「土魔法……他にも魔法を使えるの?」
「初級の魔法であれば、火魔法、風魔法、光魔法を使えます。でも、この世界に来てからはうまく魔法が使えなくなったんです」
以前の世界でも中級以上になると素質が必要となった。中級の二属性の魔法が使えるだけでもその希少価値は計り知れない。
この世界で魔法が使える?
そもそもこの世界とはなんだ?
まさか、オレのいた時代に奇跡的にタイムスリップしたとか?
いくらなんでもそれはないだらう。そうなると時間的にも空間的にも無理がありすぎた。
「今できるのは植物を操ることだけ」
アブールがすまなそうにする。
それでも十分に凄いことなのだが。
「リンゴちゃんが魔法使いなのは分かったわ」
アンナさん魔法を受け入れちゃったんですね。
「それで、私達に話とは何?」
単刀直入に聞いてくる。
「恐らく……というかほぼ間違いないんだが……」
オレは二人の顔を見比べる。
「君達二人はオレ達の仲間だった。そして、ミーシャは兎人族の冒険者、アンナは竜人族の巫女だったんだ」
しばし二人は沈黙した。
笑うか怒るか――しかし、二人の沈黙は続く。
「今の望の話を聞いて……」
アンナはささやく。
「私は否定も肯定もしません」
「私も……まだハッキリしないっていうか」
二人は真面目な顔で互いに見つめ合った。
「今日のところは家に帰るね。ちょっと考えてみるよ」
ミーシャが立ち上がる。つられてアンナも立ち上がった。
仕方ないか。いきなりあなたは仲間で魔法も使えるんですよと言われてもピンとこないだろう。
「そりゃそうだ……とにかくゆっくりでいい。何か思い出したりしたら電話してくれ」
オレは番号を書いた紙を渡す。
「ええ……そうね」
そう言ってからミーシャは不思議そうに紙を見つめた。
「これは?」
「これはオレの携帯の番号だ」
「えっ……念じるだでいいんじゃないの?」
「なぜそう思う?」
「だって、ケイタイって……」
そこまで言うとミーシャは静かになる。
オレたちは魔法世界では念話をする為に魔具を使用していた。番号ではなく相手の事を念じれば通じるというものだ。ここにきてこの世界の常識と魔法世界との差異に気づいたのだろう。
「まあ、明日またここに来てくれ」
これ以上混乱させても仕方ない。少し考える時間が必要だ。
「分かりました。ミーシャと今日のことについてもう一度話をしてみます」
アンナは静かな声で言った。
「お邪魔してすみませんでした」
ミーシャとアンナはそう言うと帰っていった。まあ、近くに住んでいるわけだし、何かあればこちらに駆けつけてくるだろう。
……ん? 待てよ。
ということは、今この家にはアブールとオレの二人だけってことにならないか。
いやいや、決してやましい事など考えていませんよ。
確かに魔法の世界では色々やらかしていましたが、ここはオレの世界ですよ。
ほら、何かあったりしたら……その大変ですよね。
「……二人っきりだな」
アブールが腕に絡みついてきた。
わずかな胸の膨らみがオレの腕にふんわりと伝わってきた。
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