197 / 406
第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」
第151話「神化 ③」
しおりを挟む
急激なLVの上昇。その負荷に耐えられず身体が悲鳴を上げている。
ミーシャやシスティーナ。アンナやアープルたちはすでに意識を失っていた。
マヤだけがなんとか意識を保っている。
彼女の見守る中で。ノゾミのLVは1000を突破していた。
身体の最適化はとうに限界を超え、ナノマシンが崩壊を起こしている。
彼がその姿を保っていられるのが不思議なくらいだ。
(警告。身体を構成しているナノマシンの崩壊を確認。身体内部の圧力上昇――核(コア)が圧壊します)
「待って!」
叫ぶ。
核(コア)はすべての源。これが破壊されればすべてが終わる。
マヤの目の前で――ノゾミの反応が消えた。
「あああ――っ!」
喪失感がマヤの心を覆い尽くす。
失ってしまった。
彼女の大切な物。
ノゾミは彼女の全てだった。
それが今、失われてしまった。
「お兄ちゃん!」
「マヤ、大丈夫か!」
見上げればメリッタが心配そうな顔でこちらを見ている。呼ばれて駆けつけたもののあまりの高温に近づく事さえできずにいたのだ。
「メリッタ先生……お兄ちゃんが……」
「ああ……大変なことになっているな……ノゾミはいったいどうしたったいうんだ。それに悪魔の苗床からのあの凄まじい光の束はなんだ?」
メリッタ先生の視線の先を見、マヤは驚きに目を見開く。
「お、お兄ちゃん?」
そこにはタニアとノゾミの姿が映っていた。しっかりと両足で立つノゾミの姿にマヤは安堵のため息をつく。
――でも、どうして……
原因はわからないがとにかくノゾミは無事なのだ。それだけ確認できればあとは――
「カルネアデスの荷電粒子砲……」
「かでん……何だって?」
聞き慣れない単語にメリッタ先生が首を傾げる。
「いいえ……あの光は悪魔の苗床からの攻撃みたいですね」
「ああ……しかしなんて威力だ……どういうわけか何かの力で阻まれているようだが……」
それはマヤにもわからなかった。カルネアデスは惑星開拓をコンセプトに建造されている。だが、万が一を考え兵装も装備されている。
大気圏外からの超レンジ砲撃。大気でレーザーが拡散し威力が弱まっているとはいえ国を簡単に滅ぼせる威力備えていた。それを防ぐとは――
恐らくはノゾミの力だろう。
ノゾミは既にマヤの及びつかない領域にまでパワーアップしているといっていい。
(警告。荷電粒子砲の威力減退を確認。有機調査体名「望月望」の生存を確認)
マザーは現状を把握しきれていない。
そうよ。お兄ちゃんが負けるわけない!
「……頑張って……お兄ちゃん!」
マヤはそのまま意識を失った。
(報告。「ミーシャ」「システィーナ」「アンナ」「アープル」「アメリア」の凍結作業を開始します)
マザーの声はマヤには届いていなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「惑星間の戦争を想定した兵装攻撃を防ぎ切るなんて……凄いねノゾミン」
タニアは感心したように呟いた。
彼女には分かっていた。
既にノゾミの強さが自分を超えていることを。
既に彼の意識がないことを。
「カルネアデス……この星にとって厄災の源」
タニアは頭上のカルネアデスを見上げた。
悪魔の苗床――カルネアデスの一部が瞬いた。
恐らくは何かしらの攻撃が開始されたのだ。
「ねぇ……ノゾミン」
タニアは空を仰ぎながら意識のないノゾミに話しかける。
「今度また出会うことがあったらさ……」
ノゾミは答えない。ただ人形のように立ち尽くしているだけだ。
その顔に表情はなく。
瞳は虚ろに空を見ている。
「また、デートしょうね」
光が満ちた。
それは大きな広がりと共に森だけでなく魔法学園すらも巻き込みながら巨大な破壊の嵐となって吹き荒れる。
その日を境に――
セービル魔法学園は地上から姿を消した。
ミーシャやシスティーナ。アンナやアープルたちはすでに意識を失っていた。
マヤだけがなんとか意識を保っている。
彼女の見守る中で。ノゾミのLVは1000を突破していた。
身体の最適化はとうに限界を超え、ナノマシンが崩壊を起こしている。
彼がその姿を保っていられるのが不思議なくらいだ。
(警告。身体を構成しているナノマシンの崩壊を確認。身体内部の圧力上昇――核(コア)が圧壊します)
「待って!」
叫ぶ。
核(コア)はすべての源。これが破壊されればすべてが終わる。
マヤの目の前で――ノゾミの反応が消えた。
「あああ――っ!」
喪失感がマヤの心を覆い尽くす。
失ってしまった。
彼女の大切な物。
ノゾミは彼女の全てだった。
それが今、失われてしまった。
「お兄ちゃん!」
「マヤ、大丈夫か!」
見上げればメリッタが心配そうな顔でこちらを見ている。呼ばれて駆けつけたもののあまりの高温に近づく事さえできずにいたのだ。
「メリッタ先生……お兄ちゃんが……」
「ああ……大変なことになっているな……ノゾミはいったいどうしたったいうんだ。それに悪魔の苗床からのあの凄まじい光の束はなんだ?」
メリッタ先生の視線の先を見、マヤは驚きに目を見開く。
「お、お兄ちゃん?」
そこにはタニアとノゾミの姿が映っていた。しっかりと両足で立つノゾミの姿にマヤは安堵のため息をつく。
――でも、どうして……
原因はわからないがとにかくノゾミは無事なのだ。それだけ確認できればあとは――
「カルネアデスの荷電粒子砲……」
「かでん……何だって?」
聞き慣れない単語にメリッタ先生が首を傾げる。
「いいえ……あの光は悪魔の苗床からの攻撃みたいですね」
「ああ……しかしなんて威力だ……どういうわけか何かの力で阻まれているようだが……」
それはマヤにもわからなかった。カルネアデスは惑星開拓をコンセプトに建造されている。だが、万が一を考え兵装も装備されている。
大気圏外からの超レンジ砲撃。大気でレーザーが拡散し威力が弱まっているとはいえ国を簡単に滅ぼせる威力備えていた。それを防ぐとは――
恐らくはノゾミの力だろう。
ノゾミは既にマヤの及びつかない領域にまでパワーアップしているといっていい。
(警告。荷電粒子砲の威力減退を確認。有機調査体名「望月望」の生存を確認)
マザーは現状を把握しきれていない。
そうよ。お兄ちゃんが負けるわけない!
「……頑張って……お兄ちゃん!」
マヤはそのまま意識を失った。
(報告。「ミーシャ」「システィーナ」「アンナ」「アープル」「アメリア」の凍結作業を開始します)
マザーの声はマヤには届いていなかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「惑星間の戦争を想定した兵装攻撃を防ぎ切るなんて……凄いねノゾミン」
タニアは感心したように呟いた。
彼女には分かっていた。
既にノゾミの強さが自分を超えていることを。
既に彼の意識がないことを。
「カルネアデス……この星にとって厄災の源」
タニアは頭上のカルネアデスを見上げた。
悪魔の苗床――カルネアデスの一部が瞬いた。
恐らくは何かしらの攻撃が開始されたのだ。
「ねぇ……ノゾミン」
タニアは空を仰ぎながら意識のないノゾミに話しかける。
「今度また出会うことがあったらさ……」
ノゾミは答えない。ただ人形のように立ち尽くしているだけだ。
その顔に表情はなく。
瞳は虚ろに空を見ている。
「また、デートしょうね」
光が満ちた。
それは大きな広がりと共に森だけでなく魔法学園すらも巻き込みながら巨大な破壊の嵐となって吹き荒れる。
その日を境に――
セービル魔法学園は地上から姿を消した。
0
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる