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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」

第151話「神化 ③」

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 急激なLVの上昇。その負荷に耐えられず身体が悲鳴を上げている。
 ミーシャやシスティーナ。アンナやアープルたちはすでに意識を失っていた。
 マヤだけがなんとか意識を保っている。
 彼女の見守る中で。ノゾミのLVは1000を突破していた。
 身体の最適化はとうに限界を超え、ナノマシンが崩壊を起こしている。
 彼がその姿を保っていられるのが不思議なくらいだ。

(警告。身体を構成しているナノマシンの崩壊を確認。身体内部の圧力上昇――核(コア)が圧壊します)

「待って!」

 叫ぶ。
 核(コア)はすべての源。これが破壊されればすべてが終わる。
 マヤの目の前で――ノゾミの反応が消えた。

「あああ――っ!」

 喪失感がマヤの心を覆い尽くす。
 失ってしまった。
 彼女の大切な物。
 ノゾミは彼女の全てだった。
 それが今、失われてしまった。

「お兄ちゃん!」

「マヤ、大丈夫か!」

 見上げればメリッタが心配そうな顔でこちらを見ている。呼ばれて駆けつけたもののあまりの高温に近づく事さえできずにいたのだ。

「メリッタ先生……お兄ちゃんが……」

「ああ……大変なことになっているな……ノゾミはいったいどうしたったいうんだ。それに悪魔の苗床からのあの凄まじい光の束はなんだ?」

 メリッタ先生の視線の先を見、マヤは驚きに目を見開く。

「お、お兄ちゃん?」

 そこにはタニアとノゾミの姿が映っていた。しっかりと両足で立つノゾミの姿にマヤは安堵のため息をつく。

 ――でも、どうして……

 原因はわからないがとにかくノゾミは無事なのだ。それだけ確認できればあとは――

「カルネアデスの荷電粒子砲……」

「かでん……何だって?」

 聞き慣れない単語にメリッタ先生が首を傾げる。

「いいえ……あの光は悪魔の苗床からの攻撃みたいですね」

「ああ……しかしなんて威力だ……どういうわけか何かの力で阻まれているようだが……」

 それはマヤにもわからなかった。カルネアデスは惑星開拓をコンセプトに建造されている。だが、万が一を考え兵装も装備されている。
 大気圏外からの超レンジ砲撃。大気でレーザーが拡散し威力が弱まっているとはいえ国を簡単に滅ぼせる威力備えていた。それを防ぐとは――
 恐らくはノゾミの力だろう。
 ノゾミは既にマヤの及びつかない領域にまでパワーアップしているといっていい。

(警告。荷電粒子砲の威力減退を確認。有機調査体名「望月望」の生存を確認)

 マザーは現状を把握しきれていない。

 そうよ。お兄ちゃんが負けるわけない!

「……頑張って……お兄ちゃん!」

 マヤはそのまま意識を失った。

(報告。「ミーシャ」「システィーナ」「アンナ」「アープル」「アメリア」の凍結作業を開始します)

 マザーの声はマヤには届いていなかった。

 ◆ ◆ ◆ ◆

「惑星間の戦争を想定した兵装攻撃を防ぎ切るなんて……凄いねノゾミン」

 タニアは感心したように呟いた。
 彼女には分かっていた。
 既にノゾミの強さが自分を超えていることを。
 既に彼の意識がないことを。

「カルネアデス……この星にとって厄災の源」

 タニアは頭上のカルネアデスを見上げた。
 悪魔の苗床――カルネアデスの一部が瞬いた。
 恐らくは何かしらの攻撃が開始されたのだ。

「ねぇ……ノゾミン」

 タニアは空を仰ぎながら意識のないノゾミに話しかける。

「今度また出会うことがあったらさ……」

 ノゾミは答えない。ただ人形のように立ち尽くしているだけだ。
 その顔に表情はなく。
 瞳は虚ろに空を見ている。

「また、デートしょうね」

 光が満ちた。
 それは大きな広がりと共に森だけでなく魔法学園すらも巻き込みながら巨大な破壊の嵐となって吹き荒れる。

 その日を境に――

 セービル魔法学園は地上から姿を消した。
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